のぼるくんの世界

のぼる君の歯科知識

科学的に正しい子育て

2020年08月10日(月)


科学的に正しい子育て森田麻里子著 
光文社
2020年1月30日発行
900円
 医学部教育では、子供の育て方を教わることはなかった。東大医学部卒ママ医師が医学論文約170本を徹底リサーチし、できる限り科学的な根拠のある情報から、疑問に具体的に答えている。議論の分かれているトピックについては、研究そのものの結果をできるだけ正確に、かつ、分かり易く解説している。育児に迷わない!、育児が楽になるを目指して。
1.予防注射
①妊娠2ヶ月前までに
 生ワクチンタイプの風疹・麻疹(はしか)・おたふく風邪・水疱瘡の4つは、妊娠中に摂取できないので、妊娠2ヶ月前までに摂取する必要がある。今の20~40代のママパパ世代は、予防接種制度の変わり目にあたってしまい、これらの病気の免疫が不十分な人が多い。医療機関で抗体検査を行って、抗体価が落ちているものだけ摂取する。生ワクチン摂取後2ヶ月間の避妊が必要。パートナーや同居の家族にも摂取が必要。
 日本では数年ごとに流行が繰り返されていて、2012~2014年の風疹の流行では45人の赤ちゃんが先天性風疹症候群と診断された。心臓病や難聴、白内障などが起こる。
②妊娠中
 妊娠中は、インフルエンザと百日咳のワクチン。
 妊娠中はインフルエンザが重症化しやすい。インフルエンザ流行期に呼吸器の症状で入院した人数は、妊娠後期だと妊娠していない時期に比べて5.1倍。
 生まれてくる赤ちゃんにもインフルエンザの免疫をつけてあげることができる。生後6ヶ月までの赤ちゃんはインフルエンザワクチンを接種することができない。赤ちゃんを守るためにパパ、ママが接種しておくことが大切。赤ちゃんが生後6ヶ月になるまでにインフルエンザに罹った人数は、ワクチン接種グループでは、未接種のグループの約半数に抑えられた。
 6ヶ月未満の赤ちゃんが百日咳にかかってしまうと、咳が続いてそのまま呼吸が止まってしまい、亡くなることもある重大な病気。百日咳が含まれる4種混合の接種は生後3ヶ月からになる。
③赤ちゃんと子供
 赤ちゃんはお腹の中にいる間にママから免疫をもらうが、生後6ヶ月頃にはこれが切れてしまう。予防接種を受けられる月齢になったら、なるべく早く済ませることが大切。
 赤ちゃんが受ける定期の予防接種は、生後2ヶ月からB型肝炎、ヒブ、肺炎球菌の不活化ワクチンに始まり、0歳児のうちだけで6種類もある。注射の数にすると、合計13本。
 不活化ワクチンは、細菌やウイルスを殺して、免疫を作るのに必要な成分を取り出して作られている。十分な免疫をつけるには3~4回ワクチンを打つことが必要。同じ種類の不活化ワクチンを打つ場合、効果的に免疫をつけるため、中6日以上を空ける必要がある。
 BCG、MR(麻疹風疹混合)、水痘などの生ワクチンは、病気の原因となる細菌やウイルスの毒性を弱めたもの。生きた細菌やウイルスが体の中で増殖して、免疫が作られるという仕組みになっているので、1~2回の摂取で十分な免疫をつけることができる。生ワクチンの場合は、異なる種類であっても、間隔を中27日以上空ける必要がある。生ワクチンの予防接種をすると、体の中では、細菌やウイルスの増殖を抑えるインターフェロンが作られる。この時期に別の生ワクチンを接種すると、後から接種したワクチンに入っていた細菌やウイルスが増殖できず、ワクチンの効果が弱まってしまう。つまり、異なる種類の生ワクチンを打つ場合、インターフェロンの影響を避けるため、同時接種するか、27日以上の間隔を空ける必要がある。

