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親と子の食物アレルギー

2017年11月04日(土)


親と子の食物アレルギー伊藤節子著
researchmap.jp/read0068981/
講談社現代新書
760円
2012年8月20日発行
略歴
1975年京都大学医学部卒業、武田総合病院小児科部長を経て、
2000年同志社女子大学生活科学部食物栄養科学教授科
「食べること」を目指した食事療法の研究をしている

 食物アレルギーはアレルギー体質があることを示す最初の重要なサイン。乳児期発症の食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎を正しく診断して治療することが大切。治療のゴールは、症状をおこさずに「食べること」と、気管支喘息を発症しないこと。
 食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎は生後数ヶ月以内に発症する。食物アレルギーと診断された場合には、早くアレルギー体質があることが分かって良かったと思うこと。早期に診断して、必要最低限の食品除去をすることにより、アトピー性皮膚炎が治ったり、即時型反応を起こさなくなるばかりではなく、新しい食物アレルギーを防ぐことができる。また早期に室内環境整備を開始すれば、喘息発症の予防も可能。
 食物アレルギーの みかた
kojima-dental-office.net/20181111-4353#more-4353
 知っておきたい食物アレルギーのいろいろ
kojima-dental-office.net/20180630-4273#more-4273

A.食物アレルギーについて
 食物アレルギーの関与したアトピー性皮膚炎では、授乳中のお母さんが原因となる食品の摂取をやめると、赤ちゃんの皮膚症状は速やかに治る。そればかりか、早くその食物を摂取できるようになる。いつまでも除去食が必要なわけではない。治るチャンスを見逃さないことが大切。
 アレルゲンとなる食品をお母さんが食べ続けると、症状が続くだけでなく、腸管のバリア機構が弱くなる。すると、他の食物もアレルゲン性を持ったまま吸収されやすくなり、新たな食物アレルギーがおこりやすくなる。
 皮膚炎自体は軟膏を塗って騙し騙し症状を抑えていれば、1歳のお誕生日迎える頃にはアレルゲンを含む母乳もほとんど飲まなくなるので皮膚症状が軽快していく。ただし、感作の程度が高いと、離乳食として直接食べた時に即時型反応を起こすことがあるので注意が必要。(感作とは抗原特異的IgE抗体が産生される状態)

 1.食物アレルギーになる人とならない人はどう決まる?
 ①アトピー性素因をもっている人のみにIgE依存性の食物アレルギーはおこる
  アトピー素因とは、
   ・外来からの抗原に対して特異的IgE抗体を産生しやすい遺伝的な素因
   ・近親者にアレルギー疾患の方がいるかどうかで判断する
     気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎など
   ・食物アレルギーという疾患ではなく、アレルギーをおこしやすい体質が遺伝する
 ②特異的なIgE抗体産生をする食物が少量ずつ繰り返し生体内に入る乳児
   ・お母さんが毎日のように原因となりやすい食物(卵、牛乳、小麦など)を摂取し、
    母乳中に微量に分泌される

 ③赤ちゃんの時にアトピー性皮膚炎を発症しなければ、大きくなってから食物アレルギーがアトピー性皮膚炎の形をとって発症することはまずない。

 2.乳児期と離乳期における食物アレルギーの違い
 お母さんが卵1個を食べて赤ちゃんに母乳をあげた場合、赤ちゃんが1日の母乳を1リットル飲んでもせいぜい1日に数十マイクログラムの卵抗原を摂取することにしかならない。症状は、母乳を飲んだ直後からのかゆみと皮膚の発赤、まれに蕁麻疹程度。また、6~8時間後、あるいは1~2日後には新たな湿疹も表れてくる。
 一方、離乳期に離乳食として茶碗蒸しの上澄みを与えた場合、蕁麻疹や呼吸器症状などの即時型反応が出現して、慌てて病院に駆け込む。抗原量が一気にミリグラムあるいはグラム単位で摂取されたため。

