適応力 新時代を生き抜く術
2021年06月27日(日)
www.youtube.com/watch?v=KfBDnOCa1tA
出口治明著
2021年3月31日発行
主婦の友社
1400円
各界の権威が英知のすべてを注ぐ特別授業「最後の講義」(NHK)。今回は、知的最前線に立つスペシャリストが人生最後の覚悟で珠玉のメッセージを贈る。リアルとオンラインのハイブリッド、完全版。
「人・本・旅」から学ぶ。人から学ぼうと思ったら好き嫌いは捨てて、まず「イエス」という気持ちで会ってみる。高坂正堯先生の教え。「古典を読んで分からなければ、自分がアホやと思いなさい。現代の本を読んで分からなければ、書いた人がアホやと思いなさい。そんなものは読むだけ時間の無駄。」古典では「花」といえば、平安時代以降は桜を指すが、奈良時代には梅や萩。
僕が考えるコロナの問題
人間の物事の考え方は、「接線思考」だと考えている。円をちょっと転がしたら接線の角度は大きく変わるのに、人間の思考は、ついつい現状の延長線上に未来を見ようとしてしまいがち。人間は今の状況に影響されやすい。
もう一つ、考え方として大事なのは「時間軸」。何か問題が起きた時には時間軸で分けて考え、行動することが大切。
出口治明著「自分の頭で考える日本の論点」
kojima-dental-office.net/blog/20210126-14561#more-14561
A.世界を見るために必要な3つの視点
「タテ・ヨコ・算数」の視点
物事を考える時に一番大切なのは、現状を分析すること。人間は自分にとって都合がいい情報を選択したり、都合の悪い現実はねじ曲げて認知したりする傾向がある。だから、冷静なフラットな目線で現状を分析するように意識することが大切。
1.「タテ」は時間軸
歴史的な視点を持って、昔の人はどう考えていたのかを知ること。人間の脳はこの1万年間、全く進化していないと世界中の脳科学者は結論づけている。だから、時代が違っても昔の人の成功事例や失敗事例、思考パターンを学ぶことはとても大切。
2.「ヨコ」は空間軸
グローバルな視点を持って、世界を広く見渡すこと。人類はホモ・サピエンスという単一種だから、今を生きる世界の人たちがどう考えているのかを知ることも大切なポイント。
a.例えば、日本は「夫婦別姓」の国
「夫婦別姓」の問題を「タテ」と「ヨコ」の軸で考えると、夫婦別姓が当たり前だということが分かる。
・「タテ」、時間軸の視点
源頼朝は北条(平)政子と結婚して後に鎌倉幕府を開いた。政子は嫁いだ先の源とは違う苗字を名乗っている。
明治以前は日本も夫婦別姓の国だった。1898年に明治時代の旧民法で夫婦同氏性が定められたから夫婦同姓になった。
・「ヨコ」、空間軸で現在の世界を見る
37の先進国が加盟する国際機関であるOECDの国々の中で、法律婚の条件として夫婦同姓を強制している国は日本だけ。
3.「算数」、データに基づく視点
エビデンスがあるのかを理解した上で物事を考えること。
b.日本の経済力
・日本の正社員の平均労働時間は年間2000時間を超えている。平均成長率は約1%。一方、EUは年間1500時間以下の平均労働時間で2.5%の平均成長率を達成している。
・平成の30年間に日本のGDP(国内総生産は購買力平価で計算している)の世界シェアは9%弱から4%強に半減した。日本の人口は世界の1.4%前後だから、4%でもすごい。2019年の日本のGDPは中国、アメリカ、インドに次いで世界4位。人口1人当たりのGDPに換算すると、日本は33位となり、G7(アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ、日本)の中では最低。30年前はG7のトップだった。
・国際経営開発研究所(IMD、スイスのビジネススクール)が調べた国際競争力ランキングでは、1位から34位に転落。
・平成元年(1989年)の時価総額で見た世界のトップ企業20社に日本企業は14社も入っていたが、現在2019年はゼロ。日本企業の最高はトヨタ自動車の49位。日本の14社を追い出したのが、「GAFA」とよばれる、Google、Apple、Facebook、Amazonのような新興企業群とその予備軍と目されるユニコーン企業。
・2019年7月時点でユニコーン企業は世界に380社。アメリカが最多の187社、中国94社、イギリス19社、インド18社。日本は僅か3社、人工知能開発の「プリファード・ネツトワークス」、暗号資産(仮想通貨)交換会社を傘下に持つ「リキッドグループ」ニュースアプリ運営の「スマートニュース」。経済大国と標榜するなら50社あって欲しい。
B.なぜGAFAやユニコーン企業のような新しい産業が日本に生まれなかったのか?