2.妊婦と食事のリスク
①妊娠中に避けるのは5つの食品だけ
 加熱殺菌していないナチュラルチーズ、肉や魚のパテ、生ハム、スモークサーモン、生肉は、絶対に食べてはいけない。これらを食べると、お腹の赤ちゃんに重大な悪影響のある微生物に感染するリスクがある。
②妊娠中はリステリア菌の食中毒に注意する
 リステリア菌は河川や動物など環境中に普通に存在するが、妊娠中に感染すると、流産に繋がったり、赤ちゃんが感染して敗血症になってしまったりする。妊娠中は普通の人よりおよそ20倍リステリア菌の食中毒にかかりやすい。
 リステリア菌は加熱により殺菌できるが、塩漬けの食品や冷蔵庫の中でも繁殖できるという特徴がある。海外では、加熱殺菌していないナチュラルチーズ、肉や魚のパテ、生ハム、スモークサーモンでの食中毒が多い。プロセスチーズは加熱して作られているので問題はない。
 リステリア菌は生野菜や果物にもいる。妊娠中は特によく洗って使う。
③トキソプラズマ症。
 トキソプラズマは、小さな寄生虫で、主に豚や羊の肉、土や猫の糞などに存在している。健康な人が感染しても問題ないが、妊娠中に初めて感染すると、流産に繋がったり、赤ちゃんの眼や脳に障害が出たりする。
 トキソプラズマは67度以上まで加熱しないと殺菌できない。ローストビーフ、レアステーキなど加熱が不十分な肉を食べるのは避ける。日本でも6.5%の牛が感染しているとの報告がある。
 猫のトイレの掃除はできるだけ避け、土に触れる際は手袋・マスク着用することが大切。

3.母乳育児の「神話」を真に受けない
①哺乳瓶の消毒について
 ミルクと関連する病気の原因菌は、サカザキ菌とサルモネラ菌。
 現在の製造技術では粉ミルクを無菌にすることはできず、土壌や水など環境中に存在するサカザキ菌はどうしても検出される。日本の粉ミルクの調査では2~4%。感染すると、髄膜炎などの重症の感染症を起こすことがある。1歳未満の赤ちゃんは感染リスクが高い。サカザキ菌は71~72℃に加熱すれば、0.7秒毎に10分の1に減らすことができる。
WHOのガイドラインでは、粉ミルクの調乳は70℃以上で行うように書かれている。
 哺乳瓶は使ったらすぐに洗浄し、ブラシと洗剤を使って、ミルクの汚れをきちんと洗い落とす。毎回よく洗っていても、どうしても少しずつ汚れがたまってきてしまう。そんなときは数日に1回でも消毒する。
 さらに、赤ちゃんを感染から守るためには、哺乳瓶を組み立てたり、調乳したりする前には、必ず手を洗う。大切なことは道具を無菌にすることではなく、菌が繁殖しないよう、汚れを落とすこと。ミルクを作ってからはなるべく放置しない。
②離乳食
 母乳の栄養はパーフェクトではない。ビタミンDとビタミンK、鉄分が足りない。アレルギーを恐れた食事制限や日光浴の不足により最近になって、くる病の子が増えてきている。
 アレルギー反応が起こってしまうのは、湿疹などのバリアが破壊された皮膚から抗原が入ってくることが原因であり、逆に腸から抗原が吸収されるとアレルギーを抑える方向に働く。既に乳児湿疹などで皮膚バリアが壊れている場合は、まずしっかりと治療を行って、皮膚の状態を改善することが大切。赤ちゃんの肌に塗る保湿剤やオイルは、食品成分が入っていないものを選ぶ。アレルギーのリスクがある可能性がある。
 食物アレルギーの みかた
kojima-dental-office.net/20181111-4353#more-4353
 アレルギーを防ぐために卵などの食品の摂取を遅らせることは、現在推奨されていない。ビタミンDは不足しやすくなる。母乳中の鉄分はとても少ないため、生後6ヶ月を過ぎたら離乳食を通じて鉄分を摂取する必要がある。赤ちゃんはママのお腹の中で鉄分を体に蓄えて生まれてくるが、生後6ヶ月までにその蓄えを使い切ってしまう。
 大豆などの植物性食品にも鉄分は含まれているが、動物性食品より吸収が悪い。果物などビタミンCを多く含む食品を一緒に食べると吸収が促される。
 ボツリヌス症のリスクがある蜂蜜や黒糖は1歳未満の子に与えない、食中毒になりやすい生ものや詰まらせやすい食材(餅・粒のままのピーナッツ・コンニャクゼリーなど)は避ける。
 赤ちゃんの日光浴で紫外線を浴びることも大切。紫外線は、皮膚に当てることでビタミンDを作り出す。
③乳幼児とジュース
 生後3~4ヶ月には果汁を飲ませない方がよい。
 生後6ヶ月頃頃になって果物を食べさせたい時は、ジュースではなく果物を潰して、繊維質を含んだ果肉ごと与える。
 繊維質が取り除かれているジュースは、果物そのものよりずっと急激に糖分が吸収されてしまうので、健康によくないことが分かってきた。アメリカ小児学会は、1歳までの乳児にジュースを与えることを勧めていない。
 膵臓は4歳頃完成し、インスリンを作れるようになる
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 ジュースの摂取量が多い子どもたちは、牛乳や肉、パン、野菜の摂取量が少なく、鉄や亜鉛、ビタミンDが不足する傾向にある。鉄不足は貧血を引き起こし、神経系の発達にも影響する。亜鉛も免疫システムや傷の治りに関係する。

