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ANAが大切にしている習慣

2016年03月11日(金)


ANAが大切にしている習慣ANAビジネスソリューション講師 田口昭彦著
扶桑社
2015年9月1日発行
760円
 「人的リソース」とは、人が持っている経験や知識、意見や情報、気づきのこと。この人的リソースを共有するために必要なのが「雑談」であり、その場が「雑談の場」である。雑談は「暗黙知」の宝庫。そして人と人との「関係の質」を高める「場」でもある。多種多様な職種の人間が一体感を持って、チームの目的を達成していくためには、雑談が必要。今は必要のない情報でも、いつかは必要になることが多々ある
 この本は、チーム作りや人財育成、そしてヒューマンエラーによるトラブル減少の役に立つと思う。

1.整備士の仕事
 優秀な整備士ほどマネジメント能力やコミュニケーション能力が高い。なぜなら、パイロットや客室乗務員など他の職種から修理やメインテナンスのリクエストを聞き、整備した結果を正しく伝えることが重要な仕事だから。難しいことを分かりやすく説明する能力が求められている。
 整備士はいくら技術があっても一人ではエンジンの試運転すらできないし、修理や点検をする場合でも、全体の状況を把握し、作業工程や人員構成を考えて、進捗管理をしていかなければ計画通りに作業を終えることはできない。
 ANAグループでは、99.7%の定時出発率を誇っている。これは1000便の出発便のうち、整備事由で16分以上遅れる便が3便ということ。しかし、ANAグループ整備部門では、遅れた場合は時間に関係なく「遅延レポート」を起票して分析する必要があると考えている。レポートの作成は、貴重な財産となり、それぞれが自分の頭で考えることを習慣づけると同時に、TEAM全体がまとまるきっかけにもなる。

2.チーム内の人間同士の「間」
 「関係の質」という言葉は、マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱した「組織の成功循環モデル」の中にでてくる。「関係の質」がよくなれば、メンバーそれぞれが「気づき」を持ち、情報が共有され、当事者意識をもてるようになる。そうすると、仕事に対する興味が生まれ、自分が納得した上で積極的に取り組むようになり、責任のある自発的な行動に変わる。これが「行動の質」。仕事に成果が出てきたり、エラーやミスが少なくなって「結果の質」が高まる。これを「グッドサイクル」と呼ぶ。
 「結果の質」を高めるためには少し遠回りかもしれないが、まずは「関係の質」を高めることから始めるのが、チームとしていい結果に結びつく。関係の質を高めるには、とにかく「自己開示」をして、相手との適度な「間」を探っていく。無理に近寄る必要はない。自己を開示するためには、まず「挨拶」。
 しかし、チームの目的は「いい結果」を出すことだから、どうしても最初に「結果の質」を求めてしまう。「結果の質」がいい時には組織もうまく回っているが、ひとたび結果が悪くなると、「バッドサイクル」に入る。成果が上がらなくなると、「犯人捜し」が始まる。そうなると、一方的な命令が下され、責任の押し付け合いと内部対立が起き、人間関係も悪くなる。エラーが起きても気づかず、エラーの連鎖が起き、どんどんバッドサイクルの悪循環に陥る。
 
3.いいチーム、強いチーム
 メンバー全員が共有する明確な目標を持ち、風通しがよく自由にものが言える環境があり、信頼できるリーダーがいる、という3つの要素を兼ね備えているのがいいチームであり強いチームだと思う。
 リーダーは、自分が持っている人間的な魅力を背景にしたパーソナルパワーと、権限や権力に支えられているポジションパワーを混同しないことが大切。
 組織内の「権威の差」を表した言葉に「権威勾配」がある。急勾配では、上司が間違っていると思っても部下はなかなか指摘できず、それがやがて大きなミスや事故に繋がることも十分あり得る。一方、勾配がフラットなケースでは、お互いを気にして言いたいことが言えなかったする。逆に主張し合うことで意見がぶつかって収拾がつかず、仕事が非効率的になるかもしれない。
 長い間、同じメンバーでいるTEAMは、どうしても活性化ができなくなってしまう。時代に合わないやり方が修正できず、新しいメンバーが入ってきたとしても、古い体質に飲み込まれていくという状態が起きてしまう。TEAMリーダーの交代はこうしたTEAMの状況を変える絶好のチャンス。 

