法律を知ると患者の権利がみえてきた
2004年08月06日(金)
法律家と開業医の新しい提言
著者
伊藤 真 弁護士業務を休業、法学館館長
川端 一永 ペインクリニック 川端クリニック院長
2003年10月1日発行
メディカ出版 1800円
患者と医療従事者の対等な人間関係を考えさせる面白い本見つけました。憲法を通して、患者の権利やインフォームドコンセントの問題を考えてください。
以下、箇条書きにて、内容を紹介します。
1.民主主義の根本は主体的に生きること
・知るということは、何らかの評価や決断、行動が伴う。
・自分の考えを持ち、自分で決めること、その結果に責任を持つこと。
2.日本の憲法で最も大切にしているものは「個人の尊重」です
・自分が大切、でもそれと同じように人も大切という考えが憲法です。
・「人権」はもともと人が持っていたが、それを人が発見した。
・「憲法」は人が発明した道具で、社会全体の幸せの総量を増やすことができる。
・憲法は「国家権力に歯止めをかけて、国民の権利を守るためにある」。
・「国家」が「国民」に歯止めをかけるのが法律で、逆に「国民」が「国家」に歯止めをかけるのが憲法ということになる。
・本当に憲法を必要としているのは、少数派であり、弱者です。
・いかに相手の立場、弱者や少数者の立場に立って考えられるか、想像力を働かせることができるかが「憲法感覚」であり、「人権感覚」である。
・反面、実際上は厳しい局面ももたらす。
・凶悪犯人でも市民と同じようにひとりの人間として尊重すべきです。
・誰かの不幸の上に成り立つ自分の幸せは本物ではない。
・制度は手段で目的ではない。
3.幕末に西周(にし あまね)がヨーロッパに留学してRIGHTを「権利」と訳した
・人権とは、国家権力の個人領域への介入を排除するためのもの。
・憲法では最も人権が侵されやすい弱い立場にある被疑者、被告人を守ろうとしている。
4.医療従事者と患者との関係
・あくまでも対等な関係が理想です。「患者様」がいいのか。
・「患者さんが、いかなる権利を持っている人たちなのか」ということを習わない。
・医療の対象となるのは心も含めた人間であり、それぞれに違いがある。
・医療従事者も個性があり、それぞれ違いがある。
・相手を人間として尊重し、その個性を認め合う。
・「役割分担」が違う。
・医療従事者は専門知識に関して数段上の知識を持っている。
・患者さんは自分自身のことは多く知っている。
・その両方の知識があってはじめて正しい医療の結果が導き出される。
・わがままな患者も尊重しなければならない。
・その人にあったサービスを提供するのが医療だと思う。
5.インフォームド・コンセント
・「説明と同意」ではなく、「同意するための説明」「説明に基づいた同意」であり、本質は「同意」である。
・本質は、対等な両当事者が共通の目的(その患者さんの健康回復)に向かって気持ちよく協力し合えるルール。
★印インフォームド・コンセントの本質は
・患者に不利なこと・不利益なことを伝えること。
・考えを患者さんに押しつけない。
・患者さんが自分で判断できるための材料は充分提供する。
・そこから良好な関係が生まれる。
・自己決定権=個人の尊重
・目的は患者さんと気持ちよく関係性を維持すること。
・手段としてインフォームド・コンセントなどの説明。
・話す側も事実と意見をきちっと使い分ける、聞き分ける。
6.教科書に載っていることをやっていれば訴訟にはならない
・患者さんのために、ある意味危険を感じながらやっている。
・学ぶときには原則をしっかり学ぶ必要がある。
・しかし、実践はむしろその修正なり例外の方が多い。
・修正パターン(既存の考え方ではない新しいもの、つまり変化球を持ってきて、自分の引き出しの中にある何か)を取り出せるかが重要だと思う。
・ミスをしたときにどういうふうに対処できるかが大事。
・「それをちゃんと見ていなかった私やスタッフが悪いのですから」と謝りました。
・「何が良い医療行為だろうか」ということを本当に幅広く考える。
・専門家の間では良かったという結果であっても、その患者さんにとってみて本当に良かったのか分からない。
・医学的にみて正しいやり方でも、患者さんは苦しんでいる。
7.医療行為は客観的にみれば傷害罪と同じことをしている
・犯罪にもなるし、正しいことにもなる瀬戸際のことをしていると肝に銘じている必要がある。
・人を切りつけているのにも該当するような行為。
・患者さんが納得しているとか、または患者さんさんのためになっているとかいうのが、唯一の正当化理由になる。
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