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連帯保証人

2008年11月21日(金)


悪しき制度が招く悲劇とその解決策
吉田 猫次郎著
宝島社新書
2006年8月24日発行
720円
 ハンコを押して財産そっくりなくしたとか、死んだ親父が連帯保証人になっていたとか等々、「連帯保証人」という言葉はよく見聞きしているが、詳しくはあまり知られていない。また、わかりやすい本も少ない。
 今回紹介する本は、「ただの保証人ではなく、連帯保証人でなければならない必要性がその契約にあるかどうか」が、自分の頭で判断できるために書かれたものである。また、諸外国の事情を知ると、日本の事業主が銀行に逆らわないで、銀行に言われるがままに「連帯保証人」としてサインしているのが、なんだか滑稽に思えてくる。そして、啓蒙が広く進み、連帯保証人制度が見直しされ、悲劇が減り、より対等で明るく活発な経済活動を営める環境が築かれていくことを望む。
 実例や対応策そして改善策など詳しくはこの本を読んでください。

【問題点】
1.法規制で連帯保証人を義務づけられているわけではなく、我々が誰も疑問に思わないから、貸し手がこれを都合良く習慣化しているだけのことである。
2.融資の際に金融機関が「個人保証」を取るのは世界中何処でも見かけるが、「連帯債務者」に限りなく近い「連帯保証」が個人保証に代わってまかり通っているのは、日本だけである。
3.連帯保証人に迷惑をかけたくないからという一心で倒産すべき会社も倒産させられず、不良債権が増え、スクラップ&ビルドの新陳代謝が阻まれる。結果、日本経済は停滞する。
【保証人の種類】
1.「保証人」とは、民法上「主たる債務者がその債務を履行しない場合に、その履行をなす責任を負うもの」をいう。「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」「分別の利益」の3つの権利のおかげで「主債務者の次」という責任の順位がはっきりしており、また責任の範囲も限定される。しかし、主債務者が破産の宣告を受け、または行方不明であるときは、「催告の抗弁権」を行使することはできない。また、「検索の抗弁権」を行使するには、主債務者に弁済の資力があり、かつ、執行が容易なことを証明しなければならない。
2.「連帯保証人」は、主債務者とまったく同じ責任を負い、主債務者と実質的にまったく同列におかれている。債権者が主債務者をすっ飛ばして、連帯保証人に全額請求することができる。連帯保証人が複数名いる場合でも、取りやすい相手に絞り込んで全額請求することも可能だ。保証人に認められている「催告の抗弁権」も「検索の抗弁権」も有しない。また、「分別の利益」も過去の判例では認められていない。
3.「身元保証人」は民法ではなく、「身元保証に関する法律」で定められた雇用契約における制度である。保証期間が原則3年間、最長5年間までと定められている。また、雇われているものが、「業務上不適任または不誠実な行動があり、保証責任が発生する恐れがあることを知ったとき」や「任務または任地を変更したことによって保証責任が加重または監督が困難になるとき」には、雇い主は「身元保証人」にこれを通知する義務があり、身元保証人はこのような事実を知って負担が重いと判断したときには身元保証人を解除できる。また、報告を受けなかった場合、保証範囲の負担を軽くすることができるという判例がある。
4.「物上保証人」はまたの名を「担保提供者」という。物上保証人は担保提供した(抵当権設定された)土地建物を失うことはあっても、それ以上の個人責任を負うことはない。

【参考までに】
1.「催告の抗弁権」 「主債務者へ先に請求してくれよ、私のところに請求するのはその後だろ?」と主張できる権利
2.「検索の抗弁権」  「主債務者に返済能力があることが判明した。証拠もある。だからまず、私のところに請求する前に、主債務者へ請求・執行してくれ」と主張できる権利
3.「分別の利益」  「複数の保証人がいる場合、債務額を人数で頭割りした金額しか責任を負わない」という原則
4.「根保証」とは、借入のたびに保証申込をいただかなくても、1年の保証期間内に行う、予め決められた借入上限額の範囲内の借入については自動的に保証を行うものである。「限度額」と「期間」が決められているが、借金が増えているのか減っているのかわからないという不安がある。
5.「包括根保証」とは、保証の期間や極度額が定まっていないもので、「継続的契約から発生する一切の債務を保証する」根保証のことをいう。

【国際比較】
アメリカでは
企業が銀行から融資を受けようとすると(資金調達は投資などの直接金融がさかんで、銀行借入に依存する率が低い)、個人保証はその会社の経営者自身である。企業の役員でも株主でもない全くの第三者(事業と無関係の友人や親戚縁者)に個人保証してもらうケースは聞いたことがない。
不動産賃貸においても、連帯保証人をつけることはない。リスク対策は入居前に保証金を取ることで賄われる。

【断り方】
 連帯保証人は催告の抗弁権も検索の抗弁権も認められていない恐ろしい制度です。とてもそんなものにはなれません。でも、お世話になった恩返しとして、責任の範囲を300万円までと限定した、連帯のつかない保証人にならなってあげましょう。

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