小島歯科医院 名誉院長ブログ

軽症と見誤りやすい神経疾患の診療経験

2013年06月13日(木)


      6月13日(木)午後7時15分から近江町交流プラザにて「第29回よろず勉強会 こんな重症患者が歩いてくる その⑤」が開催された。今回の講師は、金沢市立病院・神経内科 杉山 有 先生難症例3例の診療経験とそれに対する議論がなされた。急激な症状悪化に対して、糸口に気づき、紐解いていく。スピード感を持って検査、類推・診断しながら必要な処置を行う。あらゆる知識を駆使する診療姿勢を学んだ。時にはブログなどネットからの情報も取り入れていた。

メモ
症例1  64才女性
  ギラン・バレー症候群
health.yahoo.co.jp/katei/detail/ST020300/2/
 両手と下肢のしびれのために整形外科を受診、腱鞘炎+座骨神経痛と診断され帰宅したが、さらに感覚が低下し、脱力と歩行困難になったので、救急搬送にて入院。
 ポイント
  入院10日前に、感冒様症状が出現していた
  症状が急展開し、脱力まで生じている
 オーラルサクションチューブでの唾液吸引併用が、人工呼吸を効果的にした
   唾液分泌が多いと感じたのは、呑み込みが悪かったため

ギラン・バレー症候群1 ギラン・バレー症候群2 ギラン・バレー症候群3

症例2  73才女性
  クロイツフェルト・ヤコブ病
ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%84%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%A4%E3%82%B3%E3%83%96%E7%97%85
 1カ月前より軽度歩行障害を自覚していたが、数日前より急激に失調、無動による歩行障害が増悪。同じ頃より記銘力障害。
 ポイント
  急激な変化
  MRIdiffusionが有効
  プリオン蛋白遺伝子検査

クロイツフェルト・ヤコブ病1 クロイツフェルト・ヤコブ病2 クロイツフェルト・ヤコブ病3

症例3  23才女性
  急性非ヘルペス性脳炎
blog.goo.ne.jp/pkcdelta/e/092c1e0241428d8549778c758137dbed
 入院前日より、日頃と異なった言動あり。入院日こたつで寝ていたところ、突然全身痙攣を認め、救急搬送される。救急車内で意味不明の発語を繰り返す。
 ポイント
  市販の感冒薬を服用した形跡あり
  婦人科MRI検査

急性非ヘルペス性脳炎1 急性非ヘルペス性脳炎2

   こんな重症患者が歩いてくる その⑤
 講師 金沢市立病院・神経内科 杉山 有 先生
第29回なんでも学術!なんでも回答?よろず勉強会
   シリーズ 見逃してはいけない!
 と き:6月13日(木)午後7時15分~午後8時45分
 ところ:近江町交流プラザ 4階「研修室 1」
 対 象:保険医協会会員(参加は無料です)
 申込み:6月10日まで(質問者は6月5日まで)にFAXでお申込みください。
 主催 :石川県保険医協会    チラシ第29回よろず勉強会

よろず勉強会「見逃してはいけない!」シリーズ第5弾です
今回の講師は、杉山有先生(金沢市立病院・神経内科)です
テーマを特定をせずに、謎解き方式で日常診療の要点に迫る“見逃してはいけない!”シリーズの第5回目です。診療所には、実にいろいろな患者さんが訪れます。症状もいろいろ、訴えもいろいろの中で、わたしたちは治療に当たらなければなりません。時には専門外であることから、大切なことを見逃してしまうことも・・・。そんなときに、他科や専門外の知識があれば、患者さんの訴えをより深く聞き取れ、治療に活かすことができます。
この“見逃してはいけない!”シリーズでは、外来患者さんの主訴や何気ない会話の中から、決して見逃してはいけないことを学び合いたいと思います。

今回の会場は「近江町交流プラザ4階・研修室1」です。
開始時間は7時15分です。ぜひ、たくさんの会員の先生方にご参加いただければ幸いです。(学術・保険部)

第29回よろず勉強会報告記事
 石川県保険医協会学術保険部主催の「第29回なんでも学術・よろず勉強会」が6月13日近江町交流プラザにて開催されました。この勉強会では「見逃してはいけない、こんな重症患者が歩いてくる」をテーマにシリーズ化しています。
 今回は金沢市立病院神経内科の杉山有先生に講師をお願いし、豊富な臨床経験の中から3例の極めて教訓的な症例をご紹介いただきました。
 第1例目は60歳代の女性で感冒後に軽度の下肢のしびれを訴えた症例です。初診時には軽度の不穏があり、呼吸数が多く、酸素飽和度の低下もなく一見過換気症候群とも思われましたが、救急外来の初診医が軽度の下肢筋力低下と唾液の分泌過剰をを見逃さず、神経内科にコンサルトしてギランバレー症候群の診断に至りました。入院後は嚥下障害の進行に加えて急激に呼吸不全に陥り、人工換気を必要としたとのことでした。初診時の唾液の分泌過多も実は嚥下障害によるものと判明しました。
2例目は70歳代の女性で記銘力障害と歩行障害を主訴に受診されましたが、約2週間の経過で症状が著しく進行し激しいミオクローヌスを認めました。MRIの拡散強調画像で皮質化に高信号域を認め、その後の遺伝子検査で家族性のプリオン病と診断されました。
 3例目は20歳代の若い女性で強い妄想や不穏などの統合失調症様の症状ののちに急激に痙攣重積状態となりました。この症例は卵巣の低形成を認め、近年卵巣奇形腫との関連が取りざたされている抗NMDA受容体脳炎でした。痙攣の重積状態を乗り切れば長期的な予後は良好であることが多く、見逃してはならない疾患とのことでした。
 それぞれの症例のご発表ののちに熱心なデスカッションがあました。いずれも発症から急激に悪化した症例でもあり、どうすれば重症化する疾患のサインを見逃さずに済むかという点について、多くの質疑応答がありました。まさしくこの勉強会の意図するところでした。
 今後もこのシリーズを継続していく予定です。実地臨床に役立つ貴重なお話を聞くことのできる会ですので1人でも多くの会員の先生方にご参加いただきたいと考えております。 

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