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さおだけ屋はなぜ潰れないのか

2010年07月02日(金)


身近な疑問からはじめる会計学
山田真哉著
光文社
2005年2月20日発行
700円
 この本を読むと、節約術と増収の極意が理解できるようになる。個人でも会社でも副業や投資は、本体以上にリスク管理を厳密にする必要がある。
 また、新しい角度からの考え方に気付いたり、モヤモヤしていたところが納得できたりする。「数字のセンス」も興味深い。

1.さおだけ屋はなぜ潰れないのか
疑問
 子供の頃から一度もさおだけ屋からさおだけを買ったことがないし、また、買っている人を目撃したことも、買ったという話を聞いたこともない。いったい誰がさおだけ屋からさおだけを買っているのだろうか?そもそも、さおだけ屋はちゃんと利益を出し、商売として成り立っているのだろうか?

問題点
さおだけは商品としては著しく需要が低い。
わざわざさおだけ屋から買うメリットもない

儲けのからくり
①さおだけ屋は、単価を上げて売り上げを増やしていた
 2本で1000円という安いさおだけを売るフリをして、実際は利幅の大きい物を売って儲けを得ていた。1本5000円の高級さおだけと10万円の物干し台工事費などの紹介料。
②さおだけ屋は、仕入れの費用がほとんどゼロの副業だった
 金物屋が、お得意様に他の商品を配達するついでに「さおだけ屋」を営業していた。

本質
 利益を出すためには、売り上げを増やす・費用を減らすの二つしかない。さおだけ屋は、商売の基本中の基本を実によく押さえて商売していた。だからこそ、長い期間にわたって全国的に地味ながら継続できているのだろう。

2.ベットタウンに高級フランス料理店の謎
立地の謎
なぜこんな住宅地にフランス料理のお店があるのか
 駅から歩くと10分もかかり、駐車場もない。その上、価格設定が、最低1万円のコースで、1万5千円、2万円と高い。そして、お客が出入りしている様子がまるでない。

高級なのには理由があった
 シェフが教えるフランス料理教室とソムリエが教えるワイン教室を副業としてやっていた。毎月1回で月謝は約1万円。それぞれ水曜に2教室。定員10名。月謝が40名分の40万円。また、入会金が1万5千円。経費が全くかからないから全額利益になる。教室のターゲットは昼間に時間が取れる主婦層がメインだから、本業であるランチやディナーの時間にかぶらない。
 本業だけで、もうける必要はなく、副業など他のところでちゃんと利益を上げることができれば商売は成り立つ。高級というところがポイントになる。本業を辞めて副業だけに絞ってしまっては本末転倒になってしまう。
 本業があるから副業が成り立ち、また逆に、副業があるから本業が成り立つ。密接にリンクしてこそ、相乗効果が生まれるのである。やっていけないから、土日だけラーメン屋をやろうとか、ピアノ教室をやろうとか、いかにもバラバラのことをやってしまっては、もうどうにも立ち行かなくなる。土日や夜間に本業や趣味とは全く関係のないアルバイトをやってしまっては、そもそも楽しめないし、ストレスがたまって長続きしない。
 本業と副業をつなげる経営の考え方は、「連結経営」という。隣接分野への参入を目指す場合、予算の上限を決めた上で資金を投入している。万が一失敗しても、損害は最小限(予算の範囲内)で済む。大事なのは本業なのだから、副業なのにわざわざハイリスクを背負い込む必要はないのである。

3.節約は絶対額で考える
 費用の削減はパーセンテージで考えるべきものではなく、絶対額で考えるべきものである。チリが積もっても山にはならない。「普段はケチケチしてもいいけど、たまにはパッとしたい」という人もいるが、これはかなり危険な思想である。例えば、毎日100円節約して、たまにパッと5万円使った場合は、13500円赤字になる。節約した気になっているだけで会計を見ていないのである。

4.数字のセンス
 2002年に全日空がキャッシュバック・キャンペーン「50人に一人が無料」を実施した。「無料」という言葉や表現のインパクトなどに惑わされずに、物事をきちんと数字で考えることができるかどうか、それが数字のセンスだ。
 「50人に一人が無料」は、「2%割引」とほとんど同じことを言っている。今時「消費税分還元」「1~3割引」が当たり前のこの世の中、「2%割引」を消費者はとうてい喜ばない。それが「50人に一人が無料」と言い換えるだけで、とたんに輝きを増してきた。
 この企画立案者は相当に鋭い数字のセンスの持ち主だ。飛行機のチケット販売機において、1日に数百人もの「当選者」が確実に出るわけであり、その当選を目の当たりにした目撃者によって、キャンペーンはさらに口コミで広がっていった。全日空に鞍替えした利用者も多く、キャンペーンによる利益は数十億円といわれている。みんなが均等に「2%割引」などといったキャンペーンを実施するよりはるかに効果があったことは言うまでもない。

 参考として
  脳の学習力 5.数学のための脳
kojima-dental-office.net/blog/20080811-386

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