4.寝かしつけ
①仰向け寝
 乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクを下げるため。
 一番困るのは、寝返りを始めた頃の赤ちゃん。特にリスクが高いのは、低月齢の子がいつもと違ってうつぶせになってしまった時。
大切なことは、ママ・パパが寝ている間にうつぶせになってしまってもリスクが最小限になるよう、柔らかい布団や枕、ブランケットなどを使わないこと。空っぽのベビーベッドに寝かせるのが最も安全。敷き布団は赤ちゃん用の硬いマットレスを利用し、シーツをピッタリと敷く。
②赤ちゃんや幼児と睡眠
 赤ちゃんや幼児の必要なお昼寝を含めた睡眠時間は  
  0から3ヶ月は14~17時間
  4~11ヶ月は12~16時間
  1~2歳は11~14時間
  3~5歳は10~13時間
 体内時計がしっかり整ってお昼寝と夜の睡眠が区別できるのは、生後3ヶ月頃。
 大人では、生活が夜型になったり、週末に朝寝坊をしている場合、生活習慣病などのリスクが高まることが分かっている。体内時計の乱れにより、ホルモンの分泌や血糖値の調整が乱れることが主な原因。
 幼児期から特に意識して、朝方の生活に整えることが大切。朝は必ず毎日同じ時間に起こすようにする。先ずは休日も平日と同じ時間に早起きすることから始める。

5.タイムアウト
  子どもの脳を傷つける親たち
kojima-dental-office.net/blog/20171218-8419
 言葉で伝えるだけでは不十分な場合に、タイムアウトと呼ばれる方法を勧めている。罰ではなく、クールダウンの時間。
 やり方は
 1「(悪い行動)をやめないと、タイムアウトにしますよ」と警告する
 2それでも悪い行動を繰り返したら、部屋の隅など静かな場所に連れて行く
 3タイマーで時間を計り、年齢×1分間、その場にいさせる

6.妊娠前~妊娠中のサプリメント
①葉酸サプリメント
 1日あたり400マイクログラムの葉酸サプリメントの摂取が、妊娠1ヶ月前から妊娠3ヶ月まで推奨されている。3ヶ月以降は240マイクログラム。勧められている一番の理由は、赤ちゃんの神経管閉鎖障害という先天異常を予防するため。サプリメントを摂ることで発症リスク50~70%下げられる。
 受精後4週で神経管ができる。完全な管状にならないのが神経管閉鎖障害で無脳症や二分脊椎といった病気を起こす。日本では年間500~600人の赤ちゃんがこれらの病気になる。無脳症の場合は、流産や死産になることが多い。二分脊椎の場合でも、生後すぐに手術を受け、生涯にわたりリハビリを受ける必要がある。
 妊娠が分かるのは早くても妊娠4週頃だから、妊娠前からサプリメントを飲んでおくことが必要。食品中の葉酸の吸収率は約50%、サプリメントでは85%程度。妊娠3ヶ月以降は、わざわざサプリメントを飲まなくても食品から摂取すれば十分。
 葉酸を摂りすぎたり、妊娠後期まで飲んでいたりすると、喘息のリスクが高まるかもしれないという研究がある。関連性ははっきりせず、意見は一致していない。
 ②鉄サプリメント
 貧血がなくても鉄サプリメントは摂取した方がよい。妊娠3ヶ月を過ぎたら鉄サプリメントを摂って頂きたい。妊娠初期は2.5ミリグラム、中期・後期は15ミリグラムを妊娠していない時の摂取量6~6.5ミリグラム/1日に追加で摂取するように勧めている。
 鉄分の役割は血液を作ること。赤ちゃんの脳や体の発達にも大切。母親が鉄欠乏性貧血の場合、赤ちゃんの体重増加が不十分になるリスクが2倍になっている。
 なかなかたくさんの鉄分を摂取することが難しいので、妊娠中期以降は、10~30ミリグラムの鉄分のサプリメントの摂取することをお勧めする。鉄分のサプリメントのほとんどは非ヘム鉄。吸収率があまり良くないので、ビタミンCや動物性のタンパク質と一緒に摂るのかポイント。
 鉄は、お茶などのタンニンを含む食物や、乳製品などカルシウムを多く含む食品と一緒に摂取すると吸収率が低下する。
 ヘム鉄は主に肉類や魚類に含まれ、吸収率が優れている。
アサリの水煮缶100グラムあたり29.7ミリグラム
牛モモ肉100グラムあたり2.5ミリグラム
鶏モモ肉皮なしで2.1ミリグラム
豚モモ肉0.5ミリグラム

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