コロナ禍における人権保障
2021年07月14日(水)
社会保障ゼミナール
日時:2021年7月13日(火)午後7時30分~9時ごろ
場所:保険医協会会議室&Zoom
講師:井上英夫先生
報告:平田先生、野口先生
司会:大川先生
13日(火)ハイブリッドにて「社会保障ゼミナール」を開催。両先生の報告の後、ディスカッション。秋に開催予定の社会保障セミナーの「テーマをどうするか」を検討した。「コロナ禍における人権保障ーこんな事例をどう考えるかー」となった。
前回のゼミナール
kojima-dental-office.net/blog/20160308-4673
A.平田先生から
コロナの初期段階、逼迫段階における患者や医療者の人権
・自宅待機や宿泊療養
警察庁によると新型コロナウイルスに感染し自宅などで体調が急に悪化して亡くなった人は、去年3月から今年5月までに全国で少なくとも500人以上。
・医療従事者などに対する嫌がらせや差別
・国家が医療人に対して強制力を有する場合は
B.野口先生の在宅医療と人権
・どっちでもいいですよ
強制力のない選択肢と自己決定
どちらを選んでもサポートする
家族の協力と多職種連携
植木鉢スタイル 底の皿が基本的人権
kojima-dental-office.net/20161022-2401#more-2401
・在宅ではできないことが多いが
病院ではコロナ禍で面会ができなかったが、在宅ではできた
C.井上英夫先生からのアドバイス
新型コロナウイルス感染症対応でも基本的人権を中心に据える
・人権は保障されるべきもので支援されるものではない
国は責任を持たない支援や援助ではなく保障しなければならない
・人権は国によって「保障」されるもので、「公助」にとどまるものではない
・自助、共助、「公助」という公助論自体がおかしい
「公助」は支援や援助にすぎない
・自粛論
上から目線の強者が施す弱者ではなく、傷つきやすい人々の人権を考える
・結核やハンセン病の歴史を参考にする
・国連もコロナ対策は人権に基づくことを求めている
生命権、健康権、移動の自由、
・人権保障の「にない手」と担い手の違い
参考に
①新型コロナウイルス感染症と人権
―健康権と住み続ける権利を中心に
井上英夫 201010「新型コロナウイルス感染症と人権」労旬1969号(2020年)6-15頁
新型コロナウイルス感染症の影響によって、人々の基本的人権、そして必死になって医療を支えている医療・福祉労働者、すなわち「人権のにない手」の労働、生活、健康権が危機に瀕している。ウイルスは誰にでも感染するが被害は不平等であり、脆弱な人々(障害のある人、病気の人、貧困な人、難民等、なかでも重篤化、死亡率のとくに高い高齢者)の人権は侵害されやすい。
しかし、政府はじめ多くの政党、マスコミ、研究者・専門家、国民そして残念ながら医師をはじめとする医療・福祉従事者にも人権の視点は非常に弱いと言わざるをえない。先のような安倍政権そして東京・大阪をはじめとする自治体の自粛・要請、補償拒否政策は「支援」あって「補償」・「保障」なしという無責任政策であるが、これに対する批判も「支援」の増額・強化等にとどまり、人権を侵害するな、剥奪するな、保障しろという声は大きくない。
②国連事務総長報告COVID-19と人権に関する報告
kojima-dental-office.net/20210116-5518
アントニオ・グテーレス国連事務総長は、「新型コロナウイルス感染症に対するあらゆる対策が、人権に基づき計画・実施されることを求める」。人権は国が守らねばならない義務であることを強調。
③出口治明著「自分の頭で考える日本の論点」
kojima-dental-office.net/blog/20210126-14561#more-14561
基本的人権
社会問題を考える時は、数の論理で判断できるのか、それとも数の論理とは関係のない人権に関わるのかを、分けて考える必要がある。
④大沼保昭著「国際法」
kojima-dental-office.net/blog/20210403-14689#more-14689
人権
「人権」はしばしば他の価値や利益を無効化する「聖なることば」として機能する。しかし、こうした味方は日本を含む先進国のものである。
人権の普遍性を想定して世界中の国々に広めようという考えは誤りであり、人権は各国の文化文明・宗教的伝統と特質に従って独自に選択するやり方で実現すべきものである。
1990年代に社会規律が保たれている「優等生」の国、シンガポールのリー・クアンユー首相が「人権の特殊性・相対性」を主張。この主張はそれまでナイーブに人権の普遍性を信奉していた欧米の政府関係者や知識人に大きな衝撃を与えた。日本政府は欧米先進国や韓国と歩調を合わせて普遍的主義的人権観を主張した。
1993年に採択されたウィーン人権宣言は、相対主義的人権観も一定程度取り込みつつ、全体としては人権の普遍性をうたいあげるという、価値観・人権観が大きく異なる諸国が合意できる人権観を体現したものとなった。
D.事例を持ち寄って人権を考える
・患者、家族、住民、医療者(経営者、労働者)それぞれの人権
本人の人権保障だけではなく、家族の人権も保障しなければならない
・応召義務と人権
発熱のある患者をどうする
・パンデミツクにおける医療者の動員
・インフォームドコンセント
情報提供と自己決定
・ワクチン
同意を得られない要介護者へのワクチン接種
ワクチン未接種
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