 3.食物アレルギーが成長とともに治るしくみ
 食物アレルギーは、赤ちゃんの時期に最もよく見られる。タンパク質がアレルギー反応を起こすのは、“ちょうどよい”大きさがある。分子量が1~7万。子どもの発育に伴い、消化能力や腸管の免疫システムが成熟すると、抗原性を保ったまま食物が吸収されることはほとんどなくなり、アレルギー性疾患もほとんどのものが治ったり、同じものを食べても症状をおこしにくくなる。
 ①消化機能
 生後3~6時間で胃酸の分泌が始まると、胃液が酸性へと変化し消化酵素を活性化するため、授乳を開始するとタンパク質を分解する能力が急速に増加する。消化酵素により、小さく分解されればIgE抗体にアレルゲンと認識されず、IgE依存性のアレルギー反応は起こらない。胃内においてタンパク質を分解する酵素の働きが成人と同じ程度になるのは2歳頃で、胃酸の分泌が成人と同じ程度になるのは4歳頃。
 ②腸管バリア機構の亢進
 腸管のバリア機構が成熟すると、分子量が約7万以上の大きな物質は腸管から吸収されることなく、便中に排泄されるので、アレルゲンとしては通常は働かなくなる。食物アレルギーが生後数ヶ月以内に成立しやすい理由の一つ。
 腸管におけるアレルギー反応が同時に存在する別のタンパク質の吸収を促進する。この結果、いったん食物アレルギーが成立すると、新たな食物アレルギーが成立しやすい。乳児期における早期よりのアレルゲン除去を指導する根拠となっている。

 4.食物アレルギーの原因となりやすい食物
 ほとんどの子どもに卵アレルギーがあり、それに牛乳や小麦が加わっていく。救急外来を受診した乳児ではこの3つの食品が原因の90%を占める。卵、牛乳、小麦に関しては、大半が3歳までに治り、即時型反応で治りにくい場合でも成長するにつれて軽くなる傾向がある。
 大きくなると、原因となる食品は増えていくが、どの年齢でも上位5品目が原因の60%以上を占める。大きな子どもや成人の食物アレルギーは、即時型反応。年長児では甲殻類や日本そば、ピーナッツなど、成人では果物なども。日本そば、エビ、ピーナッツは頻度は少ないけれども、いくつになっても発症しうることと、いったん発症すると治りにくい。それまで大好物で食べていた食品によりある日突然、アレルギー症状を起こして食べられなくなる場合がある。

 5.症状のおこり方と時間による分類
 ①即時型反応
  ・摂取後2時間以内に症状がおこる(ほとんどは食べた直後から15分以内)
  ・唇などの腫れ、皮膚の発赤、かゆみ、蕁麻疹、嘔吐などの症状
  ・複数の臓器に即時型アレルギー反応が出現する場合をアナフィラキシー、
     血圧低下などの循環不全を伴った場合をアナフィラキシーショック
  ・血液検査により特異的IgE抗体が見つかる
  ・大きな子どもや大人に見られる食物アレルギーはほとんど即時型反応
 ②非即時型反応
  ・食べてから6~8時間後と1~2日後に症状が出現する
  ・乳児の食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎と新生児の消化器症状

 6.アレルギー反応が起こる仕組み
 抗原特異的IgE抗体は、皮膚や粘膜に多く存在しているマスト細胞や血液中を巡回している好塩基球のIgE受容体上に結合。受容体にある程度抗体が着くと、アレルギー反応が起きる準備は完了。この状態で、食物がアレルゲンを持ったまま吸収されると、マスト細胞や好塩基球が活性化されてヒスタミンが遊離される。このヒスタミンによって症状が引き起こされる。即時型反応はすぐにおこる。

 7.アレルギー性疾患増加の背景
 アレルギー性疾患にはその成分の一つである脂肪酸が大きく関係している。
 魚に多いn-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量は減り、植物油中のリノール酸に代表されるn-6系多価不飽和脂肪酸の摂取量が増え、n-6/n-3比が非常に高くなった。代表的なn-6系多価不飽和脂肪酸であるリノール酸からはアラキドン酸が産生され、アラキドン酸に酵素が働くと次々と代謝され最後には血液を凝固しやすくしたり、アレルギー炎症を起こしやすくする物質が作られる。その結果、心筋梗塞がおこりやすくなり、気管支喘息やアトピー性皮膚炎も治りにくくなる。
 脂質のバランスを取る。植物油を減らすこと、使うとしてもリノール酸の含量が少なくn-6/n-3比の少ない菜種油か大豆油にする。肉類より魚を多く食べる。

