放射線の人体への影響
2011年05月08日(日)
第2回緊急市民講演会
福島第一原発事故をどう受け止めたらいいのか
講師 野口邦和さん
(日本大学歯学部専任講師、専門は放射線防護学、環境放射線学)
とき 5月8日(日)午前10時~
場所 金沢市駅西福祉健康センターホール
主催 日本科学者会議石川支部
参考として
福島第一原発事故でどんなことが起きているのか
kojima-dental-office.net/blog/20110428-4718
メモ
1.放射線の人体への影響
①身体的障害
A.早期障害
a.全身障害(急性放射線症)
b.各組織・器官の障害(皮膚障害、造血臓器の障害、不妊など)
B.晩期障害
a.白内障
b.胎児の障害
c.発ガン
②遺伝的障害
*発ガンと遺伝的障害は確率的影響(しきい値「限界線量」がない)である。
*遺伝的影響は広島、長崎などの数万人規模では確認できないが、必ずある。
2.急性放射線症
①15シーベルト以上
全身痙攣など中枢神経の障害によって、全員が1~5日以内に死亡する。
*死ぬほど浴びても五感ではわからない
②5~15シーベルト
被曝後数十分~数時間以内に強い嘔吐や下痢が起こる。
消化管上皮の障害でほぼ全員が10~20日以内に死亡する。
③2~5シーベルト
数週間後に骨髄、造血機能の障害が表れ、およそ半数の人が死亡する。
④1~2シーベルト
頭痛、めまい、知覚異常、食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢などが起こる。
⑤0.5シーベルト
末梢血液中のリンパ球の一時的な減少が起こる。
⑥0.25シーベルト以下
臨床的症状はない
*微少量でもいいことはない
3.僅かなエネルギーで重篤な障害を引き起こす
人が1グレイ(1~20シーベルト)浴びたとすると、1ジュール(0.239カロリー)のエネルギーを吸収することになる。それによって体温は0.239×/1000℃上昇する。
基礎知識
①物質1キログラム当たりに吸収されるエネルギーが1ジュールのとき、
吸収線量を1グレイとする。
②「水 1グラムの温度を1℃上げるのに必要な熱量」を
1カロリー(約4.2ジュール)とする。
1ジュールは、0.239カロリー。
③線量当量(シーベルト)=吸収線量(グレイ)×線質係数(1~20)
線質係数は放射線の種類などで決められた補正値
www.jalcrew.jp/jfu/ALPAJnews/30-18.pdf#search='線質係数‘
4.放射性核種の特徴
参考として
アルファ線 ヘリウム4原子核
ベータ線 電子
ガンマ線やエックス線 光子
中性子線 中性子
①放射性ヨウ素131
半減期は約8日で,ベータ線およびガンマ線を放出する。
チェルノブイリ原子力発電所の事故では、住民に甲状腺ガンが多発した。
海藻などあまり食べない地域でヨウ素不足も一因
②セシウム137
半減期30.07年。
体内に入るとカリウムと置き換わりやすいことから,血液や筋肉に蓄積する。
血液の流れに乗って腸や肝臓にガンマ線を放射する。
100日から200日後に腎臓から体外に排出される。
*土壌の2~3㎝に含まれ、地下水まで浸透していかないようである。
③ストロンチウム90
揮発性がなく、大気中に放出されにくい。
燃料棒溶融などが発生した場合に出てくる。
カルシウムと置き換わりやすいことから、骨に蓄積する。
*骨まで食べる小魚が要注意、大型魚や刺身は問題ない
骨に蓄積するので、白血病などの原因になる。
半減期が28.8年で、ベータ線を放出し、健康影響が大きい
*低レベル放射性廃棄水の放出により、親潮と黒潮の合わさる日本一の漁場が、汚染されている。バリウム、ストロンチウムが出ている可能性があるが、公表しなくなった。
④プルトニウム
物質自体の化学毒性と,内部被曝をした場合のアルファ線被曝の二つの危険性がある。
化学毒性が現れるよりもはるかに少ない量で放射線障害が生じる。
最も気をつけるべきは,吸引であり,一度吸い込んでしまえば排泄されにくい。
プルトニウムは人類が初めて作り出した放射性核種である。
プルトニウムの急性毒性による半数致死量は、経口摂取で32g、吸入摂取で13mg。
骨と肝臓にほぼ半々の割合で蓄積され、体外へは排出されにくい。
生物学的半減期は骨と肝臓でそれぞれ20年と50年である。
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