歯科口腔保健推進法が成立
2011年09月21日(水)
歯科疾患の予防等によって口腔の健康を総合的に推進する事を目的とした「歯科口腔保健の推進に関する法律」が8月2日の衆院本会議において全会一致で可決、成立した。これを受け、厚労省は同月26日に医政局歯科保健課の下に歯科口腔保健推進室を設置した。
これにより、国及び地方公共団体は、口腔の健康保持を推進するための施策や口腔の健康に関する実態調査の実施、並びに口腔状態が全身の健康に及ぼす研究推進に関して責務を負うことになった。一方、障害者などが定期的に歯科検診を受けられるように施策を講ずるが、国民が定期的な歯科検診を受けることは勧奨とされ、施策を実現するために必要な財政上の措置に関しても努力規定に留まった。
歯科関係団体の多くはこの法律の成立にもろ手を挙げて歓迎する向きもあるようだが、第5条に「国民が自らの責任で歯科疾患の予防に取り組み、定期的に歯科検診を受け、口腔の健康の保持に努めなければならない」と謳われたことに違和感を覚える。今後はこの第5条に対して、第7条で国及び地方公共団体が定期検診を「勧奨」で留めた事がどのような影を落とすことになるのかを注視する必要があろう。
今、歯科口腔保健の推進に関して国に求められることは、「保険でよりよい歯科医療の実現」である。つまり、歯周病やう蝕の発症を待ってから治療する診療体系ではなく、医科における高血圧症,高脂血症のように、歯科においても現在は疾病とみなされていない病的歯垢(細菌叢)を「デンタルプラーク症(仮称)」と位置づけ,保険診療の対象疾患とすることである。プラークスコアなどの検査を評価し、歯周病やう蝕を発症する前に健康な細菌叢へ引き戻すことを治療として認め、すべての国民が各々のライフステージにおいてう蝕と歯周病の罹患率を容易に減少させることができるような保険制度に改善すべきである。
保険医協会は、国民に自助努力を求めるばかりでなく、歯科医師も国民の歯科保健の増進に支援・関与が容易となる医療制度の実現を追求する。
歯科口腔保健の推進に関する法律(条文)
www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=78ab2261&dataType=0&pageNo=1
歯科口腔保健の推進に関する法律案の概要
www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/shikakoukuuhoken/dl/05.pdf
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