のぼるくんの世界

のぼる君の歯科知識

歯はみがいてはいけない

2017年01月03日(火)


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講談社α新書
2016年8月18日発行
840円

 現在、日本では100万人以上が寝たきりになり、スウェーデンでは寝たきりの人はほとんどいない。日本人は80歳で残っている歯が10本以下なのに対し、スウェーデン人は80歳で歯が21本以上残っている。
 「歯みがき」の間違いが全身病をつくっている。歯みがきは命を守る習慣。
様々な疑問点はあるが、真実と向き合う楽しさもある。

鶴見大学歯学部探索歯学講座 花田信弘教授からのコメント
 食後に歯を磨くと歯が削れる件は学会でも問題になりました。東京医科歯科大学の発表でしたので大騒ぎになりましたが、結局は常識的に食後に歯を磨くのが良いということになっております。発表者である東京医科歯科大学の北迫先生ともお話ししましたが、この論旨は、コカコーラなど極端に酸性の食品を飲食した場合は「食後に歯を磨くと歯が削れる」のであって普通食ではこのようなことは起こらないのが真実です。食後にハブラシすることを患者さんに勧めるのは当然です。

1.「食後の歯みがき」は日本と韓国だけの習慣
 他の国では、寝る前と起きた後に歯みがき。韓国の習慣も、1970年代に日本から入った。
 事の発端は、歯磨剤業者の商業キャンペーン。日本式の歯みがき習慣をつくった「3・3・3運動」。「毎食後3分以内に3分間、1日3回歯を磨こう」という虫歯予防のキャッチフレーズ。60年代後半には、日本歯科医師会や都道府県歯科医師会も推奨するようになり、厚生省も同じく推奨。こうして、「よい子は食べたらすぐ歯みがきをする」という“世界的には非常識な習慣”が日本にだけ定着。他の国では就寝前と起床後に口の中のケア。唾液がほとんどでない睡眠中にプラークが増えることを知っているから。
 かって日本でも起床してすぐ歯を磨いていた。ところが現在では起床直後に歯みがきをする人は減り、朝食後に歯みがきをする人が増えている。その理由の一つに、一部の歯磨剤に含まれている人工界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム)などによって、味覚が損なわれてしまうから。要するに、歯みがきしてからご飯を食べると美味しくない。こうして、本来は食前に磨いた方が有効にもかかわらず、歯磨剤を使う習慣が定着させる→食前に歯みがきをする→食事が美味しくない→朝食後に歯みがきをさせる、という流れで、間違った歯みがき習慣が定着した。
 ラウリル硫酸ナトリウム自体に発がん性があるが、国が「少量であれば体に害はない」としている。市販の歯磨剤には、これがほとんど入っている。

2.食後歯みがきのデメリット
 ①歯が削れる
 歯は糖質を含む飲食をしたあと、リンやカルシウムが唾液に溶け出す。つまり軟らかくなる。そのときにハブラシの毛先が当たると、歯が削れて知覚過敏になる。知覚過敏にならずに進行すると、歯の根元が楔状にえぐれる。
 ②唾液の恩恵を受けられなくなる
 食後には、唾液がフルパワーで軟らかくなった歯の表面を修復する。そのフルパワーの時に、歯魔剤と一緒に唾液を口の外に出してしまう。

3.日本人の口臭は世界一
 日本人の口臭の原因は歯周病。そして、食後の歯みがき習慣にあると思っている。口臭を予防するのは唾液。その唾液の能力が最も高まっている時に、歯みがき剤と一緒に口の外に吐き出している。
 ふだん口臭のきつい方でも食事直後はほとんど消えている。それほど食事直後の唾液の消臭効果はすごい。日本人は「食後すぐの歯みがき」を習慣化することで、その“スーパー消臭剤”を口の外に吐き出す習慣を身につけてしまった。実にもったいない。口臭に敏感な欧米では、食後にガムを噛み、唾液の分泌を促進する。

4.デンタルフロスを習慣に
 飲食後のデンタルフロスは、唾液の通り道をつくり、唾液を最大限の能力に発揮できるようにする。プラークコントロールには、デンタルフロスやワンタフトブラシが必要であり、3列ブラシは補助的に使う。

