小児アレルギー予防に向けて~妊娠期・乳児期からのアプローチ~
2020年10月30日(金)
10 月 29 日(木)7時30分から久保良美先生による講演会「小児アレルギー予防に向けて~妊娠期・乳児期からのアプローチ~」を開催しました。ウィズコロナの時代にZOOMオンライン講演会を企画したところ、多数の参加を頂き感謝しております。また、医科8人と歯科10人の先生が同じ環境で共に過ごすことができたことをうれしく思っています。これぞ保険医協会です。
アレルギー疾患をできる限り少なくしたいとの熱意がひしひしと感じられる、素晴らしい講演でした。時代の意識に飲み込まれず、枠を突き抜けた純度の高い研究を続けられる姿勢にも胸を打たれました。近年の先進国におけるアレルギー疾患罹患率が極めて高くなっていることや、1989年に提唱されたイギリスのStrachan博士による衛生仮説「衛生環境の改善や少子化に伴う乳幼児期の感染リスクの低下がアレルギー増加の一因ではないか」を踏まえて、親の唾液とアレルギーの関係についての研究を始めたそうです。加賀市の小学校の疫学調査にて、乳児期に噛み与えをすると児童のアトピー性皮膚炎が有意に減少する可能性が示唆され、唾液の移行が、免疫刺激として乳児の未完成の免疫システムに予防的に働く可能性が推測されました。さらに、生後6ヶ月間完全母乳、保護者の口腔衛生知識があった場合、アトピー性皮膚炎症状リスクが有意に増加する可能性も示唆されました。また、乳歯萌出前の頻回の母子唾液接触があった場合、その子供たちが5~7歳の時、う蝕原因菌であるMutans菌の数とう蝕数が、唾液接触がなかったグループに比べて少なく、保護的に免疫メカニズムが働く可能性も示唆されました。噛み与え時期とミュータンス菌感染の時期は重なっていませんでした。最後に、ヘルペスウイルスなどの病原感染症に対する安全対策と、テーラーメイドのアレルギー予防法の確立に向けて今後も研究を続けていくと締めくくりました。そして、質疑も活発に行われ、共通理解が生まれる有意義な研修会となりました。
きれいすぎる環境(食物アレルギー講演会 第2弾)
kojima-dental-office.net/20190707-4611
突発性発疹(小児バラ疹)
doctorsfile.jp/medication/214/
ヒトヘルペスウイルス(HHV )6型または7型に感染することによって発症する。
ヘルペスウイルス
kojima-dental-office.net/blog/20201009-14315#more-14315
小児アレルギー予防に向けて~妊娠期・乳児期からのアプローチ~
講 師: 久保良美先生(加賀市・久保歯科医院)
日 時: 2020年10 月 29 日(木) 7時30分 ~8時30分頃
会場:オンライン会議システム「Zoom」で開催
対象:石川県保険医協会会員(医師・歯科医師)
定員:先着30人久保良美先生Zoom講演会チラシ
主催・お問い合わせ
石川県保険医協会
〒920-0902 金沢市尾張町2-8-23 太陽生命金沢ビル8 階
電話076-222-5373
E メールishikawa-hok@doc-net.or.jp
案内文
昨年の食物アレルギー講演会にて、講師の武石 大輔氏(城北病院 小児科)は、「食物アレルギーが年々増えている実感があり、理由として、きれいすぎる環境がある」ことをあげられた。「生まれた時は同じ細胞が感染とアレルギー担当細胞に分化するため、感染対応の必要度が少なくなればアレルギー対応の細胞が増えているのではないか」と指摘された。また、「アレルギー反応が起こってしまうのは、湿疹などのバリアが破壊された皮膚から抗原が入ってくることが原因であり、逆に腸から抗原が吸収されるとアレルギーを抑える方向に働く」とも話された。
食物アレルギー講演会 第2弾
kojima-dental-office.net/20190707-4611
今回、久保先生には、2013年のスウェーデンの出生コホート研究から発展した一連の、地道な積み重ねてこられた研究の質感をお話して頂く予定である。アレルギー予防の観点から親の唾液がどんな振る舞いをするのかという論点にも興味がそそられる。
大人から乳幼児に唾液を介してピロリ菌や虫歯菌(ミュータンス菌)などが感染するということについても議論が巻き起こることも期待している。奮ってご参加ください。
※講師に質問のある方は【9月末まで】にお寄せください。
抄録 久保良美
近年、先進国におけるアレルギー疾患増加の原因として、清潔すぎる生活環境で育った子どもは、アレルギー疾患に罹りやすいという「衛生仮説」が注目されている。2013年のスウェーデンの出生コホート研究では、親の唾液による小児のアレルギー予防の可能性が示唆され、2015年の横断研究では、乳児期の噛み与え(親が食物を噛んで柔らかくして子に与える)により、児童のアレルギー疾患、特にアトピー性皮膚炎発症リスク低下の可能性が示唆された(久保ほか)。そこで更に、2016年、石川県加賀市の小中学生とその保護者を対象に行ったアレルギー調査結果をもとに、妊娠期、乳児期からの小児アレルギー予防の可能性について、医科歯科両面から考察したい。
参考に
親の唾液に子供のアレルギー予防効果―スウェーデン研究 2013年05月13日 公開
ぜんそく9割減、アトピー6割減
medical-tribune.co.jp/kenko100/articles/130513526882/
久保良美先生 プロフィール
久保歯科医院 副院長
医学博士
北陸がんプロフェッショナル認定医
予防医学指導士
予防医学メンタルヘルス相談士
石川県糖尿病療養指導士
2016年よりHarvard Medical School、獨協医科大学小児科、和歌山県立医科大学皮膚科の共同研究として小児アレルギー予防に関するプロジェクトチームを作り、研究代表として研究を続けています。
略歴
1984年 大阪歯科大学卒業
小児歯科学講座研究生
1987年 久保歯科医院 開業 副院長
2008年 金沢大学大学院医学系研究科後期博士課程(環境生態医学・公衆衛生学)入学
2012年 同 修了
2014年 長崎県立大学大学院人間健康科学研究科 客員研究員
2015年 和歌山県立医科大学 地域医療マネジメント学講座 博士研究員
2016年 和歌山県立医科大学 皮膚科学講座 博士研究員 現在に至る
2019年 Harvard Medical School ICRT program 修了
2020年 Harvard Medical School GCSRT program 入学
受賞歴
2016年 平成28年度アトピー性皮膚炎臨床疫学研究奨励賞
2017年 日本小児皮膚科学会最優秀演題賞
2017年 平成29年度石川県公衆衛生功労者母子保健事業従事者知事表彰
2018年 日本皮膚科学会優秀演題賞
- カテゴリー: 食物アレルギー