福島第一原発事故でどんなことが起きているのか
2011年04月28日(木)
原発・いのち・みらい(企画第1弾)
緊急講演会
講師 児玉一八氏 核・エネルギー問題情報センター理事
と き 4月28日(木)午後7時から9時
ところ 近江町交流プラザ4階集会室
参加対象 関心のある方ならどなたでも
参加費 無料 チラシ児玉一八講演会
主催 石川県保険医協会
参考に
「日本とエネルギーの未来」シンポジウム
kojima-dental-office.net/blog/20110424-4709#more-4709
内部被爆
www.kojimashika.net/2011/03/post-690.html
メモ
1.原発の仕組み
①沸騰水型炉 炉内で発生する冷却水蒸気で直接発電機のタービンを回す
タービン建屋の配管内に放射能のある水が循環している
②加圧水型炉 熱交換期を通して二次冷却材を沸騰させ、
その水蒸気でタービンを回す
従って、タービン建屋の配管内に放射能の危険性はない
*福島第一原発や志賀原発1号機は、沸騰水型炉である。
*運転中の原子炉では発電量の3倍の熱を発生させ、2倍の熱を海に捨てている。
*原子力発電は制御棒を挿入して核分裂連鎖反応を止めても、膨大な崩壊熱が発生 し続ける。この熱を止めることはできず、冷却し続ける必要がある。
2.原発事故
①反応度事故(暴走事故) チェルノブイリ原発事故
②冷却材喪失事故(空焚き事故) スリーマイル島原発事故、福島第一原発
*ケメニー委員会のスリーマイル島原発事故についての報告書
原子力は本来的に危険性の高いものだという姿勢に切り替え、現在実施されている安全対策で十分に大事故が防げるものかどうかを、常に反問してみる必要がある。将来的に重大な原子炉事故が発生しないと保障してくれる魔法の杖は、発見できなかった。もし、一部の企業や規制担当機関が、あえて抜本的に姿勢を変革しなかったら、やがて一般大衆の信頼を完全に失うことになるだろう。そうして彼らが、有用なエネルギー源としての原子力を手放す責任を負う破目になる、とわれわれは確信している。
3.現時点の対応
熱と放射能を相手に、また2つの間の矛盾とも戦っている。
原子炉の崩壊熱を除き続けるためには、水を次々と注ぎ込む必要がある。同時に、このことは高レベルの放射能汚染水を増やすことにもなっている。
4.放射能汚染の拡大
①汚染地図
放射性物質の汚染が同心円状に広がっていないことがわかる
②一般に日中は夜間よりも広がりが大きく、汚染面積は増加するが、中心軸の濃度は小さくなる。
5.周辺住民の避難
①原子力災害対策特別措置法
law.e-gov.go.jp/htmldata/H11/H11HO156.html
第10条(原子力防災管理者の通報義務等)
第15条 (原子力緊急事態宣言等)
*避難指示の時間を夜ではなく、移動しやすい明るい時間に考慮すべき
②原子力安全委員会「原子力施設等の防災対策について」(1980年6月、2010年8月最終改定)は、「EPZ(防災対策を重点的に充実すべき範囲)の目安は、原子力施設において十分な安全対策がなされているにかかわらず、あえて技術的に起こりえないような事態まで仮定し、十分余裕を持って原子力施設からの距離を定めたものである」としている。EPZの目安として、原発の場合は「半径約10km」とした。
*原子力防災計画の区域10kmを見直しする必要が出てきた
6.オフサイトセンター
施設に近すぎて災害発生時に立ち入ることができず役に立たなかった
7.放射線作業員の年線量限度
www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=09-04-01-08
原発作業員の被曝線量の上限は、通常は年間50ミリシーベルト(5年間で100ミリシーベルト)で、緊急時のみ100ミリシーベルト。政府は3月15日、同原発で事故対策にあたる作業員に限り、250ミリシーベルトにする規則の特例を定めた。17日には自衛隊員や警察官、消防隊員などに対する限度も同様に引き上げた。
原子力災害に関して自衛隊法第83条又は第83条の3に基づき派遣を命ぜられた部隊等の自衛官が、災害に発展する自体の防止及び人命救助等緊急やむを得ない作業を実施する場合の被曝線量は、実効線量で100ミリシーベルトを上限とする。
8.放射線障害
①分類
身体的影響と遺伝的影響
早期障害と晩期障害
確定的影響と確率的影響
②確定的影響
限界線量を超えると誰にでも障害が起き、線量が大きくなるにつれ症状が重くなる。
③確率的影響
どんなに低い被曝量でもそれなりの確率で障害が起き、
その重篤度は被曝量に左右されない。
宝くじと同じで1枚買っても、100枚買っても確率は違うが、
1等が当たることがある。
*発ガンと遺伝的障害に関してはこれ以下なら大丈夫という限界線量はない
④事故による被曝量と医療の被曝との比較
正当な理由なく被曝する事故と医療を比較すること自体が間違っている。
*医療被ばくの三つの原則
9.福島原発事故の疑問点
①指摘されていた問題点があったのになぜ対策をとらなかったか
②事故発生の初期段階で、直ちにやるべき事がどうして遅れたのか
③海に放出した低レベル(?)汚染水の放射性核種ごとデータをなぜ公開しないのか
④大気中などに放出された放射性物質の詳細なデータをなぜ公開しなくなったか
10.風評被害を無くすために
デマの広がりやすさは「事柄の重大性」と「事柄の曖昧さ」の積に比例する。従って起きてしまった事柄は変えられないから、行政と事故を起こした当事者は迅速に正確な情報を発表し説明する必要がある。
講演抄録 児玉一八
2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震の激しい揺れと大津波により、福島第一原発は全電源喪失に陥った。1~3号機では膨大な崩壊熱で核燃料の温度が上昇し、燃料棒の一部が冷却水から露出。高温になった被覆管は、ジルカロイ-水反応を起こして温度がさらに上昇し、燃料棒の損傷、炉心溶融に至った。水素爆発もおこって、原子炉建屋の上部を吹き飛ばした。使用済み燃料プールの冷却機能も失われ、3、4号機ではプールの水が蒸発して使用済み燃料の一部が露出してしまった。まさに、日本の原発史上最悪の事故である。多量の放射性物質が環境に放出され、大気や水、土壌、農産物や海産物の放射能汚染が広域で確認されている。巨大地震と津波は自然災害であるが、原発事故は人災である。科学者や住民運動は原発震災をくりかえし警告してきたが、政府や電力会社はそれを無視し続けた。
今回の事故に対して、東京電力と政府の対応が右往左往していることに、国民的な怒りが広がっている。その背景には、原発で苛酷事故は起きないという「安全神話」がある。福島第一原発で進行している深刻な事態は、「安全神話」が崩壊したことを事実で証明した。今こそ、「安全神話」と決別し、全国の原発の総点検を行った上で、原子力から再生可能エネルギー利用へとエネルギー政策を抜本的に切り替えることが必要である。
私は20年前から、原子力防災計画・訓練を分析し、事故想定が原子炉の挙動特性を無視し、計画区域が狭すぎることをはじめ、苛酷事故には到底対応できない、実効性のない「絵に描いたモチ」であることを明らかにした。福島第一原発事故はこのことを実証している。住民の生命と財産を守るために、実効性のある原発事故緊急時計画に抜本的に見直すことが急務になっている。
- カテゴリー
- 原発 いのち みらい