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スリープスプリント(症例)

2011年06月09日(木)


スリープスプリント  通常、睡眠中は主に鼻呼吸によって行われている。鼻腔には圧及び気流の変化を感知する受容器が存在し、鼻呼吸時はこの反射系が働いて吸気時の咽頭周囲筋活動を高め上気道の開存性を保持している。口呼吸時にはこの反射系が消失し上気道狭窄が起こりやすくなり、無呼吸の発生につながる。
 睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)は中枢型と閉塞型に大別され、臨床的には9割以上が閉塞型である。そして、歯科領域で扱うのも閉塞型である。その患者さんでは、解剖学的に咽頭腔が狭小であったり、さらには就寝時に舌根が沈下してしまうことが多いことから、舌を前方に保持する口内装置や、下顎を前突させて中~下咽頭腔の開大をはかる歯科的口腔内装具が考案されている。現在普及しているのは後者のタイプであり、スリープスプリントと呼ばれている。
 但し、医療保険でスリープスプリントを作製する場合には、医科保険医療機関で睡眠時無呼吸症候群の治療法として口腔内治療装置が有効であるとの確定診断を受け、そしてその情報提供文書を歯科医院に持参することが必要である。

患者 51才 男性
初診 平成23年1月20日
主訴 SASのプレートの作製
   日中眠くて仕方がない
現症 睡眠時無呼吸症候群にて経鼻式持続陽圧呼吸療法(NCPAP)を行っている
   いびきをかく、歯ぎしりをする、肩こりがある
所見
臼歯部咬合高径がかなり低いため、下顎が後方へ偏位している
下顎は前方へ出ようとしているが、上顎前歯が口蓋側に転位しているために咬耗している
舌の側縁に歯痕があり、下顎の歯が舌側へ傾斜している
口蓋垂が見えない
歯周状態は良好
首や肩の筋肉の緊張がある
左右の顎関節形態が違う(パノラマX線所見)

スリープスプリント1

スリープスプリント2 スリープスプリント3

治療計画
1.咬合挙上のための床副子
2.スリープスプリント作製
3.床副子やスリープスプリントの調整

 *上顎前歯の口蓋側転位や下顎歯の舌側傾斜、臼歯部咬合高径の低さは幼児期の食べ方の影響と思われるので、口腔機能改善のための食生活が必要である。また矯正治療(上顎前歯の前方移動と上下顎のアーチ拡大・レベリング)も一つの選択肢となる。

経過
スリープスプリント41/20 内科よりプレート作製依頼書を持参
     スリープスプリントについて説明
     歯周検査、レントゲン診査、模型診査
     治療計画の説明
     咬合挙上床副子のための印象とバイト

1/27 咬合挙上床副子装着

スリープスプリント5

スリープスプリント6 スリープスプリント7

2/3  挙上しても特に問題はない
     スリープスプリントのための印象とバイト
     赤染めによる歯ブラシ指導

スリープスプリント8

2/10 スリープスプリント(ハードタイプ、ソフトタイプ)装着

スリープスプリント9

2/18 ソフトタイプが使いやすい
     午後、頭痛や眠気がなく、調子がよい

5/23 右顎関節が痛くて来院
     床副子の右を高くして調整する

  動脈血酸素分圧が88%以下の時間が、経鼻式持続陽圧呼吸療法では、5/24の時と5/28スリープスプリント装着時のデータを比較すると、5分29秒もある。

   スリープスプリントを入れた感想          2011年5月19日
 ①装着した違和感は
  1.ない ②.多少ある  3.ひどくて寝られない
 ②寝ている時の唾液は
  ①.少なくなった  2.変わらない  3.多くなった
 ③寝ている時、口を
 1.開けている  ②.閉じている  3.テーピングしている
 ④朝起きた時、顎の痛みは
  1.ない  2.多少ある  ③.痛みがひどい
      痛みがあるのは  1.左  ②.右  3.両方
 ⑤朝食時の噛み合わせに支障があるか
  1.ない  ②.多少ある  3.噛みにくくて仕方がない
 ⑥睡眠は
  ①.よく寝られるようになった 2.今までと同じ 3.悪くなった
 ⑦平均睡眠時間は     5時間(以前は 5  時間)
 ⑧朝の目覚めは
  ①.良くなった  2.変わらない  3.悪くなった
 ⑨同室の方の感想は  1.静かになった 2.以前より良くなった 3.変わらない
 ⑩日中の眠気は
  1.ひどい  ②.多少ある  3.全くない
    以前は  ①.ひどかった  2.多少あった  3.なかった
 ⑪総合的に判断して
  1.良好  ②.多少問題がある  3.不良
   問題点(右顎関節が痛く、口があけづらい          )

