なぜ、「できる人」は「できる人」を育てられないのか?
2009年04月24日(金)
吉田典生著
日本実業出版社
2005年12月10日発行
1400円
新人スタッフや移動に伴う新しいメンバーがようやく仕事になれてくる頃、上に立つ人は彼らが気になり出す頃です。頭の良さを示すIQより、自分を律して人と良い関係を築く人間力を示すEQを大切にしましょう。そして、部下に不満を感じたり、部下が暇そうに見えたら、また、自分でやったほうが速い、自分が一番仕事をしていると思ったら、ぜひ読んでみてください。様々なヒントが隠されています。
1.「できる人」と「できない人」との違い
「できる人」はいつも成功して、「できない人」はいつも失敗するなんて単純な区別は到底できません。むしろ「できる」と「できない」の違いは、好ましくない結果を招いたときの処し方にこそ表れるような気がします。
「できる人」は、思わしくない状態や結果を多面的に観察することができます。そして、常に未来に向けて“HOW”(いかに・・・・するか)を意識し、これから先の可能性を考えていきます。一方、「できない人」は、思わしくない状態や結果から、すぐに諦めの“REASON”(・・・・だから無理)を導き出します。そして、ハードル越えを避けることで苦痛を和らげるという、消極的な対処で快楽に向かいます。
どちらの発想も、自己像に根ざした正しい選択だということです。相手の選択も正しいのだと受け止めることは、「できる人」にとって勇気のいることかもしれません。相手にどんな準備ができていて、どのようなことなら受け入れられるのか。それを「できる人」が理解することなくして、「できない人」の転換を促すことはできません。
2.できない事実とこれからの可能性との区別
相手の「できない事実」を客観的に特定することと、「できない存在」であるという思いこみを外すこと。この両方が「できる人を育てる人」には求められます。「こんなやつバスに乗せたくないのに」は自分の感情であるかぎり、「できない人」の問題ではなく自分自身の問題です。
3.成功体験にもとづく信念の罠
一緒に仕事している部下には、どうしても自分の流儀で行動して欲しくなるのです。成功体験を真似て行動しても、自分らしい行動だと思えませんから、自分の中にある内発的な動機付け要素と、「できる人」にもらった“べき論”が衝突します。そして、生まれてくるのは苦痛やプレッシャーです。自分の流儀で、他人がうまくやれると考えるほうがおかしい。「できる人」は勝利の方程式を教えるのではなく、自分の動機を伝授しよう。
4.「できない人」に伝わる技術
伝えることばかり考えて、「伝わる」ことへの意識が薄れています。話のレベルを二ランク、三ランク落とせば、相手に伝わるだろうと判断しています。仕事上の立場や組織のルール上、相手は従うべき存在だという前提があるから油断が生まれるのでしょう。それで、ホウレンソウに一つ、決定的な要素「確認」が抜け落ちてしまいます。
また、多言語の飛び交う組織で働いていて、今までは何語を話しても良かったとしましょう。それでは効率が悪いので、みんなで英語を話すことに統一しようと決めました。英語という共通語に乗れない人は、共通言語化によって他者との共通性を失っていきます。わかりやすいか否かは、「できる人」が決めるのではなく、「できない人」が決めるものです。
5.コミュニケーションの技術
進化の過程で古くから存在する辺縁系に関わるコミュニケーション技術は、レクチャーを受けてすぐに成果が出るという類のものではありません。日常における習慣的なトレーニングが最も大切です。新しい行動によって古い脳の回路に刺激を与え、より望ましい行動を定着化させるために徐々に回路を作り変えていくのです。新しい回路が新しい行動を生み、そこで得た結果によってさらに回路が強化されていきます。
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