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図解 宇宙の話

2018年11月21日(水)


img111眠れなくなるほど面白い
渡部潤一著
2018年3月30日発行
日本文芸社
680円
宇宙全体の謎を解く方程式
 アインシュタインが提唱した相対性原理「物体が同じ速度で動いているならば、止まっている時と同じ物理現象が起きる」を理論化したもの。現在の宇宙論はこの上に成り立っている。
 ・光速よりも速く動けるものはない
 ・光速に近い速さで動くものは、縮んで見える
 ・光速に近い速さで動くものは、時間が遅れる
 ・重いものの周りでは、時間が遅れる
 ・重いものの周りでは、空間が歪む
 ・重さとエネルギーは同じ
1.ダークエネルギー
 約138億年に宇宙は「無」から誕生したと考えられている。「無」には、「ダークエネルギー」という巨大なエネルギーが詰まっていた。「無」からインレーション期が始まり、ビックバンを経て、現在の宇宙の形に成長した。
 1998年、遠方の銀河の中にある超新星の明るさを観測したところ、60億年ほど前を境に、それ以前は理論的な予測値よりも明るく、それ以降は暗いことが分かった。暗くなっているということは星が遠ざかる速度が大きくなっている、すなわち、膨張が加速している。この膨張させるエネルギーを「ダークエネルギー」と呼ぶ。
 様々な観測結果から、ダークエネルギーは水素やヘリウムなどの通常の物質の約18倍、ダークマターの約3倍存在すると考えられている。
2.ダークマター
 宇宙には通常の物質の他に、目に見えない物質があると考えられている。なぜなら、通常の物質の重力だけでは、銀河を高速で回転させ、周りの惑星や微惑星などを引きつけておくことはできない。
 1983年、アメリカのヴェラ・ルービンは、恒星の公転速度と、その中心からの距離の関係を調べ、あらゆる銀河において恒星の公転速度が速すぎることから、銀河の質量は見かけよりも大きいと発表した。つまり、この宇宙には目に見えない物質が大量に存在し、それが宇宙の基本を支えている。さらに、目に見える物質の5倍以上にもおよぶ。この質量を持ち、周りに重力を及ぼすけれど目に見えない謎の物質を「ダークマター(暗黒物質)」と呼ぶ。
 2018年、国立天文台の研究者たちが、広い範囲のダークマターの可視化に成功した。それによって、ダークマターが網の目のように銀河を繋いでいる様子が確認できた。
3.超新星爆発
 恒星の核融合反応は、水素からヘリウム、ヘリウムから酸素・炭素と続き、最終的には鉄が作られる。中心部の水素を使い果たしてしまうと、核融合は進まなくなり膨張し始める。自らの重力によって一瞬のうちにつぶれてしまい、その反動で大爆発を起こし、星の外層部を吹き飛ばしてしまう。この爆発を「超新星爆発」という。
 その後は「中性子星」、あるいは「ブラックホール」という超高密度の天体が残る。中性子星は、1立方センチメートルあたりなんと10億トンもの重さを持っている。
 ブラックホールは、太陽の30倍以上の大きな質量を持つ星の最後の姿。大きさが無限小の「点」になってしまい、逆に密度は無限大になってしまう。そこでは、すべての物理法則が成り立たず、光も外に逃げ出すことができない。アインシュタインが相対性理論によって予言した天体。
4.ジャイアント・インパクト
 約45億年前、火星ほどの大きさの原始惑星が原始地球に衝突した。これを「ジャイアント・インパクト」と呼んでいる。これによって、それの破片と吹き飛ばされた地球の一部が、地球を回りながら集積して月が誕生した。原始地球の水蒸気の大半が宇宙空間に飛び散り、地表の水は一度干し上がった。現在の水は、その後衝突した数多くの隕石に含まれていた水と考えられる。もし衝突がなかったら、地球全体がすっぽりと水没していてかもしれない。月が誕生すると、月と地球の間の重力の作用によって地球の自転軸の傾きが落ち着き、気候の安定がもたらされた。
5.もし月がなかったら地球はどうなる?
 地球と月とは引力という力でお互いに引き合っている。この引力と引き合いながら回る時に生じる遠心力が海の干潮と満潮を引き起こし、これを潮汐力という。
 月の潮汐力は地球の自転スピードを遅くする作用をしている。もし月がなかったら、地球は1日8時間という猛スピードで回転し、地表も海も大荒れの状態で、現在の人類のような進化は望めなかった。
 また、地球の自転軸の傾きを一定に保ってくれているのも月の引力。もし月がなかったら、地球の自転軸は不規則に変化し、大規模な気候変動が起こっていたはず。
6.月は地球から遠ざかっている
 1年に3センチメートルずつ離れている。月が遠ざかると、地球の自転も月の公転も遅くなっていく。月ができたばかりの頃の地球は1日8時間ほどの早さで自転していたが、月が遠ざかるにつれて遅くなり、現在は1日約24時間になっている。将来的には1日はもっと長くなる。
7.ハビタブルゾーン
 惑星の表面に液体の水が存在できることを、「ハビタブルゾーン(生命居住可能域)」と呼ぶ。生命が命を維持していくためには、様々な化学反応が必要。液体の水は化学反応をを起こす場。地球は太陽とちょうどいい公転軌道半径にいる。
 38億年前に地球が生命を育むための準備が整った。大気には二酸化炭素などの温室効果ガスが大量に含まれていたから、地球表面の水は凍ることなく液体の状態で存在できた。
 約35億年前、生物の共通祖先は海底の熱水噴出孔で暮らし始めた。
8.氷河期
 22億2000万年前と7億年前、6億5000年前、地球全体が厚さ1000メートルの氷に覆われるという厳しい氷河期があった。
 海の水分が雨を生み、二酸化炭素が溶けた雨によって岩石中のカルシウムなどが溶け出し、炭酸カルシウムとなって海に堆積し、大気中の二酸化炭素が減少していき、急激な寒冷化をもたらした。
 表面が完全に凍りついた地球でも地熱が海を温め氷の成長を押しとどめ、また、火山が氷の中から頭を突き出して活動を続けて微生物を守り、再び地球を温めるための二酸化炭素を吐き出し続けた。
9.地球の温暖化
 フロンガスによってオゾン層が破壊されると、太陽光はほんの少しだけ地上を強く照らす。しかし、太陽エネルギーの増加をみると、0.01%程度。それよりも、二酸化炭素を初めとする温室効果ガスが大気中に増加することの方が気温の上昇に大きく大きく影響している。
10.月の魅力
 地球上では通常のヘリウムの100万分の1しか存在しないヘリウム3という物質が、月の土壌には数十万トンあると推定されている。核融合炉の燃料となる物質。ヘリウム3が1万トンあれば全人類の100年分のエネルギーが賄えると言われている。

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