キーワードは3つ。「女性・ダイバーシティ・高学歴」が日本の低迷の根本原因。女性の社会進出が低く、ダイバーシティもなく、長時間労働が温存されていて勉強する時間もない。
1.女性
「121位ショック」。日本の女性の社会的地位は世界153カ国中121位、G7では最下位。GAFAやユニコーン企業のほとんどがサービス産業、そのユーザーの6割~7割は女性。需要と供給のミスマッチが生じている。供給側にもっと女性が増えないと、サービス産業は発展しないし、日本にユニコーン企業は増えない。
①社会構造を変える
「男は仕事、女は家庭」という戦後の性分業にインセンティブを与える2つの仕組みを廃止すること。38万円以下という配偶者控除と社会保険の第3号被保険者制度。パートタイマーの主婦の場合、給与所得控除の65万円をプラスした103万円以上働いたら不利になる。保険料を納めずして年金がもらえる。誰も積極的に社会進出して働こうとは思わない。
②「クオータ制」の導入
既にヨーロッパを中心に世界の130カ国以上では、議員や会社役員などに占める女性の割合をあらかじめ定め、積極的に女性を起用する「クオータ制」を導入するなど、女性の社会的地位を引き上げようと力を入れて取り組んでいる。
2.ダイバーシティ
イノベーションは、既存知と既存知の新しい組み合わせ。既存知間の距離を遠くするのがダイバーシティ。多国籍の人や様々な個性を持つ人が集まれば、面白いアイデアが生まれやすい。多様性が組織を強くする。GAFAやユニコーン企業の経営幹部はダブルマスター、ダブルドクターの人が大勢。しかも、経営学、統計学、数学だけではなく、文学、美学哲学などの学位を持ち幅広い知識を得る努力をしている。
3.「高学歴」
日本は大学や大学院に行かない国。大学進学率は2017年のデータでは約49%で、OECD対象国の平均より7~8ポイントほど低い。しかも企業の採用基準に成績が重視されないので、日本の大学生はあまり勉強しない。大学院進学率はさらに低く11.8%で、OECD37カ国中29位。さらに、25才以上で大学に入学する学生の割合は2.5%なのに対して、OECDの平均は16.6%。海外では、いったん社会に出てから大学に入り直す人が珍しくない。
ところが日本人は学校を卒業して社会人になったら年間2000時間の労働が待っている。年間1500時間のヨーロッパと500時間以上差がある。日本人は勉強したくてもできない。長時間労働という社会構造に根ざしている。
C.おいしい人生とまずい人生、どちらを送りたい?
人間の歴史を見ていると、99%以上の人は一生やりたいことが見つからないまま死んでいる。20代、30代でやりたいことがないのは当たり前。
人生を無駄にしたければ、済んだことを愚痴る、人を羨ましがる、人に良く思われようとする。人生を無駄にしたくない人は避ける。
ダーウィン以来の自然淘汰説の神髄。生き残るために必要なのは「強さ」や「賢さ」や「大きさ」ではなく、「運」と「適応」が全て。人生は「運と適応」だから川の流れに身を任せていけばいい。どこかに流れ着いたらそこで「適応」できるように頑張る。必要なのは「知識×考える力」。でも駄目だったらまた川の流れに身を任せればいい。
人生は1回きりだということを常に意識して、楽しく、面白く、ワクワクドキドキする生活をする。チャレンジをしない人生に、頑張るための原動力やモチベーションは生まれない。やりたいことをやってみる。決められなかったら、あみだくじか10円玉で決める。
やりたいことがなかったら、ひたすら英語を勉強する。日本人は必要がなかったから、英語が苦手。英語を身につけておいた方が自分の好きなことをして生きていけるチャンスが広がる。言葉は思考のツール。他の言語を学ぶことで他の文化圏に住んでいる人々の考え方を学ぶことができる。
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