小島歯科医院 名誉院長ブログ

歯周組織再生法の現状と最前線

2008年08月10日(日)


ーGTR法、エムドゲイン法、培養骨膜シート法ー
講師  奥田一博准教授
  新潟大学大学院医歯学総合研究科 歯周診断・再建学分野
日時  2008年8月10日(日) 午前10時~12時頃
会場  金沢都ホテル
参加対象者 歯科医師
主催  石川県保険医協会

参加した感想
  暑い夏の日に歯科医がなぜこんなに集まったの?。
組織再生ための3要素(細胞、細胞の足場、増殖因子)を組み込んだ培養骨膜シート法が現実味を帯びてきた。血液や骨膜の採取や組織培養なども盛り込んだキットまで準備されて2,3年で個人開業医での実用化も夢ではなくなった。組織培養などは他人事のように思っていたが、久しぶりに近未来に希望の光と楽しみが見えてきた。

メモ
1.GTR法
  問題点として、歯根膜再生には個人差があり、X線では確認できない。また、膜の露出、創の離開や感染がある。
2.エムドゲイン
  上皮細胞を抑制し、骨芽細胞や繊維芽細胞を増殖させる働きがある。歯肉弁に糸を通して縫合の準備をしておいてエムドゲインを入れてすぐに縛るのがコツ。

<抄 録>
 今回の診療報酬改定において、歯周外科手術の項目中に歯周組織再生誘導手術(GTR)が新規導入され、改めて歯周組織再生法が注目を浴びている。一方、人工多能性幹(iPS)細胞の樹立により、再生医工学の分野もマスコミを賑わせている。
 生体の失われた組織を再生させるためには、(幹)細胞、細胞の足場(スキャフォールド)、増殖因子の3要素が必要で、そこに適切な環境(血管新生)と時間が加わることで達成されるというティッシュエンジニアリング(組織工学)の概念が大きく脚光を浴びている時代となった。歯周組織の再生についても、この3要素を考慮することが良好な予後へつながるものと予想される。
 GTR法はこれらの要素のうち、細胞の足場を確保するもので、上皮および結合組織の伸展を物理的に遮断して歯根膜組織の再生に優先権を与える方法である。また、エムドゲイン法は、3要素のうち増殖因子に該当するもので、無細胞セメント質の再生を促すことにより付着の獲得を目指す方法である。これらの方法は現状の歯周再生法として広く行われており、ある程度の効果を上げている。しかし、適応の限界や問題点も明らかにされている。
 そこで、我々は「細胞医療」とでもいうべき培養骨膜シートを用いた歯周組織再生法を臨床で展開している。この方法は、細胞としては培養骨膜シートから供給される骨芽細胞に期待し、足場および増殖因子としては多血小板血漿(PRP)とハイドロキシアパタイト(HA)顆粒を選択したもので、術後12か月目にポケットの深さ、付着レベル、骨欠損の深さについて半規格化して計測し、ベースラインおよび対照群(PRP+HA顆粒複合体)と比較したところ、培養骨膜シート群において、付着レベルおよび骨欠損の深さに関しては対照群よりも著しい改善が認められた。
 今回の講演では、歴史的順序に従って、第1部ではGTR法について、第2部ではエムドゲイン法について、ともに生物学的原理と臨床と題して、この2方法について再度整理をする予定としている。さらに第3部では、培養骨膜シートを用いた組織工学的再生療法と題して、歯周再生法の最前線を披露させていただきたい。

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