もったいない主義
2009年12月04日(金)
不景気だからアイデアが湧いてくる
小山薫堂著
幻冬舎新書
2009年3月30日発行
740円
「おくりびと」の脚本を書いて脚光を浴びた著者がクリエーターとしての発想と創作の秘密を明かす。初めての仕事でも、あまり不安に思わない。どの仕事も、人をワクワクさせたり楽しませたりするという目的は同じで、ただ手段が違うだけ。いってみれば新しい道具を持つような感覚である。
1.もったいない
「もったいない」とは、外からの目で価値を再評価し、そこから新たな価値を生み出すこと。「もったいない」に気づくと、アイデアが生まれる。「なんか面白いな」という情報を「アイデアの種」と称し、発芽していてもしていなくても拾っておく。チャンスを得て、芽を出すのだと思う。外から入ってくる断片的で一見価値のない情報の中から、別々のものを引き合わせることによって、新たな価値を創造する。
チャンスの種は誰の前にも同じようにたくさん転がっている。あなたにはそれが見えている。見えているのに拾わないのは、本当に「もったいない」。
2.企画って何だろう?
自分たちが世の中に送り出すものに対して、どれだけ価値を刷り込んで、どれだけ感情移入してもらうか。その方法を考えることが「企画」である。企画とは、「普通」の中に面白さを見つけることであり、人のことを思いやったり、慮ったりすることでもある。何でもないものにマークが付いた途端、「ブランド」に変わる不思議さも企画の魅力である。
3.ネガティブ・スイッチを切り替える
断水になったことに文句を言うのではなく、せっかくだから水道のない時代を疑似体験すると考える。こんな風に、目の前の困難をどう乗り切るかということも、「企画」である。自分が何か失敗した時は、逆にチャンスだと思おう。その失敗をどうフォローするかによって、逆に相手に凄く好印象を与えることができる。
4.頼ると利用する
人にお願い事をする時は、「あわよくばあいつを利用してやれ」と思うのではなく、「あの人に頼ろう」という気持ちで接するのがいいかもしれない。「頼る」のが上からロープを垂らしてもらって、自分の両腕の力で這い上がるというイメージだとしたら、「利用する」のは相手を踏み台にして上っていこうとする感じ。頼ることの中には愛があるけれど、利用することの中には、その人に対する愛はないという感じがある。そこに大きな違いがあると思う。
負けず嫌いには、相手を乗り越えようという強さがあるけれども、嫉妬は一方的に恨むだけで終わっている感じである。
5.「負の遺産」
冬に家族でウィンザーホテルに泊まりに来るという東京のお客様が、来る途中で写真を撮ろうと車を降りた途端、雪で足を滑らせて頭を打ち、救急車で病院に運ばれた。そして、それが原因で寝たきりの状態になってしまったそうである。
ウィンザーホテルが凄いのは、この出来事について、自分たちにも責任の一端はあると受け止めたことである。つまり受付係が予約を取った時点で、東京の人が冬の北海道に来るのだから、「足下が滑りますから気をつけてくださいね」と言えなかった自分たちの責任でもあると感じている。「それを負の遺産として、伝えていこうと思っている」。深い後悔や苦い失敗を、お守りみたいにして自分の中に持ち続けていることは、その後の人生に絶対に役立つことだと思う。
- カテゴリー
- 働き方