小島歯科医院 名誉院長ブログ

看護・介護職員のための腰痛対策

2018年01月14日(日)


001www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02876_04
ー持ち上げない・抱え上げないケアー
変えられないを変えていく
講師
 保田 淳子 氏(日本ノーリフト®協会代表理事、看護師)
nolift.jp/
www.nhk.or.jp/seikatsu-blog/400/223021.html

メモ
A.腰痛の現状
 1.日本の医療・介護職
  ①腰痛保持率73~85% → 離職・労災申請
  ②腰痛で労災申請
     災害性の原因によらない腰痛 筋肉などの疲労を原因とした腰痛
www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/111222-1.pdf
     腰部に過度負担がかかる業務に比較的短期間(約3ヶ月以上)従事
     約20kg以上を中腰で取り扱う
  ③主要産業別の業務上腰痛件数
www.jniosh.go.jp/publication/doc/srr/SRR-No47-3-0.pdf#search=%27%E4%BB%8B%E8%AD%B7%E7%9C%8B%E8%AD%B7%E8%81%B7%E5%A0%B4%E3%81%AE%E5%AE%89%E5%85%A8%E3%81%A8%E5%81%A5%E5%BA%B7%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89++%E5%B2%A9%E5%88%87%E4%B8%80%E5%B9%B8%27
 厚生労働省の業務上疾病発生状況等調査1)によると,休業4 日以上の業務上腰痛発生件数は,製造業などが企業努力により減少しているにもかかわらず、保健衛生業のみが急増している。この保健衛生業には,社会福祉施設,医療保健業,その他の保健衛生業が含まれる。

B.日本の医療・介護職の腰痛予防対策
 
1.企業努力ではなく個人努力になっている
   感染症対策ではあり得ない
  
①対症療法にすぎない
   ・ボディメカニクス
   ・腰痛予防ベルト
   ・体力・筋力アップ
   ・テクニック、技術亢進
   ・マッサージ 接骨院
  メンタルサポートも予防とは言えない、起きてからの対応 
  ②医療安全と労働安全が混同されている

 2.現場に根付く文化を変える
  ①知識や意識を変える
   ・働く人が健康でなければよいケアはできない
   ・働き方がよくなれば患者のためになる
   参考に(1998年オーストラリア看護連盟ビクトリア支部)
    押す・引く・持ち上げる・ねじる・運ぶに人力のみで行うことを禁止する
     kgを書かない→患者のために頑張るから 
     相談窓口
     背景に労災申請が増えたこともある
  ②事業者が対策を講じる
   ・腰痛の発生要因に的確に対処できる対策の内容を決定する
     参考に
  厚労省 ~19年ぶりに「職場における腰痛予防対策指針」を改訂~
www.mhlw.go.jp/stf/houdou/youtsuushishin.html
    職場における腰痛予防対策指針
www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000034et4-att/2r98520000034pjn_1.pdf
    9ページ Ⅳ福祉・医療分野等における介護・看護作業
     (3)作業姿勢・動作の見直し
     イ抱上げ
移乗介助、入浴介助及び排泄介助における対象者の抱上げは、労働者の腰部に著しく負担がかかることから、全介助の必要な対象者には、リフト等を積極的に使用することとし、原則として人力による人の抱上げは行わせないこと。
     主語に注意、労働者が行わないことではない、事業主がさせないこと。

C.ケアを見直そう
 1.医原性拘縮
  ①現場にみられるエビデンスのない拘縮
    →介助での引っ張りに反発して、怖くて拘縮になる
  ②寝た状態で膝を立てると高さが違う
    →低い方から引っ張られている
  ③拘縮した指や腕を力で広げると反発して余計にひどくなる
    →大きな筋肉をスーパーの袋を介在させて優しくマッサージ
     腕を後ろに下げる
 2.体幹と整える
   ・鼻・へそ・押しの親指が一直線になるように
   ・両肩と骨盤が平行
   ・骨盤から真っ直ぐ足が伸びている
  *体幹の崩れた姿勢はどんどん悪くなっていく
 3.力ではなく重心移動
  ①座位でずり落ちた時の対応
   ・片足へ重心移動して浮いた臀部にスライディングシートを入れて、
      重心を戻し軽く後ろへ移動する
   ・現場では、後ろから両脇を抱えて持ち上げている
     持ち上げる人は腰痛になる
     持ち上げられている人のことも考える
      日頃身体を支えている所ではない脇に力が集中する
      反発して緊張度が高まる
      骨折など身体にトラブルが起きるもある
  ②ベッドでの端座位サポート
   ・ベッド状で横な向けて座った状態になるように、股関節と膝を曲げてから
     →ベッドの背板を起こすと端座位になる
   ・現場では、ベッドの背板をいきなり起こすので、ずり落ちていく
     →りきむ、胸郭が狭くなる、円背、拘縮
 4.リフトや介護ロボットを使う
www.minnanokaigo.com/news/kaigogaku/no103/
www.youtube.com/watch?v=Ldheba44oZQ

