9割の誤嚥性肺炎はのどの力で防げる
2017年11月12日(日)
浦長瀬昌宏著
KADOKAWA 中経の文庫
640円
2017年10月14日発行
嚥下トレーニング協会
www.enge.or.jp/
のど仏の位置が低くなっても気にしている人は少ない。「飲み込み力」が弱くなったことを自覚することもなかなか難しい。しかし、40代からすでに、のどの筋力は衰え始めている。のどを意識的に動かせない人も意外と多い。飲み込むことは、患者さん自らでしか行えない動作なので、患者さんの努力なしに「飲み込み力」(嚥下機能)を高めることはできない。適切な負荷をかけて鍛えてあげると、力を維持することができる。 チェック
・のどを上下に動かせる
・水を飲んだ後、のどを10秒間上げたまま止められる
A.誤嚥性肺炎
誤嚥性肺炎は「飲み込み力」が弱くなって誤嚥しなければ、かかるはずのない病気。
のどに唾液が溜まるようになる→夜間に唾液を誤嚥する→咳やむせが多くなる→食事の誤嚥が増えてくる→咳嗽反射が衰える→誤嚥性肺炎が起こりやすくなる
誤嚥性肺炎と診断された後の1年以内の死亡率は17%、2年以内ではなんと50%にも達する。
誤嚥性肺炎は、食べ物や唾液をうまく飲み込むことができるようにならない限り、炎症はずっと続く。
口の中をきれいにすれば、誤嚥性肺炎にかかる可能性を減らすことはできる。しかし、それでも唾液が気管に流れ込むのを防ぐことはできない。
B.「かくれ嚥下障害」(軽症の嚥下障害)
飲み込みにくくなっても、症状が目に見えにくいので、歩行や認知の異常に比べると、嚥下障害は重症化するまで気づかれないことが多い。自分では気が付かないうちに「飲み込み力」が弱くなっている軽度の嚥下障害にかかっている人が多くいる。それを「かくれ嚥下障害」と呼ぶ。
「飲み込むこと」は誰も手伝うことができない。のどは自分だけにしか動かせない。人はたった0.5秒から1秒という短い時間で、のど(喉頭)を上げ、舌を動かして、食べ物を飲み込んでいる。
のど仏の位置が低くなっても気にしている人はいない。のどの位置が下がるということは、のどを支える筋力が低下している証拠、飲み込みにくくなることを意味する。のどの位置が下がっていると、その分、のどをさらに上げなければならないから、余計に筋力が必要となる。40代からすでに、のどの筋力は衰え始めている。「飲み込みづらくなった」と感じた時には、すでに病状が進んでいる。
C.「のどを意識的に動かす」こと、あなたはできる?
「飲み込むこと」は「のど(喉頭)がタイミングよく動くこと」。意識しなくてもできる動作。しかし、意識しても飲み込むこともできる。呼吸と同じ。深呼吸に対して、「深嚥下」と呼んでいる。
深嚥下とは「しっかりとのどを意識的に動かして飲み込む」こと。のど(喉頭) がしっかり動かしていれば、「飲み込み力」も鍛えることができる。のどを意識的に動かせない人は、意外と多い。「のど認知証」と呼ぶ。
ボイストレーニングをしている人は、すぐにのどを意識的に動かすことができた。声帯は喉頭にあるため、声帯を意識的に動かすことに加えて、喉頭も動かしている。特に、高い声を出すと、のどの位置が上がるので、のどの筋肉を鍛える効果がある。
D.「飲み込み力」を改善するための3つのステップ
1.嚥下の仕組みを理解する
のど(喉頭)の位置が分かれば、どのように動いているか、具体的なイメージを思い浮かべることができるようになる
①嚥下に関わる体の構造を知る
喉頭が上がると、食道の入り口が開き、食べ物が食道に入る。
喉頭がそのままの位置にあると、気管に吸気が入るようになっている。
②どのように飲み込んでいるか?
