一億三千万人のための『論語』教室
2020年08月21日(金)
高橋源一郎著
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河出新書
2019年10月30日発行
1200円
『論語』は孔子先生が主宰している私塾での2500年前の講義録を中心に、話したことばを採録したもの。一筋縄ではいかない。元の漢字の読み方にも、いろんな解釈があり、それを翻訳する人によって違う。高橋氏による厳密な翻訳、ほんの少しだけ現代風にアレンジ。ことばを理解しなければ、人間を理解することはできない。
「礼」と「仁」 儒教の考え方
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儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇
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1.『礼』は相手を思いやる気持ち
『礼』は、社会生活を送っていく場合、それを円滑にするための儀式、決まり事。しかし、その本質は、形式ではなく、相手を思いやる気持ちである。身分の上下に関係はない。 人間で一番必要なものは、ハート。自分以外の他人のことを、本当に思いやることのできる心。それがない人は、どんなに社会常識を知っていても、生きている価値はない。
『和』とは、暗黙のルール。みんなで歩み寄る。聖徳太子の17条憲法の条項に入った「和をもって貴しと為す」。
2.「仁」は最高の道徳、人間第一
『仁者』は、解決すべき問題に誰よりも早く取り組み、その上で、解決したとしても報酬を期待しない。
インテリは、水のように動きのあるものが好きで、『仁者』は、山のように動かず泰然としたものが好き。インテリは、落ち着きがなく、いつもあちこち出かけて、『ここに問題がある、そこにも問題山積み』と言っている。目の前に次々現れることに一喜一憂して、生きている。『仁者』は、黙って家にいて、視線を遠くに向け、じっくり本質的な問題に思いを巡らし、解答を見つける。
3.『中庸』
『中庸』とは、左と右を足して2で割る、中間的なものではない。あらゆる物事の根本的な原理。時代が移り変わっても、変わることのない、本質的な『正義』。そのためには歴史を知らないといけない。
4.学問
『文字』を読む、知ることから始まる。言葉が分かるれば、人間の在り方を知る『礼』について習う。『礼』が理解できて初めて学問が身についたことになる。その先に音楽を学ぶ。『わかり方』にたどり着かなければ、音楽は分からない。音楽を理解した時、ようやく『人間』になることができる。
情熱がない人間は進歩しない。途中に苦しみの時間がなければ、進歩することはない。受け身ではどうしようもない。なにか教わったら、後は自分で勝手にその一つの近くを『掘って』みる。一番陥りやすい罠は、本を読んで解釈して、分かった気になること。
『何かを知っている』とは、自分がどこまで知っていて、どこから先は知らないのかが、はっきり分かっている状態。なにかを学んでいると終わりがない。いつも『途上』にいる。大切なことは、どこかで学びをストップして、現実に戻ること。戻るタイミングを知らなくてはならない。
頑固に自説を曲げないことは、学ぶ者にとっては意味のないこと。何事においても、間違っていたらすぐに謝り、訂正すること。信念とか、過去の蓄積とかは、どうでもよいこと。間違うことを恐れる必要はないが、間違うことに鈍感であることを恐れなければならない。
5.柔軟であれ
4つの「やってはいけない」こと。意地を張らない、こだわらない、頑なにならない、自己主張しない。
若者に必要なのは、性能のいいアンテナ。おかしいなと思える物を捨て、これは確かだ、役に立つことだ、と思えるものを自分でやってみること。大事なことは、他人からどう見えるかとか、他人をどう見るかではなく、自分の生き方をキチンとすること。どんな風に失敗したのかに、人となりが現れる。失敗しなければ分からないことがたくさんある。
60になると、誰のことばでも素直に聞くことができるようになる。気の合う人間とだけ付き合うようになったらおしまい。70になった時には、なんでも好きなことをやっても、人に嫌がられることは一つもなかった。非常時にも、平和時と同じ『芯』のある発言や思考をすれば、人々から理解されず、『愚者』に認定されてしまうが、真の『知者』。
6. 義を見て為さざるは勇なきなり
自分の家のご先祖や仏様でもないものを祭っているとしたら、それは、なにか、自分の利益を考えてのことではないか。それがやっぱりインチキだと思ったら、祭るのを止める勇気だけはなくさないように。
7.政治
政治や社会に関わる者は、「理想」と「やる気」から始めなければならない。世界が発する微弱な電波をキャッチするアンテナを持ち、何か事が起これば、本能的に体が動く。政治のやり方の基本は、大きな事業にしないこと。
政治家が持つべき4つのモラル
威張らない
気を緩めない
人々にとって何が一番大切かを第一に考える
人々のことを第一に、無理をさせない
自分のためではなく公共のためにしてみたいと考える人間に必要なものは4つ。
『文』考えをことばにしてみせること
『行』考えたことを現実の世界の中で実行してみせること
『忠』絶対に信頼できる誰かに出会うこと
『信』出会った人々を裏切らないこと
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