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第4号 はじめに

1999年08月01日(日)


 来年4月からは介護保険が始まり、これから外の世界との交流がますます必要になるだろう。また、歯科医療の外側から見つめ直す時期に来ている。絶好調の時はボ-ルがよく見え、どんな球でも打てる気がする。ストライクだけに絞って打てば持続するが、あれもこれも打ち始めるとスランプが始まる。リンデの考えを自分の臨床に取り入れたように常に柔軟性は用意する。一つの意見に凝り固まることなく自分で地道に確かめながら、中庸を心がけて少しずつ前に進みたい。日々の記録を残し、経過を観察する。どう処置するかより、患者に健康観をどう持ち続けてもらうかを考える。症例を振り返り、反省と次への意欲で診療を続けていきたい。子供には虫歯を削って詰める修理より、原因を見つけて生活改善を目指す予防を優先したいと考えています。大人では口腔内の健康に関心を持ち向上する意欲を持つ人のお手伝いをして、歯周病治療を主に考え、歯を残しながら一生お付き合いしようと考えています。
 ある書店の一場面である。
「この本ないですか」と聞かれ、慣れた店員は即座に「今品切れです」と答える。よく知っているから、分かるのだろう。お客は「そうですか」と帰っていった。新人ならその辺を探すのだろう。ベテランの店長なると、本がないことは知っているが、「少しお待ちください。倉庫を探してきます。」とその場を離れ、一服してからまた戻ってくる。「方々探しましたが、見つかりませんでした」と答える。お客は1冊のためにそこまでしてくれたことに満足して注文して帰っていった。本がなくても満足して帰すのがベテランの所以である。医療現場でも同じ様なことがよくある。仕事になれてくると、患者の先回りをしてしまう。「歯を抜いてくれ」と言われて、「はい」と抜くようなものだ。患者は何を望んでいるのだろうか。
 患者と医療サイドのニ-ズのずれに早く気づき、自己満足的な、善意の医療者側から見た最高の押しつけから患者自身が動機づく環境整備へのシフトが必要であろう。特に、これまで医療が科学的に異常がある“疾患”にのみに目を向けていたが、これからは、異常はないが少し調子が悪い、このまま行くとどうなるのだろうかと思う不安や恐怖を持つ“病気”も取り組んで行くことになるだろう。
 これからの歯科医療は、患者さんが主体となり、まず事柄や原因を追求するのではなく、ブロッキングをはずし、本人の気持ちや感情を理解し、本当は何を求めているのかについてのニ-ズを適切に受け止める必要がある。さらには、本人も気づかない問題を浮き彫りにし、自分自身で決断できる支援体制も欠かすことが出来ない。そのためには、一方的な相談や指導ではなく、共通化する患者の世界に立つヘルスカウンセリングが役立つであろう。ニ-ズを確認したうえで、治療や予防法をお話ししていこうと思うようになった。患者や住民のニーズに応えてゆく努力を惜しまない限り歯科医業には無限の可能性があります。
 摂食機能はなかなか理解も難しく、実例がないと不安がかなり大きい。歯科には少ない動きがあり、その都度頭脳回路を縦横無尽に使わなければならない。最近思考回路が億劫になり、吸収スピ-ドが遅くなり、根気が亡くなり欠けている。これからもっと勉強と実践を同時に進めていく必要があるだろう。次の時代の為にも、学生時代から講座や研究室の垣根を越えて取り組むべきところだろう。
歯科衛生士たちには視野を広げ、こんな世界もあることを知ってもらえれば、人としてまた大きく育つであろう。そして、周りの人に広がっていけばうれしい。
 講師の先生、参加してくれたスタッフ、快く送り出してくれた歯科医院、賛同してくれた先生に心より感謝したい。

1999年8月
                                                                   小島登

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