参考に
睡眠時無呼吸症候群に対して医科で受けている治療は
A.内科的治療
 1.減量
 2.基礎疾患治療
 3.側臥位での就寝指導
 4.薬物療法
 5.経鼻式持続陽圧呼吸
B.外科的治療
 1.UPPP  弛緩した口蓋垂を含めた軟口蓋下縁を切除し、
        口腔側粘膜と鼻腔側粘膜を縫い合わせる
 2.LAUP   口蓋垂の両側にレーザーで切れ込みを入れ、
        同時に口蓋垂の下半分をレーザーにて蒸散し、
        軟口蓋下縁を口蓋垂と共に引き上げる

  治療の流れ
1.問診票記入
2.診査、検査
3.現在の状態と治療方針について説明
4.口腔内の歯科治療
5.スリープスプリントの治療開始、模型づくり
6.上下各々のスプリントの試適
7.下顎位の決定し上下のスプリントを固定する
8.スリープスプリントを使用する
9.効果を判定しながら調整を繰り返す
10.スリープスプリント治療後の評価
  *評価が良好になったら、再び医科へ(総合評価)

  問診票                                           年   月   日
名前          カルテNo.          男・女      才
 身長     cm  体重       kg  首周り   cm
現在かかっている病気
 内服薬
今までかかった病気
身体にいいことは何かしていますか   1.はい  2.いいえ
    (具体的に                                             )
寝付きは  1.良い  2.悪い  3.どちらとも言えません
睡眠剤を服用していますか  1.毎日  2.時々  3.していません
日中1.いつも眠くて仕方がない 2.時々眠いことがある 3.眠いことありません
    (    年前から)
いびきをかきますか    1.はい  2.いいえ
      1.毎晩かく  2.疲れた時だけ  3.酒やビールを飲んだ時だけ
      1.子どもの頃から 2.(   )才代から 3.わかりません
口呼吸ですか            1.はい  2.いいえ
食事の時水分を多く取りますか   1.はい  2.いいえ           
  1日の総水分摂取量     ml
1日の尿量               夜間の回数   回
  成人の尿量は一日800mlから2000ml程度です
晩酌 1.ほとんど毎日 2.週に3~5回 3.週に1~2回 4.全く飲みません
タバコは吸いますか          1.はい  2.いいえ
偏頭痛、肩こり      1.ある(部位      )  2.なし
食い縛り、歯ぎしり        1.ある          2.なし

  開始時及び終了時の評価                        年   月   日
名前          カルテNo.          男・女      才

検査  □写真(口腔内、顔貌)  □模型  □パノラマ  □セファロ
    □歯周検査 □唾液量 □開口時間 □反復唾液嚥下テスト □咬合力

下顎の最大前方移動距離   mm
スリープスプリント前方移動距離   mm

所見
顔貌  対称   非対称(                 )
残存歯  上顎  本  下顎  本
咬合状態
う蝕歯
義歯の部位
咬耗の部位
楔状欠損の部位
歯周状態  動揺歯  
      歯周ポケット5mm以上
舌の大きさ  細い  普通  大きい  舌の側縁に歯痕
uvula   見える    無理すれば見える  全く見えない

セファロの所見  下顎骨の位置    上気道の前後径    舌骨の位置
  
唾液量              ml/5分
開口時間             秒
反復唾液嚥下テスト        回/30秒
咬合力

リスクのチェック
□ 基礎疾患(慢性呼吸器疾患、耳鼻咽喉科的疾患、糖尿病、透析、神経筋疾患)
□ 上部気道形態的狭窄(肥満、アデノイドや扁桃肥大、小顎症、下顎骨後方偏位)
□ 上気道筋の活性化低下(睡眠薬や鎮静薬、アルコール)
□ 水分の過剰摂取による鼻粘膜浮腫、歯根膜浮腫の可能性
□ 顎顔面筋の緊張(食い縛りや歯ぎしり、首や肩の筋肉の張り)
□ 歯周炎

歯科的な治療計画

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