原子力規制委員会 棄てられた能登の教訓:「組織防衛」の果てに
2026年01月22日(木)
原子力規制委員会は新たな災害対策指針を策定した。新規制基準に適合した原発であれば、対策が功を奏して重大事故が発生しても放射性物質の放出量は3.11東電原発事故の100分の1以下に抑えられるという、また、木造家屋いれば、被ばく量を屋外の約4割に低減できるという、新たな「安全神話」を作り出した。実態とかけ離れた机上の計算に過ぎない。
安全だから、5キロ離れた人は逃げないで家の中に居なさい。みんなで移動したら大渋滞になるし、避難計画を立てられない。原発を立地できなくなる。しかし、前提となるスタートが間違っているから、どんなにいろいろ理屈を並べても、矛盾の上塗り。さらに、原発に問題が生じる事態であれば、一般の家屋は当然倒壊している。
この持論を読んでそれぞれの方が考えてもらいたい。
石川県保険医協会 2月号種市先生持論
棄てられた能登の教訓:「組織防衛」の果てに
2013年7月東京電力福島第一原発事故の教訓を踏まえて、重大事故対策・設計基準等を 考慮して改正原子炉等規制法(新規制基準)が施行された。これを基に、原子力規制委員会は新たな災害対策指針を策定した。具体的には、原発5km圏(PAZ)の住民避難を優先 するため、5~30km圏(UPZ)では放射線放出時に「屋内退避」を行うことを基本として いる。この方針は新規制基準に適合した原発であれば、対策が功を奏して重大事故が発生しても放射性物質の放出量は3.11東電原発事故の100分の1以下に抑えられるという、新たな「安全神話」が前提である。また、木造家屋でも被ばく量を屋外の約4割に低減できる という想定も、実態とかけ離れた机上の計算に過ぎない。
2024年の能登半島地震は、こうした再稼働を前提とした楽観的な想定の無力さを残酷に証明した。最大震度7の激震により、家屋はもとより頑強なビルすら倒壊し、道路は寸断、断水も広範囲で発生した。倒壊した建物での屋内退避は物理的に不可能であり、避難行動さえも封じられた。能登の現実は、新規制基準下の避難指針が複合災害においては完全に破綻していることを突きつけたのである。
規制委員会は当初、この被害を受けて指針の見直しを公言し「原子力災害時の屋内退避の運用に関する検討チーム」を発足した。しかし、2025年9月の最終報告において彼らは 豹変し、能登の教訓を「一般防災で対応すべき問題」として指針への反映を拒絶、「今回 の改定は能登地震を受けたものではない」と強弁するに至った。結局、一連の作業は能登 の悲劇を直視した対応ではなく、指針の欠陥を隠蔽し現状を追認する「アリバイ作り」に過ぎなかったのである。
規制委員会がこのように事実を切り捨てたのは、避難指針の破綻を認めることで再稼働路線の根幹が揺らぐ事態を避けようとする、国・電力会社と一体となった「組織防衛」に他ならない。「屋内退避不可能」という現実を認めれば再稼働が不可能になるため、住民の命よりも組織の論理を優先したのだ。
さらに年明け早々、浜岡原発では耐震審査データの改竄までもが発覚した。本来、事業者の提出書類を鵜呑みにせず、真偽を含め厳格に検証することこそが規制当局の責務である。しかし、実態は性善説に依存し、審査機能は形骸化していた。それにもかかわらず、 彼らは「改竄は見抜けない」と開き直り、他原発への再点検すら回避した。「厳格ゆえに 1/100」という根拠なき独断にすがり能登を無視した指針、そして不正を見抜けない審査体制。これら二重三重の虚構の上に成り立つ原発回帰を、我々は断じて容認してはならない。能登で突きつけられた教訓を棄て去るなら、その代償を払うのは再び住民である。
参考に
実用発電用原子炉に係る新規制基準について
www.nra.go.jp/data/000070101.pdf
原発 いのち みらい
kojima-dental-office.net/blog/category/study/nuclear
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