B.食物アレルギーと診断されたら
 乳幼児期に食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎と診断された場合にはきちんと卵除去を行う。卵によるアレルギー反応を避け、傷んだ腸管の粘膜の修復をはかり、新たな食物による感作を避けることが大切。アトピー素因が強い子どもであると考え、ダニ対策を中心とした室内環境整備を開始しよう。離乳食の開始自体を遅らせる必要なく、むしろ積極的に進める。除去に苦労する大豆や小麦の開始は、選択の幅の大きいお魚や肉類をしっかり摂るようになってからにする。

 1.食物アレルギーの子どもがアレルギー外来を受診されるきっかけ
 ①生後1~2ヶ月より顔面に湿疹が出現して、皮膚科で“乳児湿疹”と診断された場合。ステロイド軟膏を塗った時には良くなっても、その効果が切れるとまた湿疹が出てくるということをくりかえす。そのうちに3~4ヶ月健診の時期になり小児科アレルギー専門外来を薦められて来院されるパターン。
 ②はじめて粉ミルクを飲んだ時や離乳食として茶碗蒸しの上澄みを飲んだ時に、全身が真っ赤になる、発疹や蕁麻疹がでる、嘔吐や呼吸器症状が出るなどおこり、驚いて救急受診をして、牛乳や卵のアレルギーと診断される。赤ちゃんの多くは、それまで“乳児湿疹”と言われてステロイド軟膏を塗ると治り、やめると症状が出てくるを繰り返していた。ステロイドを塗っても症状を繰り返す場合にはすぐに小児科のアレルギー外来を受診する。

 2.食品除去のゴールは、症状をおこさずに「食べること」
 食品除去は、決して自己判断では行わずに、食物アレルギーの診断と治療に精通している小児科医による正しいアレルゲン診断とその結果に基づく「食べること」を目指した指導を受け、必要最低限の食品除去が大切。
 より多くの食品を除けば、かえって過敏状態が続き、食べられない食品がどんどん増えていく。栄養面にも配慮して必ず代替の食品で補うことが必要。
 ほとんどの場合には成長とともに症状を起こさずに食べることができるようになるので、その時期を見極めることが治療上とても大切。除去解除を開始するための指導を受けるためにも、定期的な通院が必要。受診時には食物日誌を持参して具体的な指導を受ける。
 管理栄養士に求められているのは、抽象的な指導ではなく、具体的なレシピであり、具体的な調理法。質問に対してきちんと答えられ、お料理好きで、ありふれた食材を用いてお総菜を提案できる力。

 3.食品除去の実際
 1993年に京都市内の保育園を対象に調査し、アンケートを回収できた125園、在園児1万2030名のデータを解析すると、食品除去が必要な割合は、乳児では10.6%でしたが、1歳になると、6.7%。2歳では4.7%、3歳を超えると2%台にまで減っていく。2009年にも同様の調査を行った時は、1歳児で食品除去している割合がやや増加していたが、その外の年齢ではほとんど同じ結果でした。異なっていたのは1993年の調査では、30%近くの園で保護者の申し出があれば食品除去が行われていたが、2009年の調査では数園を除いて医師の診断書あるいは指示書が必要となっていた。
 3歳以降になっても食品除去が必要な子どもというのは、大半が即時型反応を起こす子ども。小学校入学時になっても食品除去が必要なのは、アレルギー外来に来られた食物アレルギーの患者さんの大体1~2%。
 小学校入学時まで症状が残る場合には、自分で自分のみを守る術を身につけるように指導することが大切、周囲の理解も必要。実際に食物アレルギー児が口腔内に違和感を覚えたら、すぐに口の中から出し、口をゆすいだ後に、常に携帯している緊急常備薬を飲ませる。飲んだとたんに口腔内の違和感が採れるので、「スーッとよくなった」と表現する。

