名誉院長ブログ のぼるくんの世界

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男の作法

2009年10月25日(日)


男の作法池波正太郎著
新潮文庫
昭和59年11月25日発行
438円

 池波正太郎の「若い友人」佐藤隆介氏の様々な質問に答えられたものが、きわめて具体的に男の生き方を教えるこの一冊になっている。食卓の礼儀作法に始まり、人事、組織、贈り物、小遣いなどなど。引き戸や畳などの日本の家についても語る。自分を知り、自分本位ではなく、他人を思いやり、気をまわす日本の心に触れたように思う。

1.鮨屋
 ガラス戸から見て、椅子とテーブルがなければ相当高いと思ったほうがよい。椅子とテーブルがあれば安心である。ダンディとは、知ったかぶり、通ぶることを避けることだ。シャリだなんて言わないで普通に「ゴハン」と言えばいいんですよ。
 自分が初めて行く店の場合は、常連がいつ来るか分からないから、隅のテーブルのほうへ座るか、カウンターの一番隅のほうへ座ったほうがいいんだよ。
 鮨屋へ行って、金さえ払えば良かろうというのでトロばっかり食べているやつも駄目なんだよ。鮨屋が困っちゃう。もとが高いから、トロはサービスで、まあとんとんに行けばいいという程度であれしているわけだから、トロというのはそんなに儲からない。高いものは遠慮して食べなきゃいけない。あんまりうまいからもっと食べたいときは「もう一つ食べたいけど、いいかね」と、言わなきゃいけない。
 
2.そば
 食べるときに、食べにくかったら、先ず真ん中から取っていけばいい。そうすればうまくどんどん取れるんだよ。その土地土地によってみんなそれぞれ特徴があるんだから、それを素直に味わえばいいんですよ。決めつけるのが一番つまらないことだと思う。つゆが薄い場合はどっぷりつけていいんだよ。つゆが濃いから、全部つけられないんだよ。

3.てんぷら屋
 行くときは腹をすかしていって、親の敵にでも会ったように揚げるそばからかぶりつくようにして食べなきゃ。天ぷらというのは、材料が新鮮であることと、油の加減、これが大事なわけだからね。酒は少ししか飲めないよ。またたくさん飲むとてんぷらの味が、酒のいろいろなほうにあれされて、駄目になってしまう。酒は二本までが限度だね。てんぷら屋に行ってビールをがぶがぶ飲んだり、ことにウイスキーをがぶがぶ飲んだりしたらもう肝心のてんぷらの味が落ちちゃってね。

4.刺身
 刺身を食べるときに、たいていの人はわさびを取ってお醤油で溶いちゃうだろう。あれがつまらないよ。刺身の上にわさびをちょっと乗せて、それにお醤油をちょっとつけて食べればいいんだ。そうしないとわさびの香りが抜けちゃう。醤油が濁って新鮮でなくなるしね。つまは刺身の合いの手に手でつまんで口に入れるから香りがいいわけ。

5.ビール
 コップになみなみと注がないで、三分の一くらい注いで、それを飲み干して入れ、飲み干しては入れして飲むのがビールの本当のうまい飲み方なんです。三分の一ぐらい注いで、その度に一気に飲むようにしなきゃうまくない。一流の店で出すビールのコップは小さくて細いでしょう。
 右の肋骨の下が肝臓ですから、これを押したり離したりして飲んでいれば、飲むそばから肝臓の腫れが引いてっちゃうわけだから、ある程度飲んでも平気なんだよ。グーッと押して痛かったら肝臓が悪いわけだ。

6.おしゃれ
 おしゃれというのは、男の場合、自分の気分を引き締めるためですよ。ポイントをどこに置くかというと、自分はどういう形のものを主張したいのか、それを先ず考えればいいんだよ。客観的に判断できるようになることが、やはりおしゃれの真髄なんだ。
 自分に合う基調の色というものを一つ決めなきゃいけない。靴とネクタイの色を合わせないとおかしいんだよ。洋服がストライプだったらワイシャツは無地。ストライプのシャツの場合、無地のようなものとか、あるいは丸みを帯びたデザインのネクタイでないとね。

7.約束
 自分の人生が一つであると同時に他人の人生も一つであるということだ。自分は何をやったっていい。だけど他人との接触においては一人の社会人として振る舞わなければならないわけだ。

8.哲学
 「人間とか人生とかの味わいというものは、理屈では決められない中間色にあるんだ。つまり白と黒の間の取りなしに。その最も肝心な部分をそっくり捨てちゃって、白か黒かだけですべてを決めつけてしまう時代だからね、いまは」
 人間というのは、善いことをしながら、悪事をなし、悪いことをしながら、善事をなす、不思議な生き物だという認識が生まれてくる。

9.旅
 何の利害関係もない第三者の目に映った自分を見て、普段なかなか自分自身では分からないことを教えられる、それが旅に出る意味の一つですよ。自分という人間を知るわけだ。

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