能登半島地震と「住み続ける権利」
2025年03月09日(日)
ー医療提供体制をめぐる課題を中心に
石川県保険医協会創立50周年記念シンポジウム
基調報告
井上 英夫 氏(金沢大学名誉教授、社会保障法)
パネリスト
診療所医師・歯科医師の立場から
瀬島 照弘 氏(能登町小木・小木クリニック院長)
廣江 雄幸 氏(輪島市町野・広江歯科院長)
災害医療の実態
斉藤 典才 理事(城北病院副院長、石川県医師会理事、石川県JMAT調整本部長)
特別報告
島中 公志 氏(公立穴水総合病院院長)
メモ
地震の影響により人口減、高齢者率の上昇が加速
入院患者数、看護師減により病院の経営悪化
若い介護士の離職により受け入れ人数が低下し介護施設も経営悪化
要介護が増えている
A.井上 英夫 氏
1.政府は支援ではなく人権保障を基本にすべき
お金からではなく原理原則から考える
2.インフラにコストのかかる過疎地・能登に住み続けることは贅沢なのか
一緒に帰りたい
自己決定・選択の自由
3.憲法25条を素直に読めば、生存権ではなく、生活権
国は社会保障・健康増進に努めなければならない
www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000003xfq-img/2r98520000003z9o.pdf
4.奥能登公立4病院機能強化検討会
メンバーに当事者である住民の参加がない
5.「石川県創造的復興プラン」検討会議
被災者の「住み続ける権利」を保障する観点から提言
自治・住民参加なしの計画
観光ではなく、第1次産業の復興を
6.1977年にILOで採択された「看護職員条約」 日本は批准していない
・人権の担い手である「看護職員」の雇用・労働・生活条件が保障されなければ
住民の健康権を保障できない
irouren.or.jp/old/jp/i02/data/2010/ilo-reaf02s.pdf
B.瀬島 照弘 氏
自院や公開されている統計に基づいた分析が鋭かった
1.災害発生後の医療的課題の連鎖
・生活習慣病の悪化、フレイル、こころの病、感染症の拡大
アルコール依存、認知症の悪化、生活不活発
・診療パフォーマンスの低下、コミュニティの変化、交通インフラ、生活基盤の崩壊
2.長期化する大規模自然災害の影響
・医療へのアクセスが悪化し、患者が医療離脱している
検診率が低下し重症化を拾い上げられていない
公共バスの本数が激減
・一人住まいでは災害関連死に届けられない
3.これまでの知見
①東日本大震災前後における生活習慣病の推移
cir.nii.ac.jp/crid/1390282680184414720
震災前後において健康診査データを比較した結果,震災後,
過体重・肥満の人の割合,及び高血圧,糖尿病,脂質異常,肝機能異常,
心房細動,多血症有病率の上昇がみられた.
震災後 1 ~ 2 年間と 3 ~ 4 年間の健診データを比較したところ,
糖尿病,脂質異常についてはさらなる増加がみられた.
実際に避難した人においては
心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患が震災後に起こりやすくなる
要因としては震災後の仕事状況の変化、避難による住居の変化などによる
身体活動量の低下、心理的ストレスの増加などが考えられた.
今後,避難者の循環器疾患を予防するために,地域行政と地域住民が協働して
肥満,高血圧,糖尿病,脂質異常の予防事業に取り組む必要がある.
②災害高血圧
日本内科学会によると
高血圧関連疾患(脳卒中、心筋梗塞・狭心症、大動脈解離、心不全)は
災害発生直後から発生し、
そのリスクは生活環境が改善するまで継続する
③行政職員の血圧は一般住民と比較すると、収縮期も拡張期も有意に高くなる
日本職業・災害医学会 東北労災病院生活習慣病研究センター
C.廣江 雄幸 氏
・避難生活の中で自分ができることをする
あいうべ体操やほんのわずかな水でぶくぶくうがいなどで口元の筋肉を鍛える
電気が来てから義歯修理と口腔内の検診や相談
・7月に解体が終わり、翌日から診療所を再建
9月の豪雨災害ダメージもボランティアなどの応援によって克服
12月より診療開始 震災前の3倍くらいの技工物作製
D.斉藤 典才 ・DMAT、JMAT、日赤の役割分担と意思の疎通
・JMAT調整本部 各県から派遣されたJMATを
能登や金沢・加賀の2次避難先へ振り分ける
・災害救助法の原則は、2次避難先の医療はその地域の医療機関に受診・保険診療
E.島中 公志 氏
・元旦に当直していた医師およびスタッフが4日間帰らずに診療した
・固定電話や携帯が繋がらなかったので、透析患者の転医手続きに苦慮した
・駆けつけてくれた医師などの応援はありがたかった
・周辺地区への応援や状態悪化予防対策にも出かけていった
と き 2025年3月9日(日)13:30~17:00
ところ ホテル金沢 4階・エメラルド または Zoomウェビナー
対 象 どなたでも
参加費 無料
申込方法 詳細は能登半島地震と住み続ける権利
ishikawahokeni.jp/sokai /
オンライン参加(Zoom ウェビナー)
上記の申込フォームよりお申し込み
会場参加(ホテル金沢)
上記の申込フォームまたはFAX
申込締切は 2 月 28 日(金)
主催 石 川 県 保 険 医 協 会
開催にあたって
能登半島地震の発災から約1年が経つ。
被災した医師・歯科医師からは今後の奥能登への様々な危惧の声を聞いた。避難した住民は戻れるのか、能登に住み続けることができるのか、見捨てられるのではないか。今も不安の中にある。
「住み続ける権利」という考えがある。どこで住むかを自分で決めることは人権として保障されており、国・自治体は住居やライフライン、医療・福祉、教育など、暮らしていくために必要なことを住民に対して包括して保障しなければならないという考え方だ。当会では発災以前からシンポジウムを開催するなどし、災害からの復旧・復興には「住み続ける権利」という視点が”要”ではないかと議論を重ねてきた。今回は「住み続ける権利」の提唱者である井上英夫氏(金沢大学名誉教授、法学研究者)から基調報告をいただく。
また、被災下での医療提供の実相とそこから見えてくる課題について、被災地の医師・歯科医師、災害医療チーム、行政それぞれの立場から報告をいただく。特別報告として能登地区の公立病院病院長から「能登半島における医療提供体制をめぐる課題」について提案いただき、報告者全員が登壇するディスカッションにて議論を深めたい。
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