国税通則法改正後の税務調査の変容と対応
2012年07月07日(土)
税理士 岡田俊明著
月刊保団連 「保険医の経営と税務」
2012年2月2日発行
1500円
来年からの税務調査に備えて国税通則法の改正点を理解し、基礎知識を高めよう。医療現場への影響も考え、分からないことは税理士さんに相談しましょう。
改正国税通則法が2011年11月30日に成立、12月2日に公布された。
2013年1月1日以降の施行。
主な改正点は、
1.更正の請求の期間延長及び対象の拡大
2.すべての処分に理由付記を義務化
3.税務調査手続の明確化
4.あらたな租税罰則の創設
*当初案にあった、納税者権利憲章の制定や、調査手続のうち文書による部分が削除された。
納税者の権利擁護の視点から税務調査手続の改正内容をみると、
1.税務調査手続は一定明確化された
1)事前通知手続の制定
税務調査に当たって納税者に対して、7項目の通知を税務署長に義務づけた。
①質問検査権等を行う実施の調査を開始する日時
②調査を行う場所
③調査の目的
④調査の対象となる税目
⑤調査の対象となる期間
⑥調査の対象となる帳簿書類その他の物件
⑦納税者の氏名及び住所(居所)、調査担当職員の氏名及び所属
*事前通知は、当初案の文書が削除されたので、電話により行われるが、
通知内容を確実に記録するためにも文書を要求すべき。
*①②については「合法的な理由」があれば変更を「協議」することができる
*税理士関与がある場合は、納税者と税理士双方に事前通知がなされる
*施行例では「申告内容の確認」「納税義務の確認」の2つの目的が記されている
*カルテは納税関係書類ではないので見せる必要ないと解釈すべき
*事前通知の日数に規定はないが、14日程度を求めていく
2)事前通知の例外
税務職員が事前通知なしで突然調査に訪れた場合、
その調査が例外規定に該当するのかを確かめることが必要
*例外規定
①違法または不当な行為を容易にし、
②正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれ、
③その他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ
があると認める場合に限られる
3)調査終了手続の制定
調査の結果、
①更正決定等をすべきではない場合は、「申告是認」を文書で通知する
②更正決定等をすべき場合は、是正すべき額と理由を含む調査結果と
修正申告などの勧奨や
その場合には不服申し立てできないが更正の請求ができることを
口頭で説明、課税庁が書面交付。
*書面が届くことによって、調査終了が分かるようになった
*法律に基づく「調査結果の内容説明」後に、
修正申告などの勧奨に対して「処分して下さい」と応じても、
修正申告でも更正決定でも金額は変わらない
*通知、説明、交付は、納税者の同意がある場合に、
税理士に行うことでよいとされている
*更正の請求期間を2年から5年に延長した
例えば、見つからなかった書類が後日見つかり、
当初の申告内容が証明できるようになった場合など
2.調査権限の強化か 「提示・提出」を付加
「納税者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査し、
又は当該物件(その写しを含む)の提示若しくは提出を求めることができる」
「提出物件の留め置き、返還」の規定に置いて、
①物件の名称又は種類及びその数量
②当該物件の提出年月日
③当該物件を提出した者の氏名及び住所又は居所
④その他留め置きに関し必要な事項
を記載した「書面を作成し、
当該物件を提出した者にこれを交付しなければならない」
また、「留め置いた物件につき留め置く必要がなくなったときは、
遅滞なくこれを返還しなければならない」
*質問・検査に提示・提出が加わった
*提示しない場合には、保存していないと受け取られる
*事業に支障がある場合などには、必要な部分のコピーの提示・提出で問題ない
*コピー1枚でも「預かり証」を公布してもらい、返還を求めるべき
3.あらたな租税罰則の創設
①無申告脱税犯、消費税不正受還付未遂犯
5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又はこれを併科する
②更正請求書虚偽記載、提示・提出要求に対する忌避など
1年以下の懲役又は50万円以下の罰金
*国税通則法改正より前の6月22日に成立、
2011年8月30日以降の犯罪に適応される
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