5.起きてすぐの飲水は危ない
 寝ている間に口の中で細菌が爆発的に増殖。その増殖した細菌を冷たい水と一緒に飲めば、そのまま胃に送り込まれる。胃が正常な状態なら、PH1~2くらいの強力な殺菌作用を働かせ、悪い細菌も退治してくれる。しかし、起床直後に胃は活発でない。大量の水で胃酸を薄められ、冷水で体を冷やせば血液循環は悪くなり、血液循環が悪ければ胃の活動もさらに弱まり、殺菌作用も減衰してしまう。その結果、多くの細菌が腸に達する。朝一番に爆発的に増えた細菌を腸に送り込むことは「危険なこと」である。
 しっかりと口の中をきれいにしたあとで水を飲むように

6.体のバランスをとるために重要なのは歯と足
 歯が悪くなれば足のバランスも崩れ、転倒や骨折に繋がりやすくなる。高齢者が骨折した場合、約4割の方が入院。それがきっかけで寝たきりなる人も。
 高齢の方が入院したら、急に体が弱って歩けなくなってしまったという話はよく聞く。ベッドで寝たきりになることで筋力低下を起こすというほかに、「入れ歯」を外してしまい、体のバランスがとれなくなることもその要因としてあげられる。
 重心が足の踵付近(後方重心)になると、体は前傾し、猫背になる。猫背になると、下顎が後ろに下がる。下顎が後ろに下がると、出っ歯になる。他に出っ歯になる原因として、歯周病もある。

7.日本の健康保険制度は予防軽視
 スウェーデンの歯科医療制度は、日本と同じ国民皆保険。しかし、疾病治療および生存に必要な機能回復とともに予防にも給付。具体的には、3~19歳までの歯科予防および治療は無料。歯列矯正も無料。0~3歳は公共歯科医で診察を受ける。
 20歳以上は、保険での自己負担がある。インプラント治療も、スウェーデンでは条件が整っていれば健康保険適用。条件は①歯周病がない状態であること、②インプラントおよび周囲の粘膜も自分の歯としてしっかり手入れすること、③インプラント治療を受けたら必ず定期検診を受けること、という3つ。