 4.治療開始が早ければ早いほど効果がある
 3~4ヶ月健診で医療機関の受診を勧められ、食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎と診断された場合、お母様の食事内容からアレルゲンを含む食品をきちんと除去し、離乳食にその食物を与えないようにする。7~8ヶ月健診時にはすっかりきれいになる。
 早く治療を開始すると、新しい食物アレルギーもおこりにくくなる。もともと1歳を過ぎればアトピー性皮膚炎の原因として新しい食物アレルギーがおこることはほとんどなくなるので、当面の目標は1歳の時にアレルギーの原因と診断された食物以外を症状をおこさずに食べること。経過が良く皮膚症状が完全になくなってから数ヶ月以上経っていれば、1歳すぎから少しずつ試していくことができるかどうかの検査を小児科のアレルギー専門医のもとで受けられる。

 5.体調で変わる症状
  アレルギー症状をおこさずに食べることができるようになった食品でも、風邪を引いた時には症状が出ることがある。体調が悪化すると腸管のバリア機構が弱まり、吸収される抗原量が増えるため。
 食べてからすぐに走り回ったり、自転車で全力疾走したり、または入浴した時などに蕁麻疹や呼吸器症状がでたという訴えをよく聞く。食品中のタンパク質が未消化または消化不十分で、アレルギーをおこしやすい状態のまま吸収されたためにおこったものと考えられる。

C.食事療法についてよく見られる誤解
 1.過剰防衛に注意
  ・根拠なく食品の摂取を避けるよりも、アレルゲンと診断され、除去の必要がある食品を確実に回避することが重要
  ・除去する食品を多くするほど良いというのは大きな誤解
  ・アレルゲンとなるのはタンパク質であり、DNA(遺伝子)ではない
    卵アレルギーがあると鶏肉も、魚卵も、牛乳アレルギーがあると牛肉も除去する必要なし。重要なことは、小さな子どもでは鶏卵アレルギーが多く、鶏卵アレルギーがないのに他の食物アレルギーがあることはほとんどない。そのため、イクラアレルギーは、ほぼ100%が鶏卵アレルギーの子どもに発症する。一方、免疫学的には牛乳アレルギーの約40%の患者さんの血液中には牛肉に含まれるウシ血清アルブミンと反応する抗体が含まれている。加熱調理した牛肉ではアレルギー反応を起こさない。ただし、レアステーキなど火の通りの十分でない物には注意する。
  ・お米のアレルギー
 本当にお米のアレルギーであるのかどうかをきちんと調べる。血液検査でお米に特異的なIgE抗体が非常に高くても摂取することにより即時型反応やアトピー性皮膚炎の悪化が見られないことが大半。もちろん、お米により即時型反応を起こす例も稀にある。
 お米のアレルギーがあるから雑穀を主食とするは間違い。雑穀とお米との間にはアレルギーに関しては共通成分があるから、アレルギーの治療としてわざわざ雑穀を食べるのは逆効果。

 2.アトピー性皮膚炎があると、その原因は必ず食べ物であるというのは大きな間違い 乳児期発症のアトピー性皮膚炎には食物アレルギーに関与していることが多いが、1歳の誕生日を過ぎてから発症したアトピー性皮膚炎では食物アレルギーの関与はほとんどない。アトピー性皮膚炎のほうから見ると食物アレルギーが関与しているのは乳幼児でも3分の1に過ぎない。
 大きくなってからアトピー性皮膚炎と診断された場合には、特定の食物の摂取を控えるのではなく、皮膚を清潔に保つためのスキンケアと軟膏塗布による治療を行う。食品除去ではなく、バランスのよい食事をしっかり摂るように努める。

 3.食物アレルギーと紛らわしい症状
 一定量以上摂取すると誰にでも症状がでる毒物反応。鯖を食べた後蕁麻疹や腹痛を起こした中で、本物の鯖アレルギーは10人に1人のみ、大半は古くなった鯖の中のヒスタミンによる中毒。現在ではサバ特異的IgE抗体が証明された時にのみ鯖アレルギーと診断する。
 魚は1度解凍された物が店頭に並んでいることが少なくない。再度冷凍すると魚の中のヒスタミンが増えて、そのヒスタミンそのものにより症状が起きる。調理してから冷凍する。

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