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国際人権法における健康権保障の到達状況と日本の医療保障制度の課題

2014年11月04日(火)


第1回 地元若手研究者との役員勉強会
講 師 棟居徳子氏(むねすえ とくこ)
     金沢大学人間社会研究域法学系准教授
と き 2014年11月4日(火)午後7時30分~午後9時
ところ 保険医協会会議室
対象  理事・部員
主催  石川県保険医協会

講師紹介
 専門は法学、研究テーマは「国際人権法と社会保障法」
質疑
 医療現場で生じている具体的な諸課題について健康権保障に照らして意見交換

報告者  大川義弘
 石川保険医協会は、「医師は人権の担い手である」との思いから、以前より金沢大学名誉教授の井上英夫先生のご指導の元、ゼミ形式での学習会や人権保障セミナーを開催してきました。今回井上先生の愛弟子にあたる金沢大学准教授の棟居徳子先生をお招きし、「国際人権法における健康権保障の到達点と日本の医療制度の課題」と題して講演をしていただきました。
 健康権という言葉が最初に明文化されたのは、世界保健機関(WHO)憲章前文(1946年承認)であり、1966年に採択された「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」に於いては、「この規約の締結国は、すべての者が到達可能な最高水準の身体及び精神の健康を享受する権利を有することを認める」とされ、日本も1979年にこの国際規約を批准しています。しかし、健康権という言葉はあったものの1990年代まではその定義が曖昧で、国の方でははっきりと認識はされてこなかったとのことです。日本ではかつて多くの公害がありました。水俣病は現在もなお解決していませんが、国に健康権への認識が十分でなかったことに頷かされました。現在の国際的な健康権の定義は、「健康である権利」ではなく、「到達可能な最高水準の健康の実現のために必要な様々な施設、物資、サービス、条件、教育及び情報を享受する権利」とされ、国が有する義務は、「完全な健康を保証する義務ではなく、それに必要な様々な条件を用意する義務」であると説明されましたが、現在の我が国においてはいろいろな部分で責任を後退させているように見えます。
 さらに、前記国際規約で国に課せられている義務の一つに、「後退的措置の禁止」が含まれています。これは、意図的に後退的措置が採られる場合、国は、それがすべての選択肢を最大限慎重に検討した後に導入されたものであること、および国の利用可能な最大限の資源の完全な利用に照らして、規約に規定された権利全体との関係によってそれが正当化されることを証明する責任があるとされています。それには具体的な評価基準が存在し、①当該措置を正当化する理由があるか、②選択肢が包括的に検討されたか、③提案されている措置及び選択肢を検討する際に、それによって影響を受ける集団の真の意味での参加があったか、④措置が直接的または間接的に差別的であったか、などです。これらに照らしてみると、我が国でみられる生活保護基準の引き下げや、老齢加算の廃止等が如何に国際人権規約に準じていないのかが判ります。
 今日のお話で、今まで何となくおかしいと感じていたことが、よりクリアに実感できるようになりました。今後も、井上先生、棟居先生との交流を通し、当協会の中心的課題である人権に対する感覚を磨いていきたいと思います。

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