名誉院長ブログ のぼるくんの世界

小島歯科医院のWebサイト

iPS細胞ができた!

2008年08月17日(日)


iPS細胞ができた!ひろがる人類の夢
著者
山中伸弥 京都大学再生医科学研究所教授
畑中正一 京都大学名誉教授 ウイルス研究
集英社
1100円
2008年5月31日発行
 世界が注目した偉業を2人の対談でわかりやすく解説した1冊。これからどんな道が開け、何が課題なのかじっくり読んでいただきたい。また、研究の環境整備も考えさせられる。

1.分化した細胞が「巻き戻る」
 06年8月、山中伸弥教授のチームが世界で始めてマウスの皮膚細胞からiPS細胞(人工多能性幹細胞)を作りだすことに成功し発表した。これは、分化した細胞を時間を逆にたどり、未分化の状態に戻すことに成功した。そして、07年11月20日ついにヒトの皮膚からiPS細胞作成成功を発表。
 卵の環境を使わずに、遺伝子を導入して分化した細胞をiPS細胞にリプログラミングすることに初めて成功した。個体になっていく最初にインプットされたタンパク質を作る設計図である遺伝子が発現したということである。
2.iPS細胞ができた瞬間
  iPS細胞ができた瞬間は心筋分化してトットトットと拍動しているのが確認できた時である。iPS細胞になった細胞はアメリカの会社が販売している36歳白人女性の頬の線維芽細胞である。東京大学の北村俊雄先生が開発したレトロウイルス(非常に効率が良くて、線維芽細胞の場合は8割、9割の細胞に入る)に遺伝子を運ばせてiPS細胞を作った。
3.iPS細胞は見て分かるか
 iPS細胞ができたことは顕微鏡で見て多分そうだろうと予測はつく。ヒトのES細胞は扁平なコロニーを作り、せんべいのようにフラットに見える。マウスのES細胞は、お茶碗のご飯をひっくり返したように、こんもり盛り上がって見える。基本的な細胞培養と遺伝子導入の知識があれば、誰でもできる。
4.「万能」細胞は誤解を与えやすいのでiPS細胞と呼ぶ
ES細胞1個からは、個体はできない。受精卵は全能性で、ES細胞やiPS細胞は多能性である。
 参考 一般的にいわれる「万能」細胞
  ①iPS細胞(人工多能性幹細胞) 
    体細胞を使う。自分自身の細胞を使えば拒絶反応もない。
    ②ES細胞(胚性幹細胞)
    受精卵を壊して使う。倫理面と拒絶反応の問題がある。
5.リプログラミングができると考えた発端は
 40年前にイギリスのサー・ジョン・ガードンがオタマジャクシの腸細胞の核をカエルの卵に移植するとクローンのカエルが生まれるという仕事があった。ほ乳類ではできないといわれていたが、96年にイギリスのイアン・ウィルムットさんたちがクローンの羊を作り、さらに2000年に京大の多田高先生たちがクローンを作らなくてもES細胞と体細胞をくっつけると体細胞が元に戻ることを明らかにした。
6.考えたことは
 99年当時、みんなはES細胞を何かに分化させる研究をしていた。それで、逆をしよう。分化したやつからES細胞を作ろうと考えた。
  一番目はまず巻き戻そうと思ったこと
  二番目はその巻き戻す因子を探そうと思ったこと
  三番目はそういう因子をどうやって探そうかということ
7.元に戻る因子を絞り込んだ
 分化した細胞を多能性にする因子は細胞で多能性を維持している因子とかなりオーバーラップしているだろうと考えた。
 理化学研究所の林崎良英先生が作っておられたマウスのいろいろな組織や細胞で発現する遺伝子の膨大なデータベースを利用して、コンピューターを使って4年かけて多能性を維持する因子を一生懸命探し、マウスの2万数千ある遺伝子から24遺伝子に絞りこんだ。それから、24個から4個に絞る時は先ずやってみようと始まり、本当に大事な因子だったら、1個をのぞいた23個全部あってもダメになるだろうと考えた。
8.4つの遺伝子の謎
 4つの遺伝子がすべて直接・間接的に転写因子(遺伝子の読み手)だった。転写因子は細胞の設計図である遺伝子を解読する役割があり、細胞の運命を変えるのは、転写因子の組み合わせで決まる。
  オクトスリーフォー(Oct3/4)  身体を作り上げる転写に関係する遺伝子
                 ES細胞とか生殖細胞に発現する
  ソックスツー(Sox2)   ES細胞とか神経細胞に発現する
    この2つはライバルのトムソン教授も同じ

  ケイエルエフフォー(Klf4) 
            ES細胞を維持していくために必要な転写制御の遺伝子
  シーミック(c-Myc) ガン遺伝子として有名であり、
            傷、肝臓、細胞の再生の時に欠かせない遺伝子
9.4つが3つになった理由は
 オクトスリーフォー、ソックスツー、ケイエルエフフォーの3つは多機能性細胞の維持に必要な遺伝子を活性化したり、分化の時に働く遺伝子を抑制したりする。
 シーミックは効率も上げるが、中途半端な変な細胞もいっぱい増やす。だからシーミックがないと効率は下がるけれども、できたやつはほとんど良質の細胞である。初めの頃はシーミックがないと1個もできなかったけれども、選択方法、条件を研究して効率が上がり、なくてもできるようになった。

自然科学の不思議さの最新記事