飲み込む行為はマヨネーズのチューブをしぼる動きと同じ
・のどの空間を絞り込み、食べ物を食道に送り込む
舌を後ろに動かし、喉頭を上げ、のどの中を狭くする。
ギュッと狭くする圧力によって、食べ物を食道へと運んでいる。
・食べ物がのどに入っても、喉頭が動かなければ食べ物はそのまま
のどの空間に溜まる。
・喉頭蓋を反転させることによって、気管に食べ物を入れないようにする
声門を閉じ呼吸を止める
③「飲み込み力」が弱くなる5つの理由
・飲み込む動きが遅くなる
・のど(喉頭)の位置が低くなる
・のどの感覚が鈍くなると、嚥下反射が起こりにくくなる
・飲み込むタイミングを合わせられない
・食道の入り口が開きにくくなる
2.自分の「飲み込み力」を把握する
・のどを上げて止められれば、「のどの認知症」ではない。
・のどを指で押さえて左右に5ミリずつ横に動かせられればOK。
3.嚥下トレーニングで「飲み込み力」を鍛える
適切な負荷をかけて鍛えてあげると、力を維持することができる
①水なしゴックン(空嚥下)ができるようになる
・のどを触り動いていることを確認する
・のどがどのように上下に動いているのかを理解する
・首のどの筋肉に力を入れているのかを確認する
・使っている筋肉に意識的に力を入れる
・水の量をできるだけ減らし、のどを上げる
・水無しでゴックンする
②のどを上下に動かせるようになる
実は意外と難しい、のどの上げ下げ
・のどを上げる 水なしごっくんができれば上がっている
・のどを下げる 意外とできない、のどを上げた後に力を抜く
・のどを上げ下げする、幅を広げる ゆっくり動かしたり、速く動かしたり
できるだけ大きく動かす
③のどを上げ、そのまま止められるようにする
・少量の水をごっくんし、そのまま、使った筋肉に力を入れ続ける
・慣れてきたら水なしでのどを上げたまま止める
10秒間キープする→勢いよく息を吐き、気管に飲み物が流れ込むのを防ぐ
④正しい飲み込み方を身につける
・あごを引くことと、のどを上げることのタイミングを合わせると、
うまく飲み込むことができるようになる。
・飲み込む瞬間、人は呼吸できない。飲み込む直前、人は息を吸う。
そして、飲み込んだ後は、息を吐く。人は、これらの動作を無意識に行っている。
《しっかり飲み込めるようになるための3要素》
1.筋力 のどを上げる筋力をアップさせる
意識的にのどを動かす、のどを上下に動かす、のどを上げて止める
普段以上にのどを動かす、負荷をかける
2.感覚 のどの感覚を鋭くする
ものがのどの中に入るのを「感じる」
普段から「のどごし」、食べ物や飲み物の温度や硬さ、味などを意識することができれば、より感覚を鍛えることができるようになる
3.タイミング のどを上げるタイミングを体に覚えさせる
飲み込む瞬間にあごを引くと、タイミングを覚えることができる
飲み込む瞬間にあごを引くと、タイミングを覚えることができる。
《のどが上がったまま止まっているかを確認する方法》
①のどが上がっている間は呼吸できない(息を止めるとのどが上がるわけではない)
②舌の奥からのどの上の間の筋肉に力が入っている
③首のすじがピンと張る
④のど仏が上に動く
⑤のどのへこみが触れられなくなる
「飲み込み力」の低下が分かる自己チェック
《「飲み込み力」の低下が分かる10の症状》
・痰がのどによく溜まる
・唾液が多いと感じることになった
・声の感じが依然と変わってきた
・食事中や食後に、よくむせるようになった
・咳払いをすることが増えた
・寝ている時に、よくむせるようになった
・飲み込む時に、引っかかる感じがする
・のどがつまった感じがする
・液体のほうが固形物より飲み込みにくい
・食べ物や飲み物が鼻に流れてくる
評価
0~1 →今の段階では、「飲み込み力」はしっかりしている
2~4 →少し「飲み込み力」が弱くなっている
5~7 →かなり「飲み込み力」が弱くなっている
8~10→すでに嚥下障害になっている可能性がある
《「飲み込み力」の低下が分かる10の体のチェック》
・空嚥下ができる
・のどを上下に動かせる
・水を飲んだ後、のどを10秒間上げたまま止められる
・舌をしっかり動かせる
・口を開けて、スプーンでのどの奥を突くと「うえっ」となる
・噛み合わせがしっかりしている
・首に柔軟性がある
・のどを支える筋肉に柔軟性がある
・声を長く出し続けられる
・姿勢がよい
評価
10 →今の段階では、「飲み込み力」はしっかりしている
8~9→少し「飲み込み力」が弱くなっている
5~7→かなり「飲み込み力」が弱くなっている
0~4→すでに嚥下障害になっている可能性がある
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