子どもたちに語る これからの地球
2007年05月25日(金)
「植林」は砂漠化を防げるか
編者 日高敏隆+総合地球環境研究所
講談社
1300円
2006年7月20日発行
今後急激に深刻な問題となる水資源の不足や拡大する砂漠化などの地球環境問題に対し、森林の効果への期待が高まっている。しかし、砂漠は人間が水を撒かなくては木が枯れてしまうような場所であり、そこを森林にすることが本当によいのだろうか。大量の水を使って木を植えて砂漠を緑化すると、地下深くまで伸びた木々の根は、地中深くの地下水を吸い上げて、梢から発散してしまうようになる。もともと水の少なかった砂漠は、なけなしの地下水までを、植えられた木々のおかげで空中に発散せられてしまい、ますます水の少ない土地になってしまう可能性もある。植林は乾燥地の最も貴重な資源である水の「消費者」であることを私たちはよく考えておく必要がある。また、森林に降った雨の半分近くが地面に達することなく大気中へ蒸発し戻ってしまい、森林の存在は流出量を減少させ、また極端な渇水時には森林が存在することが有利に働くことはない。水の有効利用を考えると、湿潤地である日本とは当然異なった森林と水に関する戦略が必要であろう。砂漠化した場所を緑化することに本来期待されているのは、この砂の移動を防ぐ機能であり、決して森が水を作り出すことはない。
- カテゴリー
- 自然科学の不思議さ