小島歯科医院 名誉院長ブログ

口が持つ生活機能を守る

2012年03月04日(日)


医科歯科連携の意義と在宅医療の勧め!
講師  角町歯科医院 角町正勝先生
日時  平成24年3月4日(日) 10:00~12:00
場所  石川県地場産業振興センター 新館コンベンションホール
対象  歯科医師、歯科衛生士、介護職員、行政職
主催  石川県歯科医師会  
参考に
 角町先生が寄り添う訪問診療の映像(25分)を見てください
www.mouth-body.com/hippocraticoath/archive/002/index.html

メモ
 口が持つ生活機能を守り、「口から食べる」という生活を達成できるように地域で支援する姿に感動する。

1.社会の変化
 ①老年人口の増加と生産年齢人口の低下
  ・75歳以上が増加 
  ・都市部が特に顕著
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 ②要介護者や認知症高齢者が増加
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 ③死因の年次推移
  ・肺炎による死亡率が増える
    また、肺炎により体調を崩し、原疾患の悪化による死亡も増えている

2.医科歯科連携
 ①背景
  ・口腔ケアの重要性
    発熱発生率が明らかに少なくなる
    抗生剤使用量が少なくなる(DPC病院では大きなメリット)
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  ・咀嚼機能喪失による健康悪化
    義歯を装着していない無歯顎者は相対危険度が著しく高い
  ・口腔清掃の自立度低下
    様々に影響を与え、生活機能を低下させる
  ・高齢者も多歯時代
  ・介護高齢者の63.4%に歯科的対応が必要
  ・要介護度と要治療う歯数
    介護度が上がるほど、う歯数が増えている
  ・要介護高齢者の摂食嚥下障害
    北海道の実態調査
    要介護認定者数に占める割合 34,849/192,551=18.1%

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  ・在宅、施設、病院で見られる口の問題
    歯の健康≠口の健康 
    口から食べる支援
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 ②連携
  ・地域連携 
    在宅医療連携拠点事業
    三師会ネットワーク
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  ・リハビリテーション病院との連携
    それぞれの時期に必要な歯科の役割
    オープンシステム
  ・介護支援専門員との連携
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 ③現状
  ・入院患者、施設入所者、在宅の要介護者などからの歯科受診の依頼が少ない
  ・ビスフォスフォネート製剤の投薬により緊急時の抜歯などの外科処置ができない
  ・訪問診療に動く歯科医の数が少ない
     (在宅支援歯科診療所は全国で4000)
  ・歯科と多職種との協働ができる体制になっていない
     ・地域連携の多職種が歯科を理解していない
     (食べたがらなくなったり、ムセ始めた時に歯科へ相談すると思っていない)
 ④課題
  ・口が持つ生活機能を守る
    (口から食べられなくなったら、どんな手だてが必要なのだろうか)
  ・入院患者を診る体制を作る
  ・施設入所者の口腔の健康診査などを行う
    (嘱託歯科医師の設置と定期的な健診実施)
  ・在宅の要介護高齢者の口腔環境を把握する仕組みを作る
    (在宅要介護者健診)
  ・全身と歯科に関する啓発活動を活性化する仕組みを作る
    (マスコミ対策)
  ・地域の関連団体との連携を誘導する
     (介護支援専門員協会へ研修事業展開を郡市区歯科医師会が行う)
 ⑤解決
  ・病院歯科の活性化・病院カンファレンスへ参入しやすい仕組みを作る
  ・高齢者健康診断の実施(在宅、入所など)
  ・在宅支援歯科診療所の組織化を図り、活動を活性化する
  ・マスコミ対策として議員の活動方針の一つに、
    在宅訪問歯科・要介護者健診・施設健診などの言葉を入れてもらう
  ・地域のネットワークを積極的に参入する

3.歯科介入の意味を知る
  ・咬合支持と食形態
    しっかり咬めればいろんなものが食べられる
  ・食形態と栄養
    調整食は栄養低下を招く
  ・舌機能と食形態
    舌機能の高い人は常食を食べている
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  ・口腔ケアと味覚
    口腔ケアにより味覚が改善
  ・口腔リハビリと栄養状態
    栄養介入単独よりも口腔リハビリを合わせたほうが栄養状態は改善
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  ・肺炎対策
    歯周病が口腔、咽頭部の防御機構を破綻させる

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抄録
 医療連携の掛け声は、最近一段と大きくなってきています。しかし実態は、まだまだといった状況ではないかと思われます。この「医科歯科連携・医療連携・地域連携」の言葉はまだ掛け声先行で、実体が伴っていないように思われます。その背景には、医科も歯科を充分に理解できていないことに加えて、歯科はほとんど医科の領域のことを理解していないと思われるからです。
 このような地域医療の現場は、歯科界のおかれている状況とは無関係に、近未来に求められている地域連携に向けた30分以内で日常の生が完結できる生活圏で、「安心・安全」な生活を保障できる、街の「医療・保険・介護」仕組みづくりを目標に医師会や行政関係者の手によって確実に推し進められています。
 小さな町では、病院が中心になって地域で求められる医療連携を完結することは可能です。しかし、少し大きくなると、地域の行政機関を取り込んで、町としての仕組みを作っていかなければなりません。同時に、それぞれ異なる専門性を持って連携の輪の中で、各機関や団体はその役割を果たすことが必要です。そのため、連携を進める中で、個々の職種の自己主張では地域の連携の仕組みは作れません。歯科医師会の役割は、この点において大きな課題を背負わされています。
 また、それぞれの職種の役割、組織の機能、そしてまた個々人の資質などが求められることは当然ですが、それぞれの役割を理解し合ってお互いのそれを補完する心が大切です。今回は、地域で生活する人々の安心安全な生活の保障のために、少子高齢化の進行によって、大きく変化している社会の中で、歯科がどのような機能を有しているのかを考えてみたいと思います。併せて、何故、在宅医療が求められるのかということについても、その思いを個人的な見解を含めてお話できればと思います。

参考に
 「摂食・嚥下の評価と訓練の実際」
kojima-dental-office.net/20120204-1247
 脳性麻痺患者さんへの支援
kojima-dental-office.net/20091130-366#more-366
 自院でできる障がい者歯科
kojima-dental-office.net/20110618-2782#more-2782
 摂食の基本と実習
kojima-dental-office.net/19980914-2725

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