医師とコ・メディカルの講演会
日時  2018年1月14日(日)午前10時~正午
場所  ホテル金沢 2階・ダイヤモンド
     (金沢市堀川新町1-1 TEL 076-223-1111)
※ホテルには立体駐車場がありますが、満車の場合は近隣の有料駐車場をご利用ください。対 象 医療・福祉関係職の方など
定 員  100人
参加費  500円
申し込み FAXまたはお電話・メールなどにて
       必要事項(医療機関・施設名、代表者氏名、申込人数、参加者の職種)
  詳しくは チラシ 看護・介護職員のための腰痛対策
主催   石川県保険医協会/学術・保険部
       電話(076)222-5373 FAX(076)231-5156
        E-mail:ishikawa-hok@doc-net.or.jp
締め切り:1月9日(火)まで
参考に
 歩行やトランスファー介助の基礎知識と実習
kojima-dental-office.net/20120712-1188

 患者・利用者さんの移乗介助などを日常的に行っている看護・介護職にとって、腰痛は職業病。また、離職の原因の1つでもあります。 「ノーリフト®」という考え方は、1998年ごろオーストラリアで看護師の腰痛予防対策のために提唱されました。危険や苦痛の伴う人力のみの移乗を禁止し、患者・利用者さんのできる範囲を考慮した福祉用具使用による移乗介護を義務付けたものです。
 本講演会では、保田淳子氏(日本ノーリフト®協会代表理事)から、ノーリフト®について、実技も交えながらご講演いただきます。
 患者・利用者さんにとってより良いケアは? 医療・介護現場の労働環境のあり方とは? ノーリフト®によってケアはどう変わるのか? 看護・介護に携わる皆さまはもちろん、在宅で看護・介護をされているご家族など、多数のご参加をお待ちしています。
   ※「ノーリフト®」「ノーリフトケア®」は 日本ノーリフト®協会の登録商標です。

2018 年1月14 日(日)医師とコ・メディカルの講演会
FAX用参加申し込み書
FAX:076-231-5156 /
◆医療機関・施設名
◆代表者氏名
◆申し込み人数        人
◆参加者の職種        人
               人
               人
               人

 報告記事
医師とコ・メディカルの講演会
「看護・介護職員のための腰痛対策―持ち上げない・抱き上げないケア」       
                小川滋彦(金沢市・内科)
 1月14日、ホテル金沢において「看護・介護職員のための腰痛対策」と題して医師とコ・メディカルの講演会が開催され、大雪にもかかわらず60人が参加した。講師の保田淳子氏は日本ノーリフト協会代表とのことだったので、最初は介護職の腰痛予防のためにクレーンなど機械力を用いた移乗を推進する話かな、くらいに思っていたが、講師の話が進むにつれ、医療者自身の健康を守る「文化」が、医療介護のパラダイムシフトをもたらすのではないか、といった希望と使命感を、感動と共に抱かせてくれるものだった。
 そもそも日本の医療は医療者の自己犠牲の上に成り立っており、我々が身体や心の不調を感じても精神論で片づけられてきた。たとえば、重い患者を抱きかかえてはいけないのに(人が人を抱え上げるのは物理的に不可能!)、それを強い、それを受け入れることを「応召義務」だと考えてしまう我々。講師もそういったドグマに支配されていたが、それを解き放ったオーストラリアでの体験。そして、無理をして抱えられた患者たちもまた、抱えた医療者と同じくらい「傷ついている」という衝撃の事実。日本の要介護者が、原因不明の拘縮を引き起こすのは、無理を承知の我々の「命がけ」の介助が原因であったとは!
 我々医療者が献身的な「頑張り」をするほど、患者を威圧しているのかもしれない。バーンアウトした医療者が、患者の人権など守れるはずがないのだ。医師とコ・メディカルがいかに自分たちを守っていくかが、日本の医療を再生する鍵となる。おぼろげにそういったことを考えさせてくれる素晴らしい講演会であった。

歯科訪問診療の最新記事