スウェーデン マルメ大学留学中の歯科医師からのコメント
 スウェーデンは国民皆保険で間違えありません。しかし、日本のように国保、社保のような区別はなくすべての国民および居住者に平等に与えられる権利です。もともとのスウェーデン人だけではなく、居住許可を得た外国人(移民、難民を含む)すべてにパーソナルナンバー(日本のマイナンバーとは似ているようで少し違います)が与えられます。パーソナルナンバーを持てばその時点で保険のシステム、税務のシステム、すべてが一元管理です。(銀行の口座番号もパーソナルナンバーです。)
 しかし、疾病治療および生存に必要な機能回復とともに予防にも給付
確かにそうですが、日本の保険治療も同じで、この文言が、スウェーデンで特にすごいというわけでもないと思います。
 具体的には、3~19歳までの歯科予防および治療は無料。歯列矯正も無料。0~3歳は公共歯科医で診察を受ける。
成人までの医療費は医科歯科ともにかかりません。矯正も無料も本当です。0-3歳は公共歯科医で診察を受けるという意味がよくわかりませんが、0-6歳の子供は年に一度、家から近い公立の歯科診療所から検診の予約をするように連絡があり検診にいかないといけません。治療が必要な場合、そこで継続して治療の予約をしても、プライベートの歯科医院で治療を行っても問題ありません。公立の歯科診療所は全国に一定人口あたりに一医院が設定されており、たくさんあります。(卒後の歯科医師の多くがまず勤めるところというイメージがあります。公立歯科診療所のいくつかにひとつはスペシャリストクリニックで、ベテランが中心に運営されている診療所があります。矯正はそこで行われています。)
 20歳以上は、保険での自己負担がある。
成人の治療は自己負担があります。日本と違い3割負担、1割負担という感じではありません。すべて一年あたり医療費いくらのようにカウントされます。日本円で約7万円くらいまでは、保険がききません。すなわち年に一度くらいしかメンテナンスにいかない、全然普段歯科医院に行かないけど親知らずを抜きたいとかなると日本より割高になります。7万円を超え20万円くらいまでは治療費の半分は保険適応となります。20万円を超えたものは1割負担となります。小さな治療には大きな負担、大きな治療には小さな負担となるので、自然と治療にならないように予防の意識は高まります。
 インプラント治療も、スウェーデンでは条件が整っていれば健康保険適用。条件は①歯周病がない状態であること、②インプラントおよび周囲の粘膜も自分の歯としてしっかり手入れすること、③インプラント治療を受けたら必ず定期検診を受けること、という3つ。
インプラント治療は健康保険適用です。条件ですが、この3つが絶対条件にような決まりなんてないと思います。もちろんいずれも大事なことですので患者には説明しますが。もちろんインプラント治療に入る前に歯周病の治療は行いますが、日本での補綴治療の前にP治療、評価をすませるのと同じ感じではないでしょうか。
 話はかわりますが、ラバーダムをかけることができない歯は、根管治療の適用ではなくなるので日本だったら絶対根管治療して、支台築造だろうという歯も抜歯となり、インプラント治療へと移行することも多いです。保険適用ということで日本よりインプラント治療移行へのハードルは低いように思います。
 インプラント治療の料金に限らず保険の治療費の話に戻りますが、公立の歯科診療所では全国均一料金ですが、プライベートの歯科医院では自分の得意な部分は値段を高く、そうでもないところは値段を低く設定することができます。例えばAという治療の基準価格が1000円から1500円とします。年間総額により保険適応割合はかわりますが仮に保険負担5割とした場合、その歯科医師が1000円と設定した場合国が500円患者は500円を支払います。1500円と設定した場合国は750円患者は750円を支払います。このAという治療は自分は絶対的な自信があるといったとき、10000円という設定にすることもできます。その場合1500円を超えた分すなわち8500円と1500円のうちの半分の750円合計9250円を患者さんは支払います、国の支払いは750円です。極端な話をしましたが、日本では認められていない混合診療が認められているということです。
インプラント治療はそもそもの保険の値段設定も高くなっていますので、全顎的な治療でしたら日本で上下数百万円かかるところを数十万で受けることができます。

8.健康長寿は「口内フローラ」で決まる
 米国の歯周病学会の元会長であるカリフォルニア大学ロサンゼルス校のマイケル・ニューマン教授は、「歯周病の人は健康な歯ぐきの人に比べて、心筋梗塞を起こす確立が3倍高い」と発表した(2007年、米国歯周病学会)。億単位で存在している口腔内細菌が炎症を起こした歯肉の毛細血管から体内に入り込み、その一部は、血管壁に炎症を起こし、集まってきたコレステロールを悪玉に変えて「血管プラーク」を作る。 ある程度積み上げられたら、かたまりとなってはがれる。それが運悪く、細くなった血管の部分に詰まってしまったら、血管の梗塞になる。
 歯周病の患者さんは、健康な人に比べて2倍以上も糖尿病にかかりやすい。歯肉の炎症組織から産生される物質(炎症性サイトカイン)が歯肉の毛細血管から血液中に入り込み、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの働きを阻害する。その結果、糖尿病になる。
 糖尿病は、血管がボロボロになる病気。ボロボロになった歯肉の血管が炎症を起こし、歯周病を引き起こす。もしくは、歯周病菌が毛細血管から侵入して全身の血管をボロボロにする。歯周病を改善することで、全身の血管がボロボロになることを防ぐ。
 2012年に大阪大学や横浜市立大学などの共同研究チームが、非アルコール性脂肪肝炎の患者は、歯周病にかかっている割合が健康な人の約4倍も高いことを突き止め、歯周病を治療することで肝機能が大幅に改善すると発表(2012年2月23日付 日本経済新聞)
www.nikkei.com/article/DGXNASDG2203I_S2A220C1CR8000/

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