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海外技工問題

2010年12月10日(金)


 日本の保険診療では、補綴物(歯科技工物)は日本の歯科技工士が製作することと、その材料が日本の薬事法で定められたものを使うことが決められている。しかし、保険適応でないもの(自費診療)に関しては、現在の法律に記載がなく、海外で製作された補綴物を使用する余地があった。
 2005年9月に厚生労働省から「国外で作成された補綴物等の取り扱いについて」(平成17年9月18日付、医政歯発第0908001 医政局歯科保険課長通知「平成17年通達」)が出された。要約すると、海外補綴物は、我が国の有資格者による作成ではなく、使用している歯科材料の性状なども明確ではないが、患者の理解と同意を得て、歯科医師の責任で使用しても構わないという見解を示した。この通知以降に歯科技工業者から宣伝チラシが増え、海外委託も増えている。日本歯科医師会会員を対象に2008年に行われた海外委託歯科技工物の実態調査によると、7.5%の歯科医療機関が海外補綴物を発注している(平成20,21年度厚労科学研究『歯科補綴物の多国間流通に関する調査研究』について)。また、輸入時には、歯科材料は薬事法に規制されるが、補綴物については医薬品に該当せず、対象外の「雑貨扱い」で国内に持ち込まれているので、使用される金属などの安全性は明確になっていない。そして、歯科医師も、金属成分の肉眼的識別や詳しく調べる術を持っていない。
 これらの現状を踏まえ、安全性を確保するためには、すべての補綴物に使用される金属など材料を薬事法で明確にし、無資格者による歯科技工を国内と同様に海外でも禁止することが重要である。また、有害物質による副作用や金属アレルギーなど医学的問題が生じた場合や不測の事態に対して、その出所を追跡でき原因を特定し、緊急の対応が取れるようにすることも大切である。また、歯科医師に知らせずに、技工所が別の(海外)技工所へ下請け委託をしていることも耳にするので、歯科医院は、個人情報保護法の観点からも、情報利用に制限があることを理解してもらい、再委託禁止を遵守する誓約書を技工所と取り交わす事をお勧めする。
 そして、歯科医学教育において、学生時代の技工物制作経験が激減し、歯科技工に対する理解が極めて希薄になり、技工士に対する指示能力に問題が起きてきていることも付け加えておきたい。また、この機会に、ベリリウムの全身的な作用や他の薬物などとの相互作用についても調べてみたい。

参考として
技工士の待遇改善を
kojima-dental-office.net/blog/20090618-3447#more-3447

月間保団連 2010.11.15.
特集 海外歯科技工問題
脅かされる歯科技工の安全性と崩壊する歯科技工・歯科医療

海外技工問題に対する要請(保団連)
hodanren.doc-net.or.jp/news/teigen/100209kaigai-gikou.html

その後の展開
歯科医療における補てつ物等のトレーサビリティーに関する指針
www.gikoushi.net/trace/

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