見通す力
2010年05月12日(水)
池上彰著
NHK出版 生活人新書
2009年10月10日発行
740円
予期せぬことが目まぐるしく起きる現代において、少しでも先が読めるようになるために、どうすればよいのでしょうか。日頃から何を心がけ、何に気をつければよいかをジャーナリストの視点で書かれています。どんな環境であれ非常に参考になる考え方です。自分の世界にアレンジして、見通す力を発揮していただきたいです。
1.見通す力
誰もが、潜在的には、将来を見通すだけの材料を自分の中にもっています。それらを整理し、見通すためのテクニックを身につけることで、今後起きてくることを、事前に予測することができるようになるのです。先ず、見通すテーマをきちんと決めることが大切です。そして、テクニックは次の4つの段階に分かれています。
①情報の収集
②情報の選別
③仮説の設定
④仮説の検証
仮説に「合致」する情報が多い時には、立てた「仮説」は信頼できそうです。しかし、仮説と「矛盾」する情報がたくさん出てくる時には、立てた「仮説」は間違っていそうなので、「新たな仮説」を立てもう一度検証しましょう。
2.情報収集
自分が知りたいと思う分野の情報について、継続してチェックしていれば、普段と違う動きに気づくことが多くなります。さらに詳しく調べていく必要が出てきた時には、その分野の「定本」といわれる書籍を見つけることです。そして、「一次情報」を入手します。また、記事の日付を確認することが大切です。
3.情報の選別
「事実」なのか「意見」「推測」なのかを見極めることはとても大切です。「推測」であれば、ハズれる可能性があります。「意見」であれば、それとは違う意見もあるかもしれません。
また、一定の時間がたってから読み直してみますと、それらの記事がまったく違って見えてきます。重要だと思っていた情報が、あまり意味のないものだと分かったり、まったく見当外れだったり、大げさに騒ぎすぎていただけだったりします。断片的な情報が、実はお互いに関連するものだと気づいたりします。その段階で不要だと思った記事は、処分してしまいましょう。
4.日本とアメリカの新聞の違い
アメリカでは、売店や自動販売機で新聞を購入する割合が高くなっています。そのため、たまに新聞を買うことを想定していつ読んでもニュースの流れが分かるように、1本1本の記事が長く、解説や背景の説明が丁寧に書かれています。
一方、日本の新聞は、定期購読している読者がほとんどなので、「読者は新聞を毎日隅から隅まで読んでいる」事を前提にして書かれた記事が多くなっています。たまにしか読んでいなかったような人が読みますと、ニュースの全体像がつかめない、ということも起きてしまいます。かといって、詳しく書かれるようになりますと、読むために大変な労力が必要になるかもしれません。従って、新聞は毎日読むように習慣づけることです。特に、自分に関係のある面を開くように心がけていくことが大切です。
5.テレビ報道
テレビ報道に関して、気をつけなければならないことは、すべて「編集」されているという点です。テレビに映っているものは、「真実」というよりも、「事実の一面」だという可能性があることを知っておきましょう。そして、テレビ報道には、難しいことを極めて単純化して伝える傾向があることにも注意しましょう。はっきりしないコメントを避けがちです。また、民放の報道には、「現場」がないニュースは取り上げられにくい、という特徴もあります。街頭インタビューが国民全体の声を代表していないことも、認識しておく必要があります。
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