4.多様性こそが強い企業をつくるための源
 チームの能力を最大限に発揮するためにも、個々人の違いを尊重して受け入れ、またその違いにこそ価値を見つけることが大切。同じ発想の人間ばかりの集団には、かなり大きなリスクが内在していると言っていい。
 漢字の「口」を書いて、そこへ線を2本足して別の漢字をつくるゲーム。5文字しか書けていなかった解答の中に、19文字書けた人が気づかなかった漢字があった。つまり、いくら優秀な人でも気づかないことがあると言うこと。
 ANAグループには、同僚のいい点や感心した点などに気づいた時に手渡す「Good Jobカード」というものがある。客観的に他者を評価する、ということは、自分をも客観視することに他ならない。TEAMの力とは、個々人がそれぞれに考え抜き、個性を発揮して、多種多様な力を結集するところにある。

5.ヒューマンエラー
 ヒューマンエラーというのは人間の脳が情報処理をする過程で起きる。つまり、自分の意志にかかわらず起きてしまう。それは人間の特性だから、見間違いや思いこみ、記憶違いや判断ミスは起こりうるので、ゼロにはできない。それによって事故や不具合が起こった場合には、叱りつけても何の解決にもならない。この場合は、どこでどのようなエラーをしたのか、そのエラーはなぜ防ぐことができなかったのかについて、本人を呼んで注意して一緒に考え、教えてあげることが大切
 しかし、叱らなければならない場合もある。自分の行為を正当化するために嘘をついた場合とか、面倒だからと手抜きをしたり、ルール違反をした場合には、徹底的に叱る必要がある。最悪のケースは、叱られないように隠蔽しようという後ろ向きの行動に走ってしまう。そうした場合には、結果だけで判断して頭ごなしに叱るのではなく、なぜそのような行動をしたのかを聞き出して諭し、育成することが大切。

6.ハインリッヒの法則
 ハインリッヒの法則で大切なことは、「人は人であるがゆえにエラーを起こす」ということ。そして、「1:29:300」という比率で、「重大事故」、「軽微な事故」、「ヒヤリハット」が起きること。「ヒヤリハットで済んでよかった」ではない。なぜ起きたのか、なぜ重大事故にならずに済んだのかを検証することで、起きるかもしれない重大事故を未然に防がなければならない。
 ヒヤリハットというのは、結果として何も起こっていないから、後から思い出せない。原因を考える習慣が身に付くと、「おやっ」とか「あれっ」と気がついた時に考えてみる、「ヒヤリハットの先取り」が行えるようになる。

7.失敗から学ぶという考え方
 エラーやミスに、たまたまや偶然はない。組織で起きる事故や不具合のほとんどは、ルールを守らないことや、近道行動といわれる、面倒な手順を省略してしまうことが原因となっている。しかし、日常的にやってしまっているので気づかなかったり、自分でもそれがルール違反とは思ってもいない。
 聞き取り調査の場合に大切なことは、ヒアリングする側の態度。ヒアリングを受ける側がリラックスし、正直にエラーした時の状況を説明できる環境作りが必要。大切なことはエラーをした本人を罰することではない。エラーの原因を究明し、失敗の連鎖を防ぐこと。
 ANAグループでは、経営トップから率先して「判断に迷った時には、安全側に判断しろ」と明言している。それが、例え飛行機の遅発や引き返しに繋がっても、それを恐れてはならない。かりにその判断が間違っていたと後で分かったとしても、上司やリーダーは、決して批判がましい言動をとらない。こういった後ろ盾があれば、一人ひとりは安全優先の意識を持ち続けることができる。

8.スイスチーズ・モデル
 防護壁には穴が開いているという考え方。何重にも作っておくことで、たとえ1つの穴をすり抜けた間違いやエラーがあったとしても、次の防護壁をすり抜けられず、重大事象になることを防ぐことができる、という概念。
 エラーを食い止めた防護壁が最後の1枚だったのか、それともその後にまだ何枚かあったのか、ということも検証しなければならない。これは大変難しい。

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