ビジネスのサムライ
2009年03月31日(火)
小野三郎
日経BP社
2004年10月25日発行
1400円
元新日鉄マンの平成サラリーマンに宛てた渾身の「遺書」。荒廃した日本には、「子が親に孝行を尽くそうという気持ち以上に、親は子の幸せを祈っている」がすべてではないか。自分の行いに照らし合わせて、読んでいただたい一冊である。
1.最も大切な徳目は仁である。
100年前に新渡戸稲造が「倫理観とは、武士道である。そして、大義とは何か、自己の使命とは何か、自分の責任とは何かを常に追求することが、没我の理念の基本である。」と力説している。それを会得するには幼い頃から「母の心を心とすべし」の理念が必要である。他人に対する思いやりの心も影をひそめた今だからこそ、リーダーたちに、社会の大義に尽くすことを志し、「士」の心に徹することをぜひ伝えたい。
2.トップの進退
トップに長くいるとイエスマンが増える。イエスマンの部下よりも仕事に情熱を傾けて身を挺して突っかかってくる若者の方に愛着を覚える。知識は物事の批判や批評には役立つが、決断や実行のためには役立たない。
3.異文化とのねじれ現象
草食動物は群れに対する帰属意識や忠誠心が強く、また群れを維持するための掟などはきわめて厳しい。群れ動物には、集団主義がすべてに優先し、「出る杭は打たれる」ので、個人主義とか個人の確立といった概念はむしろ不必要であり、肉食民族スタイルの民主主義方式の仕組みや組織論などは不向きなのである。
仏教をはじめいくつかの教義を取り込んで作成された文化を持つ我が国が、キリスト教文化を無視して、ただ自由や平等といった通念を皮相的に導入したがために、矛盾に満ちた社会を招いたのだろう。
国際化とは、お互いの異なる文化や理念を認め合った上で、合意点を求めようとするものである。
4.「ラインは真実を言い、スタッフは真理を言う」
ラインとは責任、命令のチェーンであり、現象を正確に確認することが、ラインの仕事の第一歩である。スタッフとはラインを自らの専門機能でヘルプするものであって、スタッフは支援に徹することである。スタッフには権限がなく、結果責任をとれない。スタッフがイニシアチブをとって失敗した例は枚挙にいとまがない。
組織にとってスタッフは必要悪であって、どうしてもラインだけでできない、できにくい問題があるため、スタッフを配置する。
5.機能の統合方式
大企業は機能の分化をもとにした組織形態をとっている。そのため、大企業の単能工的人材が巷に氾濫している。しかし、中小企業では、機能が統合されたなかで育った人材が多く、その人たちは、全体感もあり、統合的判断もできる。
組織編成の基本は、個の権限責任を明確にし、仕事の機能に人間をあわせて養成、配置することである。機能の分化と統合の仕組みをいかにするかが組織運営のポイントであり、その前提となる人の育成教育が重要な決め手となる。
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