小島歯科医院 名誉院長ブログ

舌の表情

2009年01月12日(月)


 舌の表情と全身状態の変化とは密接に関連している事が多い。舌を注意深く観察することにより、疾病ではない機能低下や臨床検査数値には表れない変化に気づかされる。ひとつの所見にとらわれることなく、総合的に見る必要があるので、近くの歯科医に相談してください。

1.歯痕
歯痕 歯による圧迫痕が舌辺縁部に見られる。舌のはれぼったい状態(胖大舌)が継続している場合と異常嚥下で舌を歯に強く押し当てる筋緊張の強い舌や食べる機能の低下に伴う細くて弱々しい舌によく見られる。

30才女性
地図状舌と舌辺縁に歯痕
夜にくいしばりがあり、右の肩こりと開口時に右へ変位する

 

2.胖大舌
胖大舌 内蔵機能の異常により組織に水分や血液が貯まって舌が肥大する。お酒の飲み過ぎや便秘の人や脂肪肝、痛風、糖尿病などの人によく見られる。唾液が粘っこい状態になりやすく自浄作用の低下に伴い歯周炎の症状も生じやすい。

40才女性
酒量が多い

 

 

3.無苔舌
尿崩症による口腔乾燥症 糸状乳頭と茸状乳頭の全体的な萎縮により舌に苔が見られない状態である。舌粘膜の栄養状態が不良であることを示し、疾患の重度慢性化や疾患の長期化で見られる。

57才女性
尿崩症による口腔乾燥症

 

 

4.溝状舌
溝状舌kojima-dental-office.net/20101227-1876
 舌の表面に裂紋や溝が見られる。溝は血液成分のバランスや栄養状態の不良を示し、深いほど全身状態が不安定な場合が多い。ただし、特別な症状がない、生まれつきの人もいる。

62才女性

 

5.瘀斑
瘀斑1 舌表面や前方の辺縁部に褐色から黒色の斑点が見られる。末梢血管の循環不全や鬱血、体液の滞りなどは、舌だけでなく、身体全体に生じている。歯周炎などの口腔領域の疾患も治癒しにくい。

52才男性

 

 

6.地図状舌
kojima-dental-office.net/20090109-1879

7.舌尖紅
22.12.14.舌 舌の先端が他の部位に比べて赤身を増している状態。身体全体が熱に強く傾いていることを示している。原因としてストレスが考えられる。自律神経系の過興奮、副腎皮質機能の亢進などによって生じると考えられている。全身症状としてはイライラする、怒りっぽくなる、不眠、夢をよく見る、顔面紅潮、強い喉の渇き等が見られる。診療にあたっては注意が必要なことがある。

33歳女性

 

8.紅舌
22.11.17.紅舌 舌表面の血管が拡張し、紅色を呈している。エネルギー代謝の過剰や甲状腺機能亢進症の場合もある。身体、手足はあたたかく、汗ばんでいる。多動・多弁で、活動的な印象を与える。舌苔が少なくなったり、口腔乾燥を伴うことが多い。

21歳女性

 

9.舌ピアス
 高校1年生が自分で穴を開けたそうだ。舌下部静脈が近くを走る、怖い。赤い茸状乳頭が多数見られる。その内部の毛細血管が欝血した所見と思われ、金属アレルギー可能性が低く、単純なストレスや末梢血管の血行障害が考えられる。また、舌の尖端に近い方に見られるので、のどの症状や乾燥なども関連すると考える。

15才女性

舌ピアス1 舌ピアス2

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