ファクトフルネス
2022年03月19日(土)
10の思いこみを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
ハンス・ロスリング著
オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド
上杉周作、関美和 訳
日経BP社
1800円
2019年1月15日発行
心配すべき5つのグローバルなリスク。感染症の世界的流行、金融危機、世界大戦、地球温暖化、そして極度の貧困。6番目の見えないリスクもある。予想外の何かが起きる可能性もある。
感染症の世界的流行
第一次世界大戦中に広がったスペイン風邪で、5000万人が命を落とした。世界の平均寿命は33歳から23歳へと10年も縮まった。
第三次世界大戦
プライドの高い国家が、市場での支配力が弱まった時に他国を攻撃する可能性はある。
『ファクトフルネス』チンパンジークイズ
factquiz.chibicode.com/
先ずは、世界の事実に関するクイズ12問に挑戦してみよう。どの質問もA・B・Cの3択です。チンパンジーなら、だいたい4問正解する。
情報が溢れている社会を生き抜くには、情報を疑う力や、自分の頭で考える力が必要。事実に基づいた正しい情報も否定し、事実に基づかない「真実」を鵜呑みにしてしまってはいけない。
「この情報源を信頼していいのか?」と問う前に、「自分は自分を信頼していいのか?」と問うべき。そのセルフチェックに役立つのが、本書で紹介されている10の本能。もしどれかの本能が刺激されていたら、「この情報は真実ではない」と決めつける前に、「自分は事実を見る準備ができていない」と考えるべき。
この本を通じて人々に伝えたいことは、「世界の姿」だけではなく「自分の姿」を見せてくれること。情報を批判的に見ることも大事だけれども、自分自身を批判的に見ることも大事ということ。
必要なのは、誰もが「自分は本能に支配されていた」と過ちを認められる空気を作ること。そのためには、本能に支配されていた人や、本能を支配しようとする人を許すことが大事。「ファクトフルネス」が作ろうとしていたのは、そんな空気。
A.ヒトはなぜ世界を悲観的にとらえ続けてしまうのか?
「ドラマティックすぎる世界の見方」の原因は脳の機能にある。「差し迫った危険から逃れるために、一瞬で判断を下す本能」が脳に組み込まれている。私たちの祖先が、少人数で狩猟や採集をするために必要だった。数千年も前には役立ったかもしれないが、今は違う。瞬時に何かを判断する本能と、ドラマティックな物語を求める本能が、世界についての誤解を生んでいる。
スマホ脳
kojima-dental-office.net/blog/20220201-15327#more-15327
生物学的に見ると、脳はまだサバンナで暮らしている。脳は現代に追いついていない。
B.事実に基づく世界の見方
人々がとんでもなく世界を誤解している。その理由は誰もが持っている10の本能による。これらの本能を抑えなければ、事実に基づいて正しく世界を見ることができない。社会問題を解決することも、未来を予測することも、危機に対応することもできない。本能が引き起こすとんでもない勘違いに気づくことが、ファクトフルな世界の見方、つまり「ファクトフルネス」に繋がる。
訓練を積めば、事実に基づく世界の見方ができるようになる。取り越し苦労をしなくてもすむ。世界が想像とは全く違っていること、解決不能に見えた世界の課題がすでに解決していることを伝えたい。直感がどれほど現実とかけ離れているかを知ってもらいたい。事実に基づいて世界を見れば、世の中もそれほど悪くないと思えてくる。この本にあるデータは、あなたを癒してくれ、あなたの心を穏やかにしてくれる。
スウェーデンはなぜ強いのか
kojima-dental-office.net/blog/20120808-3065#more-3065
・分断本能
・ネガティブ本能
・直線本能
・恐怖本能
・過大視本能
・パターン化本能
・宿命本能
・単純化本能
・犯人捜し本能
・焦り本能
1.分断本能 「世界は分断されている」という思いこみ
人はドラマティック本能のせいで、「二項対立」を求める。いつも気づかないうちに、世界を2つに分けている。実際には分断がないのに人は分断があると思いこんだり、違いがないのに違いがあると思いこんだり、対立がないのに対立があると思いこんでしまう。どれも分断本能の仕業。人は誰しも、様々な物事や人々を2つのグループに分けないと気がすまない。その間には決して埋まることのない溝があるはずだと思いこむ。これが分断本能。
それぞれの国ごとの、女性一人あたりの子供の数と5歳まで生存する子供の割合
(本書35と37ページのチャート)
www.gapminder.org/topics/fertility-child-mortality/
1965年では「先進国」と「途上国」どちらかに収まり、明らかな分断があった。しかし、2017年では、ほとんどの国は出生率が低く、生存率は高くなっている。世界の全人口の85%が「先進国」の枠の中に入り、「途上国」の枠に入るのは全人口の6%、たったの13カ国になった。
乳幼児死亡率、所得、観光客の数、民主化の度合、教育・医療・電気へのアクセスなどでも、世界が分断していたのは過去の話で、今はもうそんなことはない。今や、世界のほとんどの人は中間にいる。「西洋諸国」と「その他の国」、「先進国」と「途上国」、「豊かな国」と「貧しい国」の間にあった分断はもはや存在しない。
ほとんどの人が想像するほど低所得の国の暮らしは苦しくないし、人口も多くはない。低所得の国に住んでいるのは、世界の人口の9%しかいない。彼らも苦しい暮らしをしているが、地球上で最も過酷な国であるアフガニスタン、ソマリア、中央アフリカほどひどくはない。
人類の75%が中所得の国に暮らしている。高所得の国と合わせると91%になる。世界には50億人の購買意欲が高い見込み客がいる。そういう人たちを「貧困層」だと思いこんでいるうちは、ビジネスチャンスに気づけない。
【分断本能を抑えるには】
話の中の「分断」を示す言葉に気づくこと。それが重なり合わない2つのグループを連想させることに気づくこと。多くの場合、実際には分断はなく、誰もいないと思われていた中間部分に大半の人がいる。
分断本能を抑えるには、大半の人々がどこにいるか探すこと。ドラマティックすぎる「分断された」世界の代わりに、4つのレベルで考えることこそが、この本で伝授する「事実に基づいた思考法」の一つ目にして最も大事なポイント。
世界は4つの所得グループ
www.businessinsider.jp/post-165209
分断本能を刺激するような話を見分けるには3つの注意すべきポイントがある。
①「平均の比較」に注意しよう
情報を単純化すると見えなくなるものも多い。各数値の出現頻度を示す分布が隠れてしまう。分布に重なりがほとんどない場合なら、分断という言葉を使っても構わない。しかし、分断されているように見えても、分布を調べてみると、2つのグループに重なりがあり、分断などないことが多い。
②「極端な数字の比較」に注意しよう
極端な話の方が記憶に残りやすいが、両極な例から有益な学びは得られない。
人や国のグループには必ず、最上位層と最下位層が存在する。しかし、多くの場合、大半の人や国はその中間の、上でも下でもないところにいる。世界的にみても格差が大きい国でさえ、分断は見当たらない。
③上からの景色
高層ビルの上から見下ろすと、低い建物の高さの違いが分かりにくい。しかし「下界」に住む人にとって、レベル1とレベル2,レベル2とレベル3の違いは非常に大きい。
2.ネガティブ本能 「世界はどんどん悪くなっている」という思いこみ
人は誰しも、物事のポジティブな面より、ネガティブな面に注目しやすい。これはネガティブ本能のなせる技。この本能が、「世界はどんどん悪くなっている」という「とんでもない勘違い」が生まれる原因となっている。ネガティブ本能を刺激する要因は3つ。
①思い出は美化される
昔は今より悪い世の中だったが、正確に覚えている人は少ない。
暮らしが良くなるにつれ、悪事や災いに対する監視の目も厳しくなった。悪いニュースがより目につくようになり、「世界は全然進歩していない」と思う人が増えてしまった。悪い出来事ばかり目にしていれば、誰でも悲観的になる。
②ジャーナリストや活動家による偏った報道
世界はいつだって悪いニュースのオンパレード。反対に、良い出来事やゆっくりとした進歩は、どれほど大規模であっても、何百万という人に影響を与えたとしても、新聞の一面に載ることはない。
③状況がまだまだ悪い時に、「以前に比べたら良くなっている」と言いづらい空気
【ネガティブ本能を抑えるには】
「悪いニュースの方が広まりやすい」ことに気づくこと。良い変化の方が悪い変化より多かったとしても、良い変化はあなたの耳に入ってこない。統計を見れば、良い変化がそこら中にあることに気づける。数え切れないほどの「小さな進歩」が世界中で起きている。
「世界は良くなっている」とは言っているが、「世界について心配する必要はない」、「世界の大問題に、目を向ける必要はない」と言っているわけではない。世界の今を理解するには、「悪い」と「良くなっている」が両立することを忘れないようにしよう。
a.貧困
1800年頃は、人類の約85%が極度の貧困層。1966年まで、人類の大半の人はレベル1で暮らしていた。極度の貧困の中で暮らす人々の割合は、20年前には世界の人口の29%だったが、現在は9%まで下がった。ほとんどの人が地獄から脱出した。
レベル4にいる人たちが気づかない間に、世界では数十億人が貧困から抜け出し、グローバル市場で消費者や生産者になり、レベル1からレベル2や3になった。
b.平均寿命
人類史において、1800年頃までの世界のどの地域でも、平均寿命はずっと30歳のままだった。生まれた子供の半分は、大人になることなく死んでいった。残り半分はだいたい50から70歳の間に亡くなった。「平均はばらつきを隠す」ことを忘れないように。現在、世界の平均寿命は72歳になった。長い間、人類は生き延びるのに必死だったが、必死にならなくてもいい時代がやってきた。
ヒトの寿命
kojima-dental-office.net/blog/20220227-15344
世界の平均寿命の変化(本書71ページのチャート)をみると、何千万人もが中国で餓死したから、1960年に少し落ち込んでいる、。推定死者数は1500万人から4000万人以上といわれ、正確な数字は誰も分からない。1960年の中国では、凶作が続き、その上中央政府の的外れな政策が重なり、地方政府も大幅に落ち込んだ農作物の収穫量をごまかそうとあるだけの食料を中央に送った。政府は計画経済の失敗を認めず、このことを36年間もひた隠しにした。1996年に当時の様子が英語で記され、諸外国の知るところになった。
「世界保健チャート」は、各国の所得水準と健康水準を表している。貧しい国は左側、豊かな国は右側に位置し、健康な国は上側、不健康な国は下側に位置している。いまやレベル1の国でも、石鹸を使って菌を落とせるようになり、大半の子供が予防接種を受けている。過去200年の間、世界の全ての国において平均寿命は30年延びた。さらに暮らしに関わるほとんどの指標が良くなっている。
3.直線本能 「世界の人口はひたすら増え続ける」という思いこみ
「グラフは、真っ直ぐになるだろう」という思いこみに気づくこと。
a.子供人口の変化(本書102ページのチャート)
これまでのような右肩上がりの直線にはならない。2100年の子供人口は20億人で、現在と変わらない。国連の専門家は「すでに子供の人口は横ばいになっている」と言っている。
1800年まで、女性1人当たりの子供の数は平均6人、そのうち平均4人は若くして亡くなってしまい、大人になれるのは2人だけだった。今でも、女性1人当たりの子供の数が5人から8人と最も多いのは、ソマリア、チャド、マリ、ニジェールなど、乳児死亡率が最も高い国々。
人類は最近になって、女性1人当たりの子供の数が減ってきた。極度の貧困から抜け出した数十億人の人々は、子供をたくさん作る必要がなくなった。家庭の小さな農場で、たくさんの子供を働かせなくても、病気で亡くなる子供の分だけ、多めに子供を作らなくても良くなった。これからも、より多くの人が極度の貧困を抜け出し、女性1人当たりの子供の数はこのまま減り続ける。
b.人口は横ばいになる
子供人口の変化を知らないと、将来の世界人口を正しく予測できない。長期にわたって人口が横ばいになると言うことは、「子供から大人になる人の数」が、常に一定になるということ。貧しい子供を助けないと、人口はひたすら増え続ける。人口増を止める確実な方法は、極度の貧困を無くし、教育と避妊具を広めること。
人口が増えるスピードはすでに緩やかになりつつあり、これから数十年間は減速する見込み。世紀末を迎える頃にはグラフが横ばいになり、人口は100億人から120億人で安定する。
しばらくの間、人口が増えるのは、子供が増えるからでも、後期高齢者が増えるからでもなく、大人が増えるからである。今の子供世代が年を取るにつれ、各世代の人口が順に倍増していく。この「世代倍増」現象は約45年間続き、やがて落ち着く。
【直線本能を抑えるには】
本能的にグラフは直線になると思いこんでしまうが、世界にまつわるデータには、直線のグラフが当てはまらないものが多い。グラフには様々な形があることを知っておくこと。
グラフで示されていない部分がどうなっているかを、不用意に憶測しないこと。
①グラフが直線
所得水準が高い国では、健康水準も高い。所得が高まるほど、教育を受ける期間が長くなり、女性が結婚する時期が遅れ、趣味に充てるお金が増える。
②S字カーブ
予防接種を受けさせることは、国の健康水準を上げるのに最も費用対効果が高い方法。
③すべり台
長期的な収益を約束する代わりに、1回あたりの予防接種にかかるコストの引き下げる、製薬会社との交渉にユニセフは成功した。
④コブの形
虫歯の数はレベル1から2になるにつれ増えていくが、レベル4になると減る。多くの人は、甘いものを返るお金ができると甘いものを買ってしまう。しかし、レベル3になるまでは、虫歯の予防について学校で教える余裕が政府にない。虫歯の数は、レベル4の人にとつては相対的な貧困の証なのんもしれないが、レベル1の人にとっては豊かさの証かもしれない。
4.恐怖本能 危険でないことを、恐ろしいと考えてしまう思いこみ
世界では毎年6万人が、ヘビの性で命を落としている。レベル1や2の暮らしをしている人にとって、ヘビに噛まれたら命取り。レベル3と4になって生活に余裕が生まれると、進化の過程で発達した恐怖心は、いまやジャーナリストたちの雇用を支えているだけ。
①恐怖と危険は違う
危険なことには確実にリスクがあるが、恐ろしいと思うことには、リスクがあるように「見える」だけ。リスクは、「危険度」と「頻度」の掛け算で決まる。「恐ろしさ」はリスクとは関係ない。
恐ろしいが、起きる可能性が低いことに注目しすぎると、本当危険なことを見逃してしまう。頭が恐怖でいっぱいになると、事実を見る余裕がなくなってしまう。パニックが収まるまで、大事な決断をするのは避けよう。
私たちの頭の中と、外の世界の間には、「関心フィルター」という、防護壁のようなものがある。これが、私たちをを世界の雑音から守ってくれる。これがなければ、四六時中たくさんの情報が頭の中に入ってきて、何もできなくなってしまう。
関心フィルターには10個の穴が開いている。それぞれの穴は、「分断本能」、「ネガティブ本能」「直線本能」等と対応している。ほとんどの情報は関心フィルターを通過できないが、私たちの本能を刺激する情報だけは、穴から入って来られるようになつている。情報を取捨選択していく。
a.危険な物質
2011年3月11日。日本の三陸沖の太平洋で、巨大な断層破壊が起きた。津波の高さは想定を上回り、防波壁を越えて福島の原子力発電所を襲った。
原発の近くに住んでいた人は避難したが、その内の約1600人は避難後に亡くなった。死因は被爆ではない。そもそも執筆時点で、福島の原発事故による被爆で亡くなった人は、一人も見つかっていない。避難後に亡くなった人の多くは高齢者で、避難の影響で体調が悪化したり、ストレスが積み重なったりして死亡した。人々の命が奪われた原因は被爆ではなく、被爆を恐れての避難だった。誰の命も奪わなかった放射線から避難したせいで、1000人以上の高齢者が亡くなった。
1986年に起きた史上最悪の原発事故、チェルノブイリ原発事故後に出した世界保健機関の調査報告書によると、原発の近くに住んでいた人を含め、死亡率が大幅に高まったという証拠は見つからなかった。
目に見えない物質への恐怖が暴走し、物質そのものよりも規制のほうが多くの被害を及ぼしている。
b.テロ
アメリカのメリーランド大学の研究者たちによって集められたグローバル・テロリズム・データベースには、信頼できるメディアに掲載された1970年以降の17万件以上のテロ事件のデータが載っている。これによれば、2007年から2016年の10年間の間に、テロによって世界で15万9000人が亡くなっている。その前の10年に比べ、被害者は3倍になった。
レベル4の国では4358人から1439人と減っている。前の10年間には2001年9月11日のアメリカ同時多発テロの2996人が含まれている。アメリカだけを見ると、酔っ払いに殺される確率は、テロリストに殺される確率より約50倍も高い。
レベル1,2,3の国においては、テロの犠牲者は大幅に増えている。その原因のほとんどは、イラク、アフガニスタン、ナイジェリア、パキスタン、シリアでのテロが増えているから。特にイラクの犠牲者は増加数の半分を占める。
②頻度
めったに起きないことの方が、頻繁に起きることよりもニュースになりやすいから、私たちの頭の中は、めったに起きないことの情報で埋め尽くされていく。世界ではしょっちゅう起きていると錯覚してしまう。
恐怖本能のせいで、「年間4000万機もある、無事に着陸した飛行機の数々」や、「年間33万人いる、下痢でなくなる子どもたち」が、テレビに映ることはなく、私たちはなかなか気づけない。
c.汚染された飲み水による下痢
2015年のネパールの地震では、10日間に9000人が亡くなった。しかし、同じ10日間に、汚染された飲み水による下痢が原因で、同じく9000人の子供が世界中でなくなっている。汚染水は、世界で最も多くの子供の命を奪っているものの一つ。汚染水を飲んだ子どもたちが親の腕の中で息を引き取る様を、全世界に伝える撮影班はいない。
高価な物はいらない。何個かのプラスチック菅と、給水ポンプと、石鹸と、シンプルな下水の仕組みがあれば事足りる。
d.シカゴ条約
2016年には、4000万機の旅客機が、死者を一人も出さずに目的地に到着した。死亡事故が起きたのはたったの10機。メディアが取り上げたのは、10機のほうだった。安全なフライトがニュースの見出しを飾ることはない。旅客機の飛行距離1000億マイルあたりの死亡者数は、70年前に比べると2100倍も安全になった。
1944年、シカゴ条約が締結された。特に重要なのが13番目の「航空機事故調査」。これにより、事故の報告書の形式が統一された。また、報告書は各国に共有され、お互いの失敗から教訓を得られるようになった。それ以来、事故リスク要因が解明され、新しい安全対策が作られ、それが世界中で使われるようになった。シカゴ条約は、人類史上最高のチームワークの産物と言っても過言ではない。
【恐怖本能を抑えるには】
「恐ろしいものには、自然と目がいってしまう」ことに気づくこと。メディアや自身の関心フィルターのせいで、恐ろしい情報ばかりが届いているから、世界は実際より恐ろしく見える。
5.過大視本能 「目の前の数字が一番重要だ」という思いこみ
何かの大きさや割合を勘違いしてしまうのは、私たちが持つ「過大視本能」が原因。過大視本能は、2種類の勘違いを生む。
①数字を一つだけ見て、「この数字はなんて大きい」とか「なんて小さい」と勘違いしてしまう
過大視本能とネガティブ本能が合わさると、人類の進歩を過小評価しがちになる。世界中の子供の88%が何らかの予防接種を、90%の女子が初等教育を受けている、85%が電気を使えていることに気づいていない。学びに一番大きく影響するのは、電気。日が暮れた後に宿題ができる。
②「目の前にある確かなもの」に気を取られてしまう
a.目に見えない場所で、消えていく命
顔が見える患者や被害者に集中しすぎて、数字を無視するようではいけない。問題全体から見れば氷山の一角に過ぎない部分に、時間や労力を使い切ってしまうと、助かるはずの命も助からない。
レベル1や2にいる国では、「病院のベッドで、医者が子供の命を救う」ことは比較的少ない。子供の生存率が延びる理由の多くは、病院の外にある。地域の看護師や助産師、そして教育を受けた親たちが講じた、病気の予防策が効果を上げている。特に、母親の影響が大きい。「母親が読み書きができる」という要因が、上昇率の約半分に貢献している。
レベル1や2の医療環境を改善したいのであれば、いきなり立派な病院を建てる必要はない。そんなお金があったら、真っ先に初等教育・看護師教育・予防接種を充実させるべき。
【過大視本能を抑えるには】
ただひとつの数字が、とても重要であるかのように勘違いしてしまうことに気づくこと。一つの数字が、それ単体で意味を持つことなどない。「それと比較できるような、他の数字はないか」と尋ねよう。
ひとつしかない数字をニュースで見かけた時は、必ず問いかけて欲しい。比較と割り算。できるだけ、量ではなく割合を計算しよう。その後で、数字が重要かどうか判断する。この数字は、
・どの数字と比べるべきか?
・1年前や10年前と比べたらどうなっているか?
・似たような国や地域のものと比べたらどうなるのか?
・どの数字で割るべきか?
・合計するとどうなるか?
・1人当たりだとどうなるか?
①比較しよう
大きな数字は、そのままだと大きく見える。他の数字と比較し、できれば割り算すること。割合を見ると、量を見た場合とは全く違う結論にたどり着くことがある。大抵の場合、割合のほうが役に立つ。特に、違う大きさのグループを比べるのであればなおさら。国や地域を比較する時は、「1人当たり」に注目しよう。
b.420万の赤ちゃんの死
420万人の赤ちゃんが亡くなった。ユニセフによる最も新しい調査。世界中の0歳児の死亡数。この数字だけを見るとインパクトがある。420万人という数字は、2016年のもの。前の年は440万人、さらにその前は450万人。
1950年には、9700万人の赤ちゃんが生まれ、1440万人が亡くなった。死亡率は15%。2016年には、1億4000万人の赤ちゃんが生まれ、420万人が亡くなった。死亡率は3%。事実を知るには割合を調べないといけない。一つしかない数字だけでは勘違いするかもしれない。
「比較対象のない数字」は、ニュースや慈善団体のチラシでよく見かけるが、赤ちゃんの死亡数は2016年が最も低い。人類は、以前よりも多くの命を救えるようになっている。数字を比べようとしなければ、それに気づくことすらない。
c.大きな戦争
ベトナム戦争(ベトナムでは対米抗戦)では、150万人以上のベトナム人と、5万8000人以上のアメリカ人が亡くなった。
中国とベトナムの戦争は、休戦期間も含めると、2000年以上続いた。フランスに占領されていたのは200年間。「対米抗戦」があったのは、たったの20年間。今のベトナム人にとって「対米抗戦」は、他の戦争に比べたらそれほど大事ではなかったのかもしれない。
d.クマと斧
スウェーデンでは、クマが人を殺すのは100年に1度あるかないかの出来事。一方、女性がパートナーに殺される事件は、30日に一度起きている。ところが、DVによる殺人はほとんどニュースにならず、クマによる殺人は大ニュースになった。より多くの命を救いたければ、クマよりもDVの被害を防がないといけない。
e.結核と豚インフルエンザ
2009年には、豚インフルエンザが流行した。ある2週間の間に31人が豚インフルエンザで亡くなった。グーグルで関連ニュースを検索すると25万3442件がヒットした。同じ2週間の間に、結核でなくなった人は、約6万3066人。このうちのほとんどはレベル1と2の国の人だった。結核の記事は10分の1しか書かれていない。
②80・20ルール
たくさんの数字を比べたり、どの数字が重要かを知ったりする時に使う。まずは大きな項目だけに注目しよう。
f.人口分布の変化
現在、世界の人口分布は、アメリカ大陸に約10億人、ヨーロッパ大陸に約10億人、アフリカ大陸に約10億人アジア大陸に約40億人。
2100年には、アメリカ大陸とヨーロッパ大陸ではほとんど人口は変わらないが、アフリカ大陸では約30億人、アジア大陸で約10億人ほど人口が増える。世界の人口の8割以上が、アフリカとアジアに暮らすことになる。おそらく次の20年間で、世界市場の中心は大西洋周辺からインド洋周辺に移る。
現在、北アメリカやヨーロッパなど、豊かな国に暮らしている人の数は、世界の人口の11%に過ぎない。しかし、レベル4の彼らは、消費者市場の6割を占めている。2027年には5割に低下する。
2040年頃には、レベル4の消費者の6割は、西洋諸国の外に暮らしている。西洋諸国が経済を牛耳る時代はもうすぐ終わろうとしている。北アメリカやヨーロッパに暮らす人々は、世界の人口の大半がアジアにいることを理解すべき。西洋諸国の経済力は80%ではなく、20%に近づきつつある。けれども、古き良き時代の記憶が強すぎると、この事実がなかなか受け入れられない。
6.パターン化本能 「ひとつの例が全てに当てはまる」という思いこみ
人間はいつも、何も考えずに物事をパターン化し、それを全てに当てはめてしまう。残念なことに、ほんの少しの例や、ひとつだけの例外的な事柄に基づいてグループ全体の特徴を勝手に決めつけてしまう。
パターン化は、メディアの十八番。手っ取り早い情報伝達の手段が誤解を生み出している。
「世界は分断されている」という思いこみは、「わたしたち」は「あの人たち」と違うという勘違いを生む。一方「ひとつの例が全てに当てはまる」という思いこみは、「あの人たち」はみな同じだという勘違いを生む。
【パターン化本能を抑えるには】
パターン化は間違いを生み出しやすいことを肝に銘じること。間違った分類に気づき、より適切な分類に置き換える。「先進国」と「途上国」という分類を「4つのレベル」に置き換える。新しい証拠が出てきたら、心を開いて刷り込まれた思いこみを疑い、見直し、自分が間違っていたらそれを認める勇気を持たなければならない。
a.認識を切り替えるには、できるだけたくさん旅すること
レベル2と3の国で病院の壁にペンキを塗らないのには意味がある。塗料を飼うお金がないからではない。壁がボロボロだと金持ちの患者は敬遠するので、医師や看護師が時間をかけて高額な診療を行う必要がなくなる。だから、限られた人的資源を効率良く回して、より多くの人を治療できるようになる。
b.「コールドチェーン」
ワクチンは、工場から子供の腕に届くまで、ずっと冷蔵されている必要がある。この物流方式が、「コールドチェーン」。世界中の1歳児の88%が予防接種を受けている。投資家たちは20%しか受けていないと思いこみ、莫大な投資機会を見逃している。
パターン化のせいでたくさんの消費者と生産者を見逃している。全く違う人たちをひとくくりにしてしまうと、ビジネスチャンスを逃してしまう。世界の大半の人たちの生活レベルは、着実に上がっている。レベル3の人口は、今の20億人から2040年には40億人に増える。世界中のほぼ全ての人が消費者になりつつある。世界のほとんどの人は貧しすぎて何も買えないと思いこんでいると、史上最大のビジネスチャンスを見逃してしまう。事業戦略に必要なのは、事実を基に世界を見つめ、そこから未来のユーザーを見つけること。
c.生理用品の市場
レベル2と3にいる数十億人の有経女性に向けた生理用品の市場は、この数十年の間に爆発的に拡大した。ところが、欧米の大手生理用品メーカーは、レベル4にいる3億人の女性の新たなニーズを掘り起こそうと躍起になっていた。一方で、レベル2と3にいるおよそ20億人の有経女性たちは、安くて仕事中に取り替えなくてもいいような、長持ちする安心なナプキンを必要とし、お気に入りの商品を見つけたらおそらく一生そのブランドを使い続けるし、娘にも勧める。
7.宿命本能 「全てはあらかじめ決まっている」という思いこみ
宿命本能とは、持って生まれた宿命によって、人や国や宗教や文化の行方は決まるという思いこみ。物事が変わらないと思いこみ、新しい知識を取り入れることを拒めば、社会の劇的な変化が見えなくなってしまう。
a.赤ちゃんと宗教
スウェーデンの教育レベルの高い人たちも、イランが良くなっていることも、近代化されていることも知らない。イランがアフガニスタン並みだと思っている。
欧米のメディアは、イランで女性1人当たりの子供の数が急激に減っていることを全く報道してこなかった。1990年代、イランには世界最大のコンドーム工場があり、結婚前の花嫁と花婿の両方に性教育を義務化していた。国民の教育レベルは高く、進んだ公的医療制度が人々に開かれていた。カップルはきちんと避妊して子供の数を抑え、子供ができない場合には不妊治療も受けられる。今のイラン女性1人当たりの子供の数はアメリカやスウェーデンよりも少ない。許されない体制の進歩が見えなくなっている。メディアが世界で最も急激な文化的変化を報道していない。宗教と女性1人当たりの子供の数には、それほど関連がない。むしろ、子供の数と強く関連するのは所得。
b.経済成長率
国際通貨基金(IMF)はレベル4の国々の予想経済成長率を年率3%のまま据え置いたが、5年連続でこの目標には届かなかった。やっと2%に引き下げた。一方で、アフリカのガーナ、ナイジェリア、エチオピア、ケニア、そしてアジアのバングラデシュといったレベル2の国が、5%を超える高成長を遂げていたことをIMFが認めた。IMFの経済予測は、退職金の投資地域に大きく影響する。予想が外れて、欧米諸国が成長しなければ、退職金が増やせない。
これからやってくるアジアやアフリカの市場拡大に比べれば、西洋の消費市場なんて予告編に過ぎない。
c.アフリカは世界に追いつける
平均は誤解を生みやすい。アフリカの中でも大きな違いがある。全ての国が遅れているわけではない。チュニジア、アルジェリア、モロッコ、リビア、エジプトの5カ国の平均寿命は世界平均の72歳を上回っている。1970年のスウェーデンと同じ。
アフリカではおよそ5億人が極度の貧困に苦しんでいる。極度の貧困から抜け出すのが最後になってしまうのは、紛争地帯に近い場所や紛争地帯に囲まれた、作物のほとんど育たない土地に縛られている貧しい農民たち。今のところそんな人は世界に2億人ほどいる。その半分がアフリカに暮らしている。文化のせいではなく、痩せた土地と紛争のせい。
d.自然保護区域
紀元前3世紀に世界で初めて自然保護区域を作ったのは、スリランカのデーワー・ナンピアティッサ王。ヨーロッパでは、2000年後にイギリスのウェスト・ヨークシャーが初めてだった。アメリカでイエローストーン国立公園ができたのは、その50年後。1900年までに地球上の0.03%の土地が保護された。1930年には0.2%になった。少しずつ増え、今では地表の15%が保護地域になり、増え続けている。
【宿命本能を抑えるには】
いろんなもの(人も、国も、宗教も、文化も)が変わらないように見えるのは、変化がゆっくり少しずつ起きているからだと気づくこと。ゆっくりとした変化でも、変わっていないわけではないことを肝に銘じるといい。変化が積み重なれば大きな変化になると覚えておくこと。賞味期限がすぐに切れる知識もある。積極的に知識をアップデートする。
8.単純化本能 「世界はひとつの切り口で理解できる」という思いこみ
世の中の様々な問題にひとつの原因とひとつの回答を当てはめてしまう傾向を、わたしは「単純化本能」と呼んでいる。全ての問題がひとつのやり方で解決できると思いこむことがある。すると、異論は許されない。
「自由市場」だけを信じ込めば、全ての問題の元凶は政府の介入にあると考えてしまう。「平等」という概念だけを信じ込めば、「格差」があらゆる問題の元凶となり、資産の再配分によって何でも解決できると思いこんでしまう。
【単純化本能を抑えるには】
ひとつの視点だけでは世界を理解できないことを知る。世界をただひとつの切り口で見れば、自分の見方に合わない情報から目を背けることになる。それでは現実を理解できない。意見が合わない人や反対してくれる人に会い、その人に考えを検証してもらい、自分の弱点を見つけ、自分と違う考えを取り入れよう。知らないことがあると謙虚に認めよう。その道のプロは、自分の専門分野以外のことについてはプロではない。専門知識が邪魔すると、実際に効果のある解決法が見えなくなる。その知識が問題解決の一部に役立つことはあっても、全ての問題が彼らの専門知識で解決できるわけではない。
a.政治思想
ひとつの考え方だけに凝り固まって、効果を測定せず、効き目のある手を打つこともしなくなると、バカバカしい結末が訪れる。民間か、政府かという議論への答えは、ほとんどの場合、二者択一ではない。
ひとつの思想にこだわるあまり、キューバ人は健康な人たちの中で一番貧乏になっている。逆にアメリカは豊かな国の中で一番不健康。
アメリカ人1人当たりの医療費は、ほかのレベル4の資本主義国の倍以上。他の国が3600ドル程度なのに対して、アメリカは9400ドルも使っている。それなのに、アメリカ人の平均寿命は他の国よりも3歳短い。アメリカ人1人当たりの医療費は世界一高いが、アメリカより平均寿命の長い国は39カ国もある。
同じくらいの費用で、同じ水準の医療を受けられない理由は、公的健康保険制度がないから。現在のアメリカの医療制度のもとでは、保険に加入している金持ちは必要以上に医者に通って医療費を押し上げ、逆に貧乏人は、簡単で安い治療も受けられず、寿命をまっとうできない。医師たちは必要も意味もない治療に時間を使い、救えるはずの命を救うことも、治すべき病気の治療もできなくなっている。悲惨なほどに、医師の時間が無駄に使われている。
b.医療で何もかも解決できるわけではない
医療の専門家の中には、医療についてひとつの凝り固まった見方しかできない人や、特定の治療法にこだわる人がいる。
ひとつの病気に絞って手っ取り早く根絶しようとした試みは大失敗に終わったが、ひとつの病気に的を絞るより、地域の中で総合的な医療を提供し、それを改善していく方が得策だと分かった。
貧しい母親の命を救うには、看護師を訓練して帝王切開をすることができるようにすることでもなければ、出血多量や感染症に対応することでもない。妊婦の命を救うには、地元の病院への交通手段を整備することが一番。病院があっても妊婦が病院にたどり着かなければ、何の役にも立たない。
大手製薬会社の利益はこのところ減り続けている。ほとんどの製薬会社は、寿命を延ばすような革命的な開発ばかりに目がいっている。
レベル2と3の国にうまく参入できていない。そこには、既存の薬を必要としているが、もっと安くならないと買えない、何億人という患者が待つ、巨大な市場。製薬会社が国や患者によって値段をうまく変えることができたら、開発済の薬で大儲けができるはず。
9.犯人捜し本能 「誰かを責めれば物事が解決す」という思いこみ
悪いことが起きた時、単純明快な理由を見つけたくなる傾向が、犯人捜し本能。誰かを責めると、複雑な真実から目をそらし、他の原因に目が向かわなくなり、将来同じ間違いを防げなくなる。
【犯人捜し本能を抑えるには】
犯人ではなく、原因を探そう。その状況を生み出した、絡み合った複数の原因やシステムを理解することに力を注ぎ、問題を引き起こすシステムを見直さなければならない。社会の仕組みを支える人たちの功績をもっと認めよう。
a.難民
2015年、一人1000ユーロを払って救命ボートでヨーロッパに向かおうとした4000人の難民が、地中海で命を落とした。難民の多くは、チケットを買うお金もあるし、飛行機も満席ではないが、チェックインの窓口で、航空会社のスタッフに搭乗を拒否される。
2001年のEU指令が、不法移民に対する手段を加盟国に与えた。指令には航空会社やフェリー会社は、入国許可書のない人をヨーロッパに運んだ場合には、母国に送り返す費用を全て負担することが定められていた。ジュネーブ条約に基づいて保護を求める難民は例外とされていたし、当てはまるのは不法移民だけのはずだった。だがそんな例外は意味がない。航空会社の搭乗窓口のスタッフが一瞬で見分けられるわけがない。大使館だって難民審査に少なくとも8ヶ月はかかる。EU指令は一見理にかなっているように見えたが、実際には航空会社はビザのない乗客を誰も搭乗させなくなった。難民がビザを手に入れるのはほぼ不可能。トルコやリビアの大使館には、難民申請を処理するだけの人手はない。シリア難民は、理論上はジュネーブ条約にのっとってヨーロッパに入国する権利があっても、実際には飛行機に乗ることができず、海を渡る他なかった。
ヨーロッパ政府はジュネーブ条約に従って、保護していると言うが、EUの移民政策はジュネーブ条約を骨抜きにし、実際には密輸業者が支配する交通市場を生み出した。到着したボートは没収されてしまうから、ボートは1回限りしか使えない。密輸業者は使い捨てのボートに金をかけるほどの余裕はない。
10.焦り本能 「今すぐ手を打たないと大変なことになる」という思いこみ
世界の見方を歪めてしまう最悪の本能のひとつが、焦りの本能。考えることをやめ、本能に負け、愚かな判断をしてしまう。目の前に危機が迫っていると感じると、批判的に考える力が失われ、拙速に判断し行動する。遠い昔はその本能が人間を守ってくれた。
【焦り本能を抑えるには】
「今すぐに決めなければならない」と感じたら、自分の焦りに気づくこと。焦り本能を抑えるには、小さな一歩を重ねる。焦り本能が顔を出すと、他の本能も引き出されて冷静に分析できなくなる。今やらなければ二度とできないなんてことはめったにないし、答えは二者択一ではない。
最初にやるべきことは、データを整理すること。緊急で重要なことならなおさら、正確で重要なデータだけを取り入れよう。
不確かであることを認めない未来の予測は疑ったほうがいい。未来には必ず見えない部分がある。真ん中あたりの予測と幅があることを心に留め、決して最高のシナリオと最悪のシナリオだけではないことを覚えておこう。
a.地球温暖化問題
ほとんどの人は地球が温暖化していることを認めている。世間を説得する段階はもう終わった。温室効果ガスを大量に排出している人、レベル4の人たちが、地球温暖化問題に必要な総合的な分析と、慎重な評価、そして、考え抜いた決断と、段階的な行動をすべき。
地球温暖化を気にかけているなら、二酸化炭素の排出データをきちんと測定すべき。レベル4の国の1人当たりのGDPは四半期毎に数字が公表されているのに、二酸化炭素の排出データは2年に1度しか公表されていない。スウェーデンが2014年以来、温室効果ガスの排出量を四半期毎に公表している(世界で初めてで、そうしている国は未だに他にない)。ファクトフルネスの実践。
現場で対策に当たる組織は、どのデータを公表するかを自分たちで決めてはいけない。データの信頼性を担保するには、進捗を測るのを現場だけに任せないほうがいい